中学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
数学

「多角形の内角の和」の指導における一考察
~子どもの深い学びを実現させるために~

東北女子大学 非常勤講師 久慈 和寛

1 はじめに

今回の小学校学習指導要領(平成29年度告示)の改訂の基本方針で「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進が求められている。それを踏まえて,小学校学習指導要領(平成29年度告示 算数編)では,取り組むべき事項として6項目(ア~ カ)が示され,その中で深い学びについて次のように述べられている。

  • イ 授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく,児童生徒に目指す資質・能力を育むために「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点で,授業改善を進めるものであること。
  • オ 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。各教科等の「見方・考え方」は,「どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのか」というその教科ならではの物事を捉える視点や考え方である。各教科を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり,教科等の学習と社会をつなぐものであることから,児童生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすることこそ,教師の専門性が発揮されることが求められること。

日常の事象や数学の事象について,「数学的な見方・考え方」を働かせ,数学的活動を通して,問題を解決するよりよい方法を見いだしたり,意味の理解を深めたり,概念を形成したりするなど,新たな知識・技能を見いだしたり,それらと既習の知識と統合したりして思考や態度が変容する「深い学び」を実現することが求められるとされている。主体的・対話的で深い学びの実現に向けて授業改善を進めるにあたり,特に「深い学び」の視点に関して,鍵となるのが「見方・考え方」であるとしている。
また,笠井健一氏(文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官)は「初等教育資料(令和2年8月号)」の中で,問題解決の際の深い学びの姿の具体的な姿を次のようにに示している。

  • 〇解けなかった子供が解けるようになること。
  • 〇一通りの方法で解けた子供が二通りの方法で解けるようになること。
  • 〇具体物を用いて答えと出していた子供が,図をかくことで答えが求められるようになること。
  • 〇図をかいて答えを出していた子供が,図をかかなくても式を書くことで答えを求められるようになること。
  • 〇逆に式だけで答えを出していた子供が,式の意味を具体的に図に表して答えを出すことができるようになること。

このようなことができるようになった子供たちに対してのさらなる深い学びとして,次のような姿が考えられる。

  • 〇二通りの方法のどちらの方がよいかを判断できるようになること(似た問題を考え,それぞれの方法で同じように解くことができるかを考えるなどして)。
  • 〇二通りの考えの共通点を見付け,問題のポイントをまとめること。

算数の授業における子供たちの具体的な学びの姿は様々であるので,授業のねらいを達成した子供の姿を明確にして,問題解決の際の子供の実態に合わせて,適切に深い学びを考えていく必要があるとしている。

2 多角形の内角の求め方

多角形の内角の和の求め方については,小学校第5学年と中学校第2学年に学習することになっている。その指導の基本的な考え方になっているのが,三角形に分割して内角の和を求めることである。「中学校学習指導要領(平成29年度)解説 数学編」では,多角形の内角の和については,結果も重要であるが,多角形を三角形に分割することなどによってその結果が見いだせるということを知ることも大切なねらいであるとしている。
子供たちが考えを巡らせていくための既習の知識としてあるのが,三角形の三つの内角の和が180度ということである。このことは,小学校第5学年段階では演繹的に証明されたものではなく,中学校第2学年で平行線の性質を踏まえ,理解する内容である。さらに,三角形に分割した後,表などを用いて帰納的に考察し,一般化にすることにある。
小学校第5学年では,三角形の三つの内角の和が180度であることを基にして,四角形の四つの内角の和を説明する方法の代表的なものとして,二つの方法がとりあげられている。

①四角形を1本の対角線で二つの三角形に分けて考える方法で,180度の2倍から360度を導き出す方法

②四角形の内部に点Eをとり,点Eと各頂点とを結んだ直線で四つの三角形に分けて考える方法で,180度の4倍から点Eの周の大きさである360度を引いて360度を導き出す方法

これを発展させ,子供たちの深い学びにつなげていくために,点Eのとる位置を場合分けして三角形をつくり,多角形の内角の和の求め方を考える。
①については,点Eを頂点(A)にとり,点Eから各頂点へ引いた直線三本(EB,EC, ED)でつくられた三角形が二つあると考えることができる。②については,上記の内容と同様(四角形の内部に点Eを取ったと見る)であるが,②’のように,子供たちの中には,2本の対角線を引き,その交点をEととらえる子供もいる。そういう子供の考えも生かしながら指導に当たっていただきたい。①,②以外に次の二つの方法が考えられる。

③四角形の辺上に点Eをとり,点Eと各頂点を結んだ直線で三つの三角形に分けて考える方法で,180度の3倍から点Eの直線となっている角の部分の大きさの180度を引いて360度を導き出す方法

④四角形の外部に点Eをとり,点Eと各頂点を結んだ直線で四つの三角形に分けて考える方法で,180度の3倍から三角形EBCの内角の和180度を引いて360度を導き出す方法

取り上げ方は様々であるが,教師自身は点Eの場合分けをすることにより③,④の求め方があることを理解しておくことが大切である。
子供たちの実態にもよると思うが,①,②の他に③,④が出てきた場合はそれを生かし, 仮に子供たちから①,②の方法しか出てこなかった場合でも,③,④を意図的にとり上げてよいと考える。①から④の方法を示すことにより,子供たちは「三角形の3つの内角の和が180度である」ことを基に考えると,三角形をつくるための点Eの位置にはこだわらなくてもよいことが理解できる。また,①から④の方法を簡潔さや明瞭さという視点で学級全体での話し合いをすることにより,①,②の理解がより深まっていくと考える。
さらに,①~④のような演繹的な考え方の他に,⑤のように帰納的な考え方をしている子供もいる。最初の三角形を基に,一辺を共有させた三角形を合わせ,四角形,五角形,六角形,・・・をつくりながら,表などを活用しながら帰納的に多角形の内角の和を求めていく方法である。また,⑤’のように前の図形に三角形を加えていく見方をする子供もいる。図上での三角形の表し方は同じであっても子供の見方・考え方は異なっていること に十分注意する必要がある。

このような指導を継続することにより,子供たちに新たな発見や見方・考え方が育まれ,深い学びに繋がっていくのではないかと考える。

3 さいごに

日常の事象や数学の事象を数学の舞台にのせ,子供たちに考えさせるときは,教師の教材研究が不可欠である。日々の忙しさに追われ,教科書や指導書,学習指導要領等を参考にして指導することが多くなっていると思われるが,子供たちの実態を踏まえながら深い学びにつながる教材研究を進めていただきたい。本提案をその一例としてとらえていただければ幸いである。

<引用・参考文献>