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授業実践記録(英語)

生徒の英文のストックを増やす「英語表現Ⅱ」の授業

九州国際大学付属高等学校 喜嶋康治

1.生徒の実態

各学年14~17クラスの男女共学。ほぼ全員が進学希望。各学年生徒は約600人。そのため学力の幅は広く,コース,クラスに応じた指導が必要とされる。

2.基本事項,基本例文の徹底

英語の運用活動を重視する授業展開が理想であり最終的な目標であるが,本校の生徒,担当クラスの状況を考慮し,初期段階の指導では,生徒が運用できるレベルの単語,表現,基本例文が少なすぎるので,まず最初にそれを習得させる。ただし,教員の説明中心の講義調になったり,生徒が50分の授業内で英語を口にしたり,書いたりする場面が少なすぎるのは避けたい。3年次後半の入試が近づいて来た際の英作文演習,自由英作文演習がうまくいくかどうか,そして将来的に自分の意見,考え,要望などを英語で表現できるかは,この時期の生徒の英文のストックの量が大きく関係してくるものと考える。本校英語科教員は18人で,各教員がそれぞれ受け持つ生徒のレベルに合わせ,各自工夫しながら日々授業を行っている。

3.授業展開の実際

高校2年,進学コース(このクラスの生徒の希望進路は地元の中堅私立大学が多く,生徒の全国模試の英語の偏差値は40~50ぐらい)の実際の私の「英語表現Ⅱ(2単位)」の1学期の授業を紹介したい。

〈予習〉

本校は「10分間の朝の読書」の時間があり,2学年はほぼ週に1回,その時間を頂いて,英語例文暗記テストを行っている(29年度は年間25回ほど実施)。範囲は「Vision Quest English ExpressionⅡ」の各レッスンの左のページの約10の例文である。そのままの和文英訳を10題出題し,ひとつ1点の10点満点。年間を通じてのクラス平均は,特進コースで平均8~9点,進学コースで4~6点であった。ねらいは各生徒は家で例文を読み,疑問に思うことは調べ,暗記,暗唱をする,各教員は採点時にそのクラスでの多い誤答箇所,誤答傾向を分析し,授業に落とし込む,ということである。英語例文暗記テストのあとに,しばらくして授業が追いかけてくる状態である。

〈授業〉

授業(2単位のうち1単位目)では,文法のポイントや単語,表現の解説から入る。先の例文テストの結果が大いに参考になる。文法は1年次を含め2週目なので,どんなに長くても教師の説明は10分以内にとどめるようにしている。レッスン5,P20の例でいけば,「Aの1,2,2文型を作る動詞,Be動詞以外では,become, seem, 他にはなにがある?」「become, seem,のあとの単語の品詞に注目。」「40代で,はin one’s forties,30代,50代ではどうなりそう?」「1泊2日の表現,押さえておこう」など問いかけを入れながら説明を加えていく。生徒は教科書やノートにメモをしていく。場合によってはその場で電子辞書を引かせ,単語やフレーズを収集させる。生徒のノートは教科書の問題と答えだけではなく,さまざまな表現を書きとめた英語表現集に近い。書き込みの量がその生徒の英語力と言ってもいいだろう。

その後,右ページのエクササイズに生徒がそれぞれ取り組んでいく。場合によってはペアで,グループでやることもある。机間巡視で,ヒントを与えたり,進み具合の確認,質問を受け付けていく。そして答え合わせまで進める。最後に解答を配布し,生徒は解答のチェックと暗記を進めていく。このあたりで授業は終了する。

〈復習〉

英語の力をつけるには家庭学習での復習が大事だと考える。復習しやすいように,また復習の成果が次の授業で活かせるように本校各教員は工夫している。

家庭では各レッスンの右ページの確認と1文単位での暗唱は必須。かっこ埋め問題のかっこに入る語だけを覚えても無意味,並べ替え問題の語句に順番の番号をふるだけも無意味とは常日頃から指導している。そしてそのあとに各自英作文の問題をできるだけこなれた日本語で3題作るように指導している。うち1題は自分の生活に即したもの,あとの2題はそのレッスンからの出題である。例えば,レッスン5で言えば,「うちの親父は30代で社長になった。」「私は毎日勉強するのがとても大事だと思った。」「問題なのは彼とうまくやっていけるかです。」などである。裏面に模範解答例を書いておく。生徒は最低でも教科書を見直さないと問題作成とその解答は書けないものと考える。生徒は楽しみながらやっているようである。授業の次の日の朝,クラスの係が全員分を回収し,私のところへ持ってくる。それを私は次の授業までに目を通し,問題と解答例をチェックする。しかし間違いはほとんどなく,またこちらがニヤリとするようなユニークな問題もある。

〈授業〉

授業(2単位のうち2単位目)で,その英作文問題をペアで,またはグループで解いていく。生徒はこなれた日本語をよく読み,日本語を加工し,どの構文が使えるかを考えるのが出発点である。問題に対して口頭や,筆記による解答をおりまぜ,定着させていく。教員側も問題を10題ほど作成しておき,適宜生徒に与えることもある。生徒作成のいくつかの問題や解答は教員側でストックしておき,気になる表現はクラス全体でシェアしたり,また定期考査等の出題時の参考にすることもある。

2学期,3学期以降は,生徒の家庭学習の際,問題作成は少しずつ出題範囲を広げていき,例えば前のレッスンから,または何ページから何ページの範囲で,後ろの”Words & Phrases”を使って,自分の表現のノートから,といった具合である。 もちろんそれに伴い机間巡視で,ヒントを与えたり,解説を入れたりなどの頻度は多くなる。

4.おわりに

以上が私の2年生「英語表現Ⅱ」の授業のおおまかな流れである。英語表現Ⅱの授業では,英文と表現のストックを増やすというのを念頭において指導している。定期考査や外部の模擬試験では生徒は抵抗なくぎっしりとほぼ間違いのない英語を書くようになった。昨年度担当した生徒たちは今年度3年生であるが,各自が入試問題に取り組む際には比較的スムーズに行くのではないかと考える。また別の教員が担当する「コミュニケーション英語Ⅱ」の授業にもいい影響を与えており,英語でのやりとり,表現がスムーズになったとの報告もある。英語の授業で総合的にバランスのよい4技能を身につけるのが最終的な目標であるが,ではそれぞれの科目では何を,どの部分を重視し,どう定着させ,積み上げていくかを考える必要がある。要は卒業時にバランスのよい4技能が身についておけばよいのである。