1年
うちのひとだいすき       
〜自立を促し,家族との交流を図る生活科の実践〜         
長崎県佐世保市立赤崎小学校
 石田 栄子 
1.単元について

(1)子どもの実態
 2学期に入り,学校生活に慣れてきた子どもたちは,いろいろな活動にも進んで取り組むようになり,はじめは,難しかった給食の用意や清掃活動,係活動も少しずつうまくできるようになってきた。一人ひとりが学級の一員として,その役割を果たそうとがんばっている様子が見られる。

 一方,子どもにとって自分を支えてくれる家庭生活においては,それが,あまりにも身近であるために,家族の役割や,自分の果たすべき役割,家族の自分への思いなどに気づかずに生活していることが多いようである。

(2)単元観

 本単元では,まず,自分の家族のことを知っていく中で,自分は家族の中でどのような存在なのか気づかせたい。次に,自分の家庭で,家族一人ひとりがどのような仕事をしているか見つけさせる活動から,いろいろな仕事と家族の支え合いに気づき,家庭生活と自分とのかかわりについて見つめ直す機会を作っていきたい。その中から,自分にもできる役割があることを知り,そのことにより,はじめて仕事の大変さに気づき,家族の一員としての責任や思いやりの心が育つと考えた。

(3)指導観

 指導にあたっては,子どもたちに自分で決めた仕事を実践させ,自分でもできた達成観や家族に認められた喜びを味わわせたい。そこから,家族の一員として自分も役に立っていることに自信を持ち,これからの生活に意欲的に取り組む態度を養っていきたいと考えた。

 また,自分は,家族があって今の成長があることにも気づかせ,それを感謝する気持ちを手紙やプレゼント作りを通して深めさせるとともに,仕事の習慣化を図ることにより,自立心を養っていきたい。

2.授業の実際

(1)活動計画〈13時間〉
 学習活動教師の支援と留意点

 

 
こんなことがあったよ<1時間>
家族と一緒に遊んだことや家庭でのできごとを思い出し,発表する。
お互いに聞き合うことにより,日頃の家族との交流を思い起こさせた。

 

 
うちのひとをしょうかいしよう〈4時間〉
うちのひとにきいてみよう。<2>
インタビューカードを使って,家族のことを調べる。
家族にインタビューすることによって,家族のことをもっと知ると共に,家での役割や仕事に気づかせるようにした。
こんなことわかったよ。<2>
家で調べてきたことをもとにして学級で自分の家族を紹介する
ペープサート 家族新聞
紹介カード など
いろいろな家庭環境の子どもがいることを考慮して,全員ではなく誰か1人でもよいことを確認した。発表の方法は,自分の好きな方法を選んだので,その家族に対する思いがよく表れていた。

 

 
わたしにもできるよ<8時間>
いえのしごとをしらべよう<1>
「うちのなかで,いちばんしごとがおおいのは,おかあさんです。ぼくもときどきてつだいます」

家族のことについて,調べたり,話し合ったりしている中で,自分の生活は家族によって支えられているということに目を向けさせていった
いえでしてるよ してみたよ<2>
家庭で一週間仕事に取り組む
自分のことは自分でする
家の人の役に立つことをする

 (ぼく・わたしのしごとひょう)
「家の人はたくさん仕事をしているな」という気づきから,本来自分のすべきことまで家族にさせていないか?自分も家族の一員としてできることはないか?と考えさせていった。
 一日目に,お風呂洗いをしてもらった時,できるところまででいいと思っていましたが,とてもきれいにできました。「おかあさんは,一年中働いているからもっときれいにしなくっちゃ」といってくれました。嬉しかったです。
シューズやマスクをあらってみよう<2>
 「さいしょは,まっくろだったのにあらえば,まっしろになったのがうれしかったよ」 
自分のことから始めようとマスクやシューズを洗う練習をさせた。経験のある子どもが中心になって教え合い,きれいになったことに満足感を味わっていた。
もっとできることがあるよ<1>
家族のために役に立つ仕事について紹介しあい,仕事の種類を増やす。
・お風呂掃除・新聞取り・洗濯物たたみ・買い物・ゴミ出し・ふとん敷き・靴ならべ・玄関掃除・生き物の世話など
友だちの発表を聞くことによって,他にも自分のできることがあることを知り,家族の一員としてやってみようという意欲を高めるようにした。
うちのひとにおくりたいな<2>
家の人からの手紙を読む。
家の人に贈り物を作る。
・手紙・お手伝い券・賞状・メダル・花束 など
手紙を読むことによって,家族の自分に対する気持ちを知り,感謝の気持ちをこめて,何か贈ろうとする意欲を高めた。
 「ぼくは,くつならべもふろあらいもぜったいやめないからね。いっしょうけんめいやるからね,おかあさん」
 
ひとりひとりの作品の良さを賞賛し,これからも仕事を継続していこうという意欲につなげていった。

3.成果と課題

 本単元の活動は,単に一時的な「お手伝い」に終わるのではなく,単元終了後も,自分の仕事」として定着することを目指すものである。家族の願いである「自分のことは自分で」を柱に,シューズやマスク洗いに取り組ませたが,その後も継続する子どもが多く見られたことは,成果である。今後も生活科で学習したことが,子ども自身の生活に生きて働くような取り組みをしていきたい。


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