1・2年
ふれあいを生かした生活科の実践
−体験を重視し,気づきと活動のある教材の開発を通して−
愛知県海部郡弥富町立桜小学校
松田 昭夫
古田 仁 
1.はじめに

 本校の生活科では,とくに体験を重視し,子どもたちの興味・関心を大切に生かし,自分と身近な社会や自然と深くふれあう活動を通して,多くの気づきや感動が生まれると考えた。同時に疑問や興味をもつことにより,さらに深いかかわりを求めて,次の活動が始まると考えた。


 そこで,生活科の目標や学校教育目標,子どもの実態をふまえ,求める子どもの姿を「体験を喜び,楽しんで活動できる子」と「自分なりに興味のある事象を見つけ,生かすことができる子」とした。子どもたちが考えた活動に,友達と協力したり地域の人々とふれあったりする場を取り入れることによって,自分自身や友達のよさに気づいたり,地域の人の優しさを感じたりすることができるようになる。このような活動をくり返し行うことにより,進んで体験しようとする意欲が高まり,求める子どもの姿に迫ることができると考えた。

2.単元について

 本校では体験活動を重視し,多くの気づきや有効な活動ができるように,学校独自で地域教材を取り入れた年間活動計画を立てた。それぞれの季節ごとに,自然とふれあう体験単元「はるをさがそう」「なつをさがそう」「あきをさがそう」「ふゆをさがそう」を取り入れることにより,季節の変化を感じ取り,自然の美しさやおもしろさを体感できると考えた。同時に,子どもたち同士がいっしょに活動したり,地域の人とふれあったりすることにより,自分自身や友達の良さに気づいてほしいと願って構成した。

3.授業の実際

(1)活動計画「はるをさがそう」(21時間)

第1次 はるをみつけよう(4時間)
学習活動気づきと活動の場
校内や登下校で気がついた春を発表する。
校内や学校周辺を散歩して,春を見つける。
しんせん畑の菜の花と遊ぶ。
遊んだことを発表し合い,もっと春と遊べる所はないか,話し合う。
教師が見つけた春の話や見つけた植物の提示
しんせん畑の菜の花・草花
菜の花園での遊びの工夫

第2次 はるとあそぼう (8時間)
学習活動気づきと活動の場
春の公園でどんなことがしたいか,発表し合う。
春探しの公園探検をするための計画を立てる。
草花のたくさんある公園に出かけ,春と遊ぶ。
          (遠足行事5時間)
見つけた春や遊んだ春をまとめる。
食べられる草花を調べてくる。
草花ミニ図鑑での名前や遊び調べ
 
公園への遠足
えんそくみつけたかあど
はなはなまっぷの作成

第3次 はるをたべよう(9時間)
 ・ ヨモギを摘みに行き,協力して「よもぎパーティー」を開く準備をすることができる。
 ・ 地域のお年寄りからヨモギの食べ方を教えてもらい,友達やお家の人といっしょにヨモギを調理し,楽しい「よもぎパーティー」を開くことができる。
学習活動気づきと活動の場
家庭で聞いたり調べたりしてきた食べられる草花を発表する。
身近でたくさん摘むことができるヨモギを使うことに決め,食べ方を調べてくる。(1/9)
地域のお年寄りから,草花やよもぎ団子の作り方について教えてもらう。(2/9)
ヨモギのたくさん生えている場所はどこか,知っている場所を発表し合う。(3/9)
ヨモギのたくさんある所へ,摘みに出かける。
(4・5/9)
楽しいよもぎパーティーを開く準備をする。
地域のお年寄りやお家の人へパーティー参加を呼びかける。
パーティーを開くための係分担を決める。
(6/9)
地域のお年寄りやお家の人といっしょによもぎ団子を作り,楽しい「よもぎパーティー」を開く。(7・8/9)
作り方を教えてもらったり手伝ってもらったりしたお年寄りやお家の人に,お礼のカードを作る。
お家の人やお友達に楽しかったことを絵に描いて教えてあげる。(9/9)






地域のお年寄りからの説明



用水土手への「ヨモギ」摘み




よもぎパーティー


地域のお年寄りやお家の人,友達とのふれあい
「たのしかったよカード」の作成

(2)具体的な活動

 1)しんせん畑で遊ぼう

 校舎の裏に7.5アールほどの畑があり,これを「しんせん畑」と呼んでいる。この畑は主に学年園として利用しているが,春には一面の菜の花園になる。この菜の花園に入って,自由に遊ぶ中で,遊び方を考えたり,友達を作ったりすることができた。菜の花を迷路にみたて,追いかけっこやかくれんぼをしたり,さやで笛を作ったりして遊んでいた。

 2)春の公園に出かけ,春と遊ぼう

 学校から少し離れたところにある公園には比較的自然が残されており,子どもたちが自由に遊びを考える場所に適しているので,学校行事としての遠足を兼ねて実施した。子どもたちは,思い思いの遊びを考え,違うクラスの子とも楽しく遊ぶことができた。ツツジやタンポポの花をつなぎ合わせた首飾り,タンポポの笛,タンポポのロケット,笹の葉の舟,ツツジのトンネルなど。取ってきた葉っぱや花を押し花にして,公園の「はなはなまっぷ」を作った。「はなはなまっぷ」には遊び方も絵や文にして貼り付けることになり,そのときの様子がよくわかるように工夫した。

 3)はるをたべよう

 事前に地域の物知りおばあちゃんにお願いして地域で見られる草花や食べられる草や木の実について話してもらい,子どもたちからの質問にも答えてもらった。「よもぎパーティー」当日はTTお祖母ちゃん先生として授業に参加してもらい,保護者の協力をえて実施した。初めて包丁を持った子にやさしく教えてくれたり,子どもといっしょに粘土のように団子をこねたりして,たくさんの保護者の方とふれあうことができた。

4.実践を終えて

 自然の生き物とのふれあいを通して,自然の美しさやおもしろさを感じたり,同学年や異学年の友達,地域の人たちとのふれあいを通して,友達と上手に遊ぶことができるようになったり,地域の人の優しさを感じたりすることができた。家の人からは「子どもといっしょに葉っぱを集めたり,いっしょに遊んだりして,話す時間が今までより増え,子どもの気持ちがよくわかるようになってきました。そして,生き生きした顔が見られるようになりました」と知らせてもらい,学校だけでのふれあいを考えていた私たちにとって,新たな効果があることに気づかせていただいた。


2年
「生き物ランド」

1.単元について

(1)子どもの実態

 春の町探検で,ダンゴムシを何匹も捕まえてきたり,ツバメの巣を見つけてきたりと,生き物に対しての関心は高く,家庭でペットを飼っている子も多い。しかし,都合のいいときだけかわいがっているような様子が見られる。また,日常生活の中で生き物とふれあう機会に恵まれず,虫などにさわるのを嫌う子もいる。

(2) 単元設定の理由

 こうした子どもたちに,自然の中での生き物探し,捕まえてきた生き物の飼育,生き物ランドの開催という一連の活動を通して,十分に生き物とふれあう場と観察の機会を与えることで,子どもたちは生き物に親しむことができると考えた。

2.単元構成


第1次(3時間)
生き物をさがしに行こう
第2次(5時間)
生き物を大事にかおう
第3次(7時間)
生き物ランドをひらこう


 町探検のときに見つけた生き物について思い出し,生き物を捕まえに行く計画を立てる。
 捕まえてきた生き物にあったすみかを作る準備をする。
 すみかを作る。
 みんなが楽しめる生き物ランドの準備の仕方を話し合う。
 係に分かれて生き物ランドの準備をする。


 近くの場所に出かけて生き物を探し,観察したり捕まえたりする。
 大切に育てるために必要なことや工夫するとよいことを話し合う。
 当地の名産である金魚の飼い方や種類などについて専門家の方のお話を聞きに行く。
 他の生き物についても,図鑑などで飼い方を調べる。 (自主活動)
 生き物ランドの予行演習をする。
 1年生を招待し,生き物ランドを公開する。


 生き物探しの活動を振り返り,捕まえた生き物をどうするか話し合う。
 自宅近くで生き物探しをする。(自主活動)
 生き物の世話をする。(継続観察)
 生き物ランドの反省をし,生き物を今後どうするかについて話し合う。
 生き物との思い出を振り返り,お別れの言葉を書く。
 お別れ会を開く。
(帰りの会)

3.授業の実態

(1)生き物探し

 クラスで「生き物リーダー」を選び,リーダーを中心に学校周辺で生き物探しを行った。限られた時間・場所での活動であったため,多くの生き物を捕まえることができなかったが,「ぼくの家の近くにはもっといるよ」「こんどの休みに家の人と生き物探しに行くよ」などという発展的な意見も出た。

(2)三輪養魚場での見学

 弥富町は,金魚の生産地として有名である。そこで,三輪養魚場へ出かけ,いろいろな金魚やそのほかの生き物を見せていただいた。金魚だけでなく,イモリや白いエビ,ヤドカリなど多くの生き物が飼われており,子どもたちは目を輝かせて見学していた。その後,生き物の上手な飼い方を説明してもらい,子どもたちの質問にも快く答えていただいた。

(3)生き物ランド

 自分たちが飼ってきた生き物を公開するために,生き物ランドを開いた。教室の飾り付けや係の分担など,よく工夫を凝らして取り組んでいた。また,生き物ランドを開く前に,クラス内で説明するグループとお客のグループに分かれてリハーサルを行った。

 生き物ランドは,1年生を招待して行った。生き物展示コーナー,生き物をさわれるコーナー,金魚すくいコーナー,生き物クイズコーナーなどに分かれ活動を行った。

(4)お別れの会

 生き物ランド終了後,生き物は家へ持って帰ったり,逃がしてあげたりした。死んでしまった生き物に対しては,しんせん畑(校内の畑)で線香をたいて,黙とうをした。

4.単元を終えて

 子どもたちは,生き物の育て方を調べ,世話をしていく活動を通して,命の大切さを感じることができた。生き物ランドを開く前に死んでしまったときは,畑にお墓を作りに行く子どもも多くいた。また,生き物ランドでは,弥富町の特産物である金魚を取り入れることによって,自分たちの住んでいる地域について見つめ直すよい機会となった。


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