実験・観察の安全指導
鉄と硫黄の化合の実験について
(平成28年度以降用教科書「未来へひろがるサイエンス」2年本冊p.154,155の実験3)
本実験につきまして,実験中および実験後に以下の点をご注意願います。
①実験中に発生する硫化水素につきまして
実験で鉄と硫黄の反応物である硫化鉄に薄い塩酸を加えますと,有毒な硫化水素の気体が発生します。その際発生する硫化水素の量はわずかで,教科書通りに実験を正しく行えば,安全性に問題はありません。しかし,方法や量を誤って実験を行った場合,事故につながる可能性があります。
そこで,改めて以下のことにご留意いただき,安全に実験を行っていただきますようお願い申し上げます。
- ○ 実験の前に,生徒に有毒な気体が発生すること,正しく行えば心配がないことを伝えるとともに,次のことを十分説明,注意し,実験を行う。
・臭いのかぎ方(必要以上に臭いをかごうとしない,気体を深く吸い込まない)を説明する。
・反応させる量と加える順序については,厳重に守ること(少量の反応物(約0.05~0.1g)に,5%塩酸を2,3滴入れることを厳守する)※1。
※1 塩酸の滴下の操作では,スポイトやピペットの操作を誤らないように,別途事前に,空の試験管に水を2,3滴入れる練習をさせる。
・気体の発生が確認できたら,すぐに水を加えて発生を止めること※2。
※2 水を加えると,試験管の中の気体が外に追い出されるので,このとき気体を深く吸い込まないように注意すること。 - ○ 理科室を密閉した状態で実験を行わない。
・常に十分な換気を行う(換気扇をつける,窓を開けて行うなど)。 - ○ 実験後は,試料をすべて回収し,室内に置いたままにしない。
・特に,試験管内の物質は実験後,速やかに回収する。
なお,臭いに過敏に反応する生徒がいることも考えられますので,卵の腐ったような臭いが発生することを事前に注意するなどのご配慮をお願いいたします。
万が一,異常を訴えた生徒に対しては,ただちに新鮮な空気を吸わせるなど,適切な処置をお願いいたします。
②実験後の試料につきまして
鉄と硫黄の混合物やその反応物は,実験後,必ず先生方が回収していただき,完全に反応させてから廃棄してください。
鉄粉と硫黄粉末の混合物は,加熱しなくても,水分を加えることによって反応し,発熱します。
未反応の試料を可燃物とともに放置しますと,条件によっては発熱して,火災の起こる危険性があります。また,硫黄をスチールウールなどの鉄分と一緒に廃棄しますと,同様のことが起こる可能性があります。
これらのことによって,実際に小火が起こったという事例もあります。
したがいまして,これらの試料は,可燃物の近くに置いたり,可燃物と一緒に廃棄したりしないようご注意ください。
ご指導にあたりましては,十分ご留意くださいますようお願い申し上げます。
<未反応の「鉄と硫黄の混合物」の処理例>
実験3で残った未反応の「鉄と硫黄の混合物」は試験管に入れて,ガスバーナーで加熱して硫化鉄にし,温度が下がるまで十分に放置してから廃棄します(p.154実験3のステップ2方法②参照)。
この際,多量の混合物が出た場合は,ある程度小分けにして反応させたほうが安全です。