私の実践・私の工夫(生活科)

1年
手をつなぐ・心をつなぐ・学びをつなぐ       
−自分の学びを確かに感じられるなにわっこの育成−
       

大阪A小学校
 指導にあたって

 本校では,地域・学校をあげて花いっぱい運動を繰り広げ,四季折々の花で学校はもちろん町並みは,美しく整っている。また,地域・教職員・全校児童・PTAが一体となって造った学校ビオトープは,いこいの池,水田,学習園,池の周辺の樹木,木肌を生かしたテーブルやベンチなど,3年の月日をかけてできあがった。


ふれあいの池

いこいの池

5年 イネ

 本学級の児童は,草花や自然の多い校園にめぐまれ,入学当初から校庭の草花に興味を持っている。5月に一人一鉢でアサガオの種をまき,学習園でサツマイモの植付けを経験している。一生懸命に草抜きや水やりなどの世話をして,植物の生長を目で見ることは,児童の励みや喜びになっている。そして,世話の大切さや大変さに気付くことができている。7月には,ヒャクニチソウの苗も植え,花と緑いっぱいの学校の一員として栽培活動に取り組んでいる。夏休み前から,アサガオはきれいな花が咲き,サツマイモは地面が見えないほど,葉で覆われるようになっている。地中にある芋が大きく育ってくれることを願って,夏休みも世話を続けてきている。


1年 花壇 あさがお ひまわり

1年 花壇 ヒャクニチソウ

1年 学習園 さつまいも

 2学期になり,夏休みの間,家に持って帰って世話を続けてきたアサガオの種を児童が持ってきた。また,地域の方からドングリやマツボックリ,ツバキの実などをいただき,教室の中に少しずつ秋が運ばれてきて,「あきがいっぱい」の学習に取り組むこととなった。

 本単元では,まず,「秋を感じること」について話し合い,秋のイメージをつかませる。そして学校の秋探しをする。学習園やいこいの池の周りなどで,春に観察した自然との違いを見つけさせる。ドングリや落ち葉を拾ったり,観察したり,遊んだりして,見過ごしていた身の回りの秋に気づき,秋を感じ取らせたい。また,秋の遠足で長居公園に行くので,そこでも秋探しをしてきたいと思う。その後,もらったドングリや木の実,拾ってきたドングリなどを使って地域の人といっしょに,おもちゃを作る活動を通して秋の学びを深めたい。

 また,サツマイモの収穫をする。収穫後,切り取った蔓で,なわとびをしたり,電車ごっこをしたり,友達と協力して楽しい活動を行う。その後,蔓でリースを作ったり,サツマイモをよく見て絵手紙を書いたりする。収穫したサツマイモは,10月の学習参観のときに,お家の人といっしょに調理して食べ,収穫の喜びを分かち合う。残った蔓や葉はコンポストに入れるか,堆肥を作る場所に置き,再利用することを伝える。自分たちが育てたサツマイモが無駄なく利用されることで,児童は栽培した充実感がより得られると思われる。

 本校は,ビオトープがあり水の中の生き物や鳥などの姿もよく見られ,また栽培活動の盛んな学校でもあるので,町の中の学校にしては自然とふれ合う機会が多いと思われる。しかし,児童は,ふだんの生活の中で自然で遊んだ経験は乏しい。本単元の学習では,見る,聞く,匂いをかぐ,触る,肌で感じる,食べるなどの体験を通して秋という季節を実感し,秋の発見を利用した活動を多く取り入れて,秋を充分楽しませたい。

 学習のまとめとして,秋の活動で楽しかったことや分かったことなどを発表する会を行う。身近な自然や周りの様子から発見した秋,楽しんだ秋,きれいだった秋,おいしかった秋などを振り返り,自然や季節の変化に一層関心を持つようにさせたい。

 また,本学級の児童は素直で何事にもまじめに取り組む。しかし,大きな声ではきはきと話したり,意欲的に発言したりすることは苦手な児童が多い。そこで,発表会を行うことを通して,集団の前で発表することに慣れ,自信を持つようにさせたい。

 単元全体を通して,子どもの学びを確かにするために,

  手をつなぐ

 ・ 校庭の自然環境を十分に活用し,生き物とのふれ合いを積極的に進め,学習活動に生かす。

 ・ 地域の人や保護者と意欲的に交流し,多くの人から学ぶ活動を大切にする。

  心をつなぐ

 ・ 自分の思いや考えを十分自分なりに表現できるよう支援する。

 ・ 交流活動を通して,友達の活動から自分の活動を振り返ったり,次の課題を見つけたりし,活動を発展させていく。

  学びをつなぐ

 ・ こだわりを大切にした体験を重視し,十分な活動時間を確保する。

 ・ 体験したことの振り返りや友達と体験を伝え合う活動の中で,次の学習活動への意欲を高める。

 ・ 校内マップや板書,振り返りカ−ドなどの学習の軌跡をたどり,子ども一人一人の学びを整理し,より確かなものにする。

1.単  元  「 あきがいっぱい  〜たのしいあき みーつけた〜 」

2.単元目標
 ・ 校庭や身近な自然に関心をもち,意欲的に草花や野菜・木の実などの植物,虫などの小動物とかかわろうとする。

 ・ 自然にかかわる活動や友達との交流を通して,秋の季節の様子に気付いたり,自然への親しみを深め大切にしたりすることができるようにする。

 ・ みつけた自然とのかかわりを考えたり,工夫したり,楽しんだりしたことを,自分なりに表現して交流することで学びを深めることができる。


3.活動の流れ (全23時間)

 第1次 あきとあそぼう (6時間)

目標
 ○校庭や身近な自然で遊びながら植物や小動物に関心をもち,秋の気配に気付くと共に自然に親しむことができる。

 第2次 あきのとりいれをしよう (8時間)

目標
 ○育ててきたサツマイモを収穫し,みんなで収穫の喜びを分かち合うことができる。

 第3次 あきのはっぴょうかいをしよう (5時間) −本次

目標
 ○みつけた自然とのかかわりを考えたり,工夫したり,楽しんだりしたことを,自分なりに表現して交流することで秋の学びを楽しむことができる。

 第4次 「あきのおわり」をたのしもう (4時間)

目標
 ○校庭や身近な自然で遊びながら植物や小動物の変化に関心をもち,秋の終わりの気配に気付くと共に自然に親しむことができる。

4.本次の活動

 第3次 あきのはっぴょうかいをしよう (5時間)

子どもの活動と思いや願い ◇指導者の支援 (◆表現にかかわる支援)
あきのはっぴょうかいのじゅんびをしよう

 ○  秋の発表会の計画を話し合う。

内容

みつけた秋(秋の動植物)
秋の素材で遊んだこと
いもほり
サツマイモの葉やつるで遊んだこと
おいもパ−ティ−  など


 ◇  楽しかった秋を振り返り,心に残ったことや気付いたことについて話し合いながら,どんな発表会にしたいかイメ−ジを膨らませ,具体的に計画が立てられるようにする。

   ・ 方法

紙芝居 ペ−プサ−ト
劇や動作化 クイズ
絵と文  歌    など

 ◇  活動に応じた表現ができるように,いろいろな表現方法を思い出させると共に,経験のない表現方法については知らせるようにする。

 ○  発表グル−プを作る。

 ◇  意欲的に発表できるよう,子ども一人一人の思いや願いを大切にしてグル−プを作るようにする。

 ○  秋の発表会の準備をする。

発表の順番

係(飾り付け 進行 あいさつなど)

準備物

発表練習

 ◇  会の進め方や役割りを決めることで,意欲を高めると共に,友達とのかかわりをより深められるようにする。

   ・会場づくり

 ◇  友達と協力しながら準備ができるように,場の設定を工夫する。

 ◆  振り返りカ−ドや写真をもとに,自分が発見したり友達から教えてもらったりした秋を,分かりやすく表現するようにする。

 ◇  友達と楽しくかかわりながら準備ができるよう励ましたり,うまく進んでいないグル−プの相談にのりアドバイスしたりする。

 ◇  発表内容や方法に合った場の設定を助言する。

あきのはっぴょうかいをたのしもう

 ○ 「たのしかったあき」を交流する。


 ◇  準備物を活用し,大きな声で分かりやすく報告することを確認する。

 ◇  秋の交流を通し,再度秋を楽しむことができるように,場を盛り上げるようにする。

 ◆  自分や友達と発表交流をしてよかったなと思うことを伝え合うことでお互いの活動を認めるようにする。

 ○ 活動を振り返る。

 ◆  振り返りカ−ドを書くことで,自分のがんばりを確認し,自信をもったり友達のよさも確認したりし,次の活動への見通しをもたせるようにする。





関心・意欲・態度 思考・表現 気付き
友達と協力しながら秋の発表会の計画を立て,準備を工夫して行おうとしている。

秋の発表会をみんなで協力して進め,楽しんでいる。

楽しかった秋の自然や遊びについて,自分なりの思いを大切に,工夫して表現することができる。

みんなの前で,いきいきと発表している。

秋の自然の様子や自然と遊ぶことの喜びに気付いている。

自分や友達の発表のよいところに気付いている。


4.実践を終えて

 (1)  手をつなぐ

 他校に比べて恵まれた校内自然環境の中,入学当初より植物や小動物とかかわる活動を深めてきているが,季節の変わりにタイミングを合わせ,秋の生き物探検を実施した。

 子どもたちは,ふれあい学習園を中心に探検をし,クリの木,ミカンの木,カリンの木,カキの木,ザクロの木,ヒガンバナ,トンボやチョウチョ,カブトムシの幼虫やダンゴムシを発見した。毬栗を拾ったり,カリンのにおいに気付いたり,トンボやョウを追いかけたり,また,サツマイモ園の土からイモが少し顔を出している様子も発見するなど,どの子ものぞいたり,触れたり,におったり,探したり,追いかけたりと諸感覚を働かせて秋の自然と出会い,生き生きと活動した。


 地域には,「植物博士」と子どもたちに親しまれている野草にくわしいおばあさんがおられ,入学当初より何度か交流している。本単元においても,山歩きに出かけた折に拾ってこられたいろいろなドングリを見せていただいたことをきっかけに,自分達も秋の遠足でたくさんのドングリやマツボックリを集めた。そして,おばあさんに教わったり,友達と協力したりしながら木の実を使っておもちゃや飾り作りを楽しむことができた。


 また,サツマイモの取り入れでは,TTの先生や管理作業員さんとも交流を持ちながら取り入れ作業を進めることができた。おいもパ−ティ−では,保護者の方に協力していただきながら「ふかしイモ」「スイ−トポテト」「ホットプレ−ト焼きいも」を楽しく調理する場を設定した。


 このように,本単元では,校庭の自然環境を十分に活用して自然とふれあい,秋の素材を積極的に学習活動に生かし,それぞれの活動で,子ども同士は勿論のこと,地域の人や教職員,保護者と意欲的に交流し,多くの人と手をつなぎながら学ぶ活動を大切にして実践することができた。

 (2)  心をつなぐ

 秋の生き物探検中にも,すでに子どもたちは,情報交流をしている。「うわあ,むっちゃいいにおい。みんな来て来て」カリンのにおいをかぎつけた子ども。「見て見て,いがいがの中から赤ちゃんグリがでてきたよ」このように思わず発した子どものことばにすばやく反応し,かけつけた子どもたちや先生にも共感され,発見を認められたことで,ますます意欲を高めて活動を進めた。

 1回目の秋の生き物探検後,自分たちの発見の情報交流をした。まだ,書く活動が十分にできない1年生にとって,話したり聞いたりする活動は,自分の活動を振り返り,新たな思いや願いを膨らませ,次の活動への意欲を高めるのに大切である。

 「学校にクリができてびっくりした。」「クリは,とげとげの中に入ってる」「カキができていておいしそうやった」「緑色のミカンができていた。まだ,すっぱそう」「カブトムシの幼虫をみつけた」「どこで」とたずねられ,「土を掘ってたらでてきたよ」と答える。「ビオト−プ池の近くは蚊がたくさんいて足をいっぱいかまれた」「どうしてビオト−プ池の近くは蚊が多いんだろうね」と指導者が返してやるが分からず,答えは調べることになる。探検中に「これ何の実?」とたずねていた子は,「ザクロの実を見つけました」と覚えて発表した。トンボやチョウを必死に追いかけたが捕まえられなかったことを伝えた子は,手では捕まえにくいことを指摘され,道具のいることを確認した。

 このような話し合いを元に校内マップに整理し,もっと探検したり調べたりしたいという意欲を高め,一人一人の課題を明確にして,2回目の探検をした。

 探検からもどってきた2回目の報告会では,「いいにおいのしていたカリンが落ちているのを見つけましたが,虫が食べていました。きっと甘くて,おいしいから虫も寄ってきてるんやと思いました」とカリンを思いやり,また,ある子は,「カリンをきってつけておいた汁はのどにいいって校長先生が教えてくれました」と付け加え,知ったことを広めた。「もっとカブトムシの幼虫をみつけようと石を退けたらダンゴムシをいっぱい見つけてうれしかったです。ダンゴムシはいつも石や植木鉢の下にいます」と春や夏との共通点に気付いた。「蚊の幼虫はボウフラって言って,水の中にいるってお父さんに教えてもらいました。だから,ビオト−プ池の周りに大人になった蚊がいっぱいいます」と確かめてきたことを伝えると「トンボとにてるんだね」と学びが広がった。

 集めた木の実を使ってのおもちゃや飾り作りでは,地域のおばあさんにバランスがとれる穴のあけ場所を助言してもらったり,どのドングリがいいか話しながらいっしょに選んでもらったりした。


 また,友達ともなかよく相談したり協力したりと,人との交流の中で次々と作品作りに挑戦した。子どもたちは,秋の素材に親しみながらよりよい作品作りの工夫に熱中し,作品の完成に満足することができた。サツマイモの栽培を共に活動してくださっているTTの先生や管理作業員さんに,生き物探検の折にサツマイモ園の土からイモが少し顔を出している様子を報告に行った子どもたち。「おお,そうか。もう少し待って,大きないもをいっしょに掘るぞ−」の返事に成長への楽しみを膨らませる。そして,いよいよいも掘り。いもが傷つかないように周りからやさしく掘るだけでなく,つるを使って遊べるので大事に刈ることも教わり,作業を進めた。一人一人がいもの成長を願い,何度も足を運んで世話や観察をした効果は大きく,一人で7個8個と次々に掘り出し,その度に歓声を上げながらTTの先生や管理作業員さん,友達に自慢して見せ,収穫に大満足である。また,収穫後,つるでなわとびをしたり,友達と協力し合いながらリ−ス作りをしたりし,「つるでこんなこともできるんだ。おもしろい」と楽しく活動できた。


 さらに,豊富ないもの収穫で,おいもパ−ティ−をすることにし,保護者の方にも味わっていただこうと招待し,「ふかしイモ」「スイ−トポテト」「ホットプレ−ト焼きいも」作りを援助していただきながら楽しく調理する場を設定することができた。「がんばってお世話したからいっぱいできたんだね」「スイ−トポテトも作れるようになったね」と褒めていただくことで,子どもたちは自信をもち,充実感を味わった。それぞれの活動で,多くの人と情報交流したり,わからないことはたずねたり,いっしょに活動したりしながら心をつなぎ,そこで認められることで,多くの学びにつなげることができた。そして,新たな活動への意欲へと発展していった。

 (3)  学びをつなぐ

 いろいろな秋での体験を思い出し,特に印象にのこっている活動ごとにグル−プを作り,自分たちなりに表現方法を工夫して秋の発表会をした。
発表準備にあたり,それぞれの活動でどんな苦労があったか,どんな工夫をしたか,どんなことが分かったかなどを引き出し,まとめさせておく支援が大切である。また,発表の仕方においても,聞き手が興味をもてるように工夫するよう助言し,いろいろな発表パタ−ンを経験させることも大切である。

 いも掘りグル−プは,苗から大きなイモを作るために,がんばって水やり,草抜き,つる返しをしたこと,うねや溝のある意味など分かったことをクイズに出すことで学びを確認した。

 おいもパ−ティ−のグル−プは紙芝居に,スイ−トポテトの作り方をまとめて発表し,おいもをおうちの人といっしょに作り,おいしくいただいた感動を伝え,秋の収穫の喜びを表現すると共に,大事に育てることの大切さを確認した。

 生き物探検グル−プは,自分が生き物になりきって,気持ちよくとぶチョウや捕まえられないように必死ににげるトンボの様子をペ−プサ−ト劇で表現した。

 つるや葉で遊ぼうグル−プは,つるのリ−ス作りで友達と協力して活動したこと,なわとびや綱引きでいっしょに楽しく活動したことを再現して発表した。

 木の実で遊ぼうグル−プは,やじろべえやドングリごまの作り方など苦労してつくった作品をみせながら発表し,教えていただいた地域のおばあさんに感謝の気持ちをもち,感謝状を書いて手渡した。

 発表後,一方的な発表で終わらないよう,発表のよかったところや発表内容になかったことをもう一度指導者の問いかけで話に出し,さらに,具体的に活動を振り返り確認し合った。そして,板書で「うれしい秋」「おいしい秋」「みつけた秋」「あそんだ秋」「たのしい秋」とまとめることで,今までの多様な秋の活動を実感し,学びを確かなものとして価値づけることができた。さらに,今度は,深まる秋の中「きれいな秋」として,落ち葉を中心に秋を思いっきり楽しみ,遊ぶという活動へ導いた。

 このように,発表準備の段階で,再度活動を振り返り,自分の学びを確かめ,伝え合うことを通して,自分の活動と比べて聞いたり,友達から自分の学びを再確認したりできた。また,友達のがんばっている姿から学ぶ意欲や友達のよさを実感することもできた。そして,自分自身も他から認められることで活動そのものの意義を体感し,やってよかったと自信をもつことができた。

 (4)  今後の課題

子どもたちの活動への思いが一方的な発表で終わらないよう,学びを価値付け,新たな活動への意欲に発展できるような双方向の話し合いを展開するための支援のあり方をより工夫する。

1年生なりに書きやすい振り返りカ−ドに改善することで,学びを認識できるようにする。

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