1・2年
異学年交流を通して互いを高め合う生活科学習            
〜1・2年生合同の学習を通して〜            
神奈川県大和市立大和東小学校
小林 美紀

1.テーマについて

 今の子どもたちの社会性について何が根本的な問題なのか。一番の問題は,「社会性の基礎となる部分」すなわち「人とかかわりたい」という意欲そのものが低下していることではないか。本校では,同じ地域の子どもたちが集まって来る場所という公立小学校のメリットを積極的に活用し,意図的・計画的に異年齢の子どもたちを交流させる活動プログラムを実践してきた。

 すでに多くの学校でも「たてわり活動」や「異年齢交流」などは試されているが,本校では,「同年齢が相応しい活動」と「異年齢でなければできない活動」,「教師主導で行うべき活動」と「教師が支えにまわり子ども主導で行うべき活動」とを区別することが大切であると考えた。

 まさにこれらは,教師の態度や構えそのものである。「異年齢交流」を通して育まれる「人とかかわる喜び」は,教師が与えるものではなく,子ども自らが獲得していくものである。つまり,こうした活動をどのように子どもたちに提供するのか,子どもがそうした活動に取り組んでいる間,教師はどのような働きかけを行うか等を考え,以下のような実践を行った。

1校内研究

 コミュニケーション力(かかわり合う力)の低下は,「話す・聞く力」の伸長にも大きな影響を及ぼしている。そこで,国語科の学習を中心に,自分の思いを豊かに伝えたり,友だちの伝えたいことをしっかりと聞いたりできる基礎・基本が備われば,自己肯定感が高まると同時に,相手の立場を考えて物事を捉えられる児童が育成できるのではないか,つまりコミュニケーション力(かかわり合う力)を育成することにつながるのではないかという仮説のもと,校内研究では,「豊かな学びの創造をめざして〜基礎基本の充実と,ともに学び,ともに育つ国語学習(話すこと・聞くこと)」に取り組んできた。各学年毎に「目指す子ども像」「つけたい力」を考え,目標の具現化に努めてきた。

2たてわり活動

 他学年との交流が少なく,自然と行われるべき学び合いの場が見受けられないという本校の実態から,一昨年度よりたてわり活動が導入され,児童が交流を持つ場を教育活動の中に意図的・段階的に位置づけている。

3生活科での取り組み

 生活科の特性は,直接体験を重視した学習活動の中で,意欲的に学習や生活ができるよう自立の基礎を養うところにある。だからこそ,児童が身近な人や社会,自然と直接かかわる活動の機会を生活科に位置づけることが大切であると考える。低学年では,国語科で培った「話す・聞く」力を実践する場として,生活科を位置づけ,友だちと話し合い活動を通してかかわり合い,かかわり合うことで互いを高め合うとともに,個としての資質を伸ばせるよう実践を試みた。さらに,一番身近な学年である1・2年生が交わることにより,それぞれの学年がより効果的に互いに高め合えるのではないかと考え,本テーマを設定した。

2.1・2年合同で生活科を行うメリット

 学年としては,一学年しか違わないが,低学年では一学年の差は大きいので,お互いから学び合うことは多い。特に2年生にとっては,リードする立場を意識しなければならない。異年齢集団で活動するメリットとして次の3点が考えられる。

(1) 年齢の近さから,質問や受け答え(話す・聞く)の内容がお互いに分かりやすい。
 
(2) 1年生は,来年自分たちが2年生になるという観点から,次へのステップが分かりやすいと同時に目標が立てやすい。
 
(3) 2年生は,1年生と関わることで自分たちが今まで行ってきた活動の振り返り・再認識ができる。

以上の観点を意識しながら,1・2年合同の生活科の学習を計画・実践してきた。

3.生活科(交流〉の年間実践

※年間を通して,1・2年それぞれ2〜3名のグループで活動を行った。
★学校のことを教えてあげるよ。★一緒に遊ぼうね!
★畑で作った大豆で,一緒に味噌を作ろう!去年も作ったから何でも聞いてね。
★できた味噌でパーティーしようよ!役割分担を考えようね。
4月・・・学校探検をしよう
10月・・・ログハウスへ行こう
11月・・・合同遠足へ行こう
12月・・・味噌を作ろう
★隣の学区のログハウスに行こう。行く道を調べなくちゃね。ログハウスでは何をしてあそんだら1年生は喜ぶかな?
★ログハウスに行った経験を生かして,今度は電車に乗って子ども自然公園に行こう!切符の買い方を1年生に教えてあげなくちゃ。
1月・・・おもちゃランドを開こう(教えて2年生,教えてあげるよ1年生)
3月・・・豚汁パーティーを開こう
★どんなおもちゃを作ったら1年生は喜ぶかな。まず,自分たちで試しに作ってみて。分かりやすい説明の仕方を考えよう!作ったおもちゃで一緒に遊びたいね。
★1年生は,幼稚園生を招待するんだって。上手にできるように色々教えてあげなくちゃね。

4.実践記録

 2年生「おもちゃランドを開こう(教えて2年生,教えてあげるよ1年生)」

(1)単元について

 本単元は,国語科・生活科の合科単元である。生活科としての目標に向けて活動することは勿論,前述の通り,国語科で学んだ基礎・基本を,生活科の中で実際に経験し,実践力を高め,コミュニケーション力(かかわり合う力)の伸長を願った。

(2)目標

(生活科) 身の回りにある材料を利用して工夫しておもちゃを作ったり,作ったおもちゃの遊び方を工夫したりして,みんなで仲よく協力して楽しく遊ぶことができる。
 
(国語科) おもちゃの作り方を相手にわかるように順序よく話すとともに,大事な事柄を落とさないように,気をつけて聞くことができる。

(3)単元計画

国語「一本の木」4
順序を表す言葉「まず,つぎに,そのつぎに,同じようにして」の使い方を学習
説明の仕方の練習として活用


2年生「おもちゃランドをひらこう」17(国語7+生活10

(1) オリエンテーションを行い,学習の見通しを持つ。(生活1
(2) どんなおもちゃを作るか資料を参考にしながらグループで考える。(国語2
(3) グループ毎におもちゃを試作してみる。(生活2
(4) おもちゃを作った経験を生かしながら,事柄の順序に気を付けて「作り方の説明」の文章を個人で考える。(国語1
(5) 個人で考えた文章をグループ内で発表し,補足し合って,より良い「作り方の説明」を作り上げる。(国語2

 
1年生
「幼稚園生との交流会」に向け,ものの作り方の説明の文章を作る。

「教えて2年生,教えてあげるよ1年生」(国語1
(1年生) ものの作り方の説明を2年生に聞いてもらい,よりよいものの作り方の説明の文を作る。
(2年生) 今までの学習を生かし,1年生がよりよいものの作り方の説明ができるように教えてあげる。

(6) 遊び方や全体のプログラムを考え,準備をする。(生活2
(7) 発表練習をする。(国語1
(8) 2年生同士で「おもちゃランド」をひらく。(生活2
(9) 1年生を招待し,「おもちゃランド」をひらく。(生活2
(10) 振り返りをする。(生活1
 
 

「幼稚園生との交流会」

(4)成果と課題

 2年生にとっては,「おもちゃランド」を開いて1年生を招待したいという子どもたちの思いが,各活動の根底にあり,意欲の高まりの中,相手を意識した活動を行うことができた。さらに,かかわりの中で,1年生に「2年生はすごいな。」などと思われたことが,達成感や満足感を生み,それが自信につながり,自己肯定感が高まった。また,1年生は,「2年生になったら,自分たちも1年生に色々教えてあげたいな。」と意欲を持つことができた。さらに1年生は,この経験から学んだことを生かし,2年生が自分たち1年生にしてくれたことを手本として,その後幼稚園生を招待し,年上であることを自覚しリードしながら楽しく遊ぶことができた。

 それぞれの学年が,かかわり合ったことにより,互いを高め合うことができたように思う。また,年間を通して,同じグループで活動したことも,低学年の子どもたちにとっては,安心感を生んだようだ。

 それぞれの学年の発達段階は違うので,やみくもに合同で行うのではなく,互いの学年にとってプラスになる高め合える場面で交流することが大切であると考える。どのような学習場面において合同で行うことが効果的なのかを吟味し,実践を重ねていきたい。

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