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授業実践記録(英語)

参考書,模擬試験の解説書を読める生徒の育成

福島県磐城桜が丘高等学校 浦山 英介

1.はじめに

私は今現在品詞とSVの構成を重視した授業を日々展開しております。英語を理解するためには,いくつかの決まり事を覚えなくてはなりません。そして,各参考書,模擬試験の解説書などはそういったものを生徒が知っている,理解しているものとして書かれています。そのため生徒達は解説を読んでも理解できないという現象が起きています。では生徒は何を理解していれば,何を覚えていればいいのでしょうか。それが品詞とSVだと私は思っています。

2.品詞と修飾の決まり

特に重要な品詞である名詞,動詞,形容詞,副詞,前置詞,接続詞をそれぞれ説明します。この説明においてはプリントにまとめて,まずは品詞の名前,あるいは用語を覚えさせます。そして用語と一緒に品詞のお互いの修飾関係を説明します。

表A

名詞を修飾できるのは    → 形容詞のみ
名詞以外を修飾できるのは → 副詞のみ
動詞,形容詞,他の副詞,文全体)
※最初は「名詞以外」だと曖昧なので私は「副4」と名付けて生徒に何回も言わせていました。(副詞が修飾するのは4つという意味です) ※~のみ,と覚えさせることで曖昧さをなくします。特に最初の説明から徹底しました。

この修飾関係が分かってくると以下のような説明も楽に理解できるようになりました。

① He runs fast.   ② He is a fast runner.

①と②の fast の違いは?
①は「速く」走る。つまり動詞を修飾しているから副詞。
②は「速い」ランナー。名詞である「runner / ランナー」を修飾しているので形容詞。

同じスペルなのになぜ副詞,形容詞の判断がつくのか。それは働きが違うからです。しかしその理屈を理解するには表Aを覚えておかないと理解できません。生徒の中にはもちろん単語自体を暗記していて副詞,形容詞を見分けているものもいるでしょう。しかし知らない単語や fast のような形が同じで複数の品詞がある単語を見分けることができなくなります。

一番大事なのは,「この単語は,こういう働きをしているから,~を修飾しているからこの品詞なのだ」と理解することです。

3.品詞とSVの関係

品詞の名前,そしてそれぞれの働きを覚えたら次はSVとの関係です。

ここで強調したいのは,初めて文法用語を使うと,生徒達は品詞とSVOCMが同じ土俵にあると思っているものが多いと思います。授業中で「Oって何?」と聞くと,「形容詞」と答えるものも中にはいます。そのため品詞とSVは別の土俵にあるものだとまず説明します。

表B

Sになれるのは →名詞のみ
∨になれるのは →動詞のみ
Oになれるのは →名詞のみ

※目的語をとるのは他動詞と前置詞

Cになれるのは →名詞,形容詞
Mになれるのは →副詞のみ

※私は副詞だけをMと教えています。形容詞の限定用法などはその名詞の一部とみなす,というルールを独自に決めて説明しています。

この表をまず覚えさせて授業で展開していきます。もちろん簡単に覚えられないので授業の中で何回もしつこく生徒に言わせてきました。

板書は下のようにしています。

※工夫点: 項目別にチョークの色を使い分けています。Mは全て黄色,形容詞は,SVOCの文字は,重要項目,イディオムなどは,またはオレンジ

※狙い: 色で視覚に訴えることによって英文の構造のイメージをとらせる。
とくに黄色のMは文の前後にあるので,「修飾語が多い」と,「SVの前後にあるのはMなのだ」と認識しやすい,ということを徹底しています。

例文①:

Yesterday,  I  bought some chocolates to make a cake.
M S V O M

この文は基本的な文ですが,例えば最後の to make は不定詞の何用法かということに対して「Mになれるのは副詞のみ,なので副詞的用法」と理解しやすい。特に不定詞のように3つの用法があるものに対しては,日本語訳からだけではなく,このように働きから用法を見分けるということを心がけています。

例文②:

When I was walking in the hall, I found a piece of a puzzle.

少し慣れてくるとこのような板書になります。Mは下線なども全て黄色で書き,副詞節だということを理解させます。前置詞句は2つありますが, in the hall は副詞句の働きなので黄色,of a puzzle は形容詞句なので緑で書きます。そして a piece of a puzzle を一まとまりとしてOと書きます。このような板書を英語Ⅰ,英語Ⅱの本文全てで行ってきました。大変時間もかかり,手間もかかるのですが毎度のことなので生徒は慣れてきました。

そしてこのような板書をいつもすれば節と主文の見分け方,副詞節の見分け方にも長けてきます。そして副詞節を見分けることができると,名詞節と副詞節の見分け方も簡単にできるようになります。そのため今の学年の生徒達には,例えば when 節の副詞節と名詞節の説明はスムーズにできました。

結局表Aと表Bはこの板書をするために覚えさせる必要があるのです。1年次の頃は全ての文を黒板に板書して,このような説明をしていましたが,進度が遅いという反省を踏まえて2年次からはプリントを利用しています。B4サイズのプリントにレッスンの1パートの英文を載せ,説明必要のないSや∨などはあらかじめ書いてあるものを配っています。こうすることによって,生徒は板書する量も少なくなり説明を良く聞けるようになります。

やはり各定期考査と模擬試験で高得点を取る生徒はこの表Aと表Bの関係をシャープに覚えています。大切なのは曖昧にさせないことです。

4.補足

表Aと表Bを覚えさせるだけではもちろん授業は成り立ちません。2つの表とは別に生徒達に特に徹底して覚えさせていることを挙げたいと思います。

① 自動詞と他動詞の違い。
特に他動詞には「~を,~に」という意味も含まれているということを強調しています。

② 動詞の性質を受け継ぐもの 準動詞の動名詞,不定詞,分詞
準動詞は,元が動詞から発生しているので動詞の性質を受け継いでいる。例えばbreak のような他動詞は不定詞になっても必ず直後に目的語である名詞をとる,など。

③ 節
節になるには必ず接続詞が必要です。この節という概念は日本人には理解しづらいので私は「節トラック」という用語を使いました。運転手は必ず接続詞で荷台には必ずSV~が積んである。このトラックが駐車する場所によって名詞節か,副詞節かが決まる。
※形容詞節は関係詞説がほとんどなので,節トラックという概念では説明しない。

例:

 I don't know when he will come.

この節は何節か。今回の節トラックはOの位置に駐車している。Oになれるのは名詞だけ。

よって名詞節。ここでもまた表Bの知識が生きてきます。

④ 前置詞句
前置詞は必ず目的語をとる。目的語になれるのは名詞のみ。よって前置詞の後ろには必ず名詞がくる。そして前置詞+名詞で前置詞句となる。前置詞句単独ではOとCにはならない。働きは2つあり副詞句と,限定用法の形容詞句。
※前置詞句はよく生徒が前置詞句単独でOやCになると勘違いするので,そこは何回も授業で答えさせます。

このような説明を継続してきたことによって,自分で解説できる生徒達が増えました。そして教科書,または解説,参考書を少しずつ理解できる生徒達も増えてきました。少しずつですが模擬試験の偏差値が伸びています。

5.課題点

このような説明をするにはどうしても日本語を使う割合が多くなってしまいます。そのためこういった授業を展開するための準備,知識が整ったら classroom English を取り入れて英語で授業を展開できるようになるとなおベターだと思います。

6.おわりに

生徒達の力が少しずつ伸びてきたことは嬉しいのですが,改善点はたくさんあります。そのため未だに日々試行錯誤をしております。今回のこの原稿を作成して自分の指導を振り返ることができました。何事もそうですが,本番前の徹夜よりも毎日のこつこつが大事です。それは我々指導者にも言えることです。啓林館の関係者のみなさま,本当にありがとうございました。