私の実践・私の工夫(生活科)

1年
「生きる力」に通じる「総合的な学習」の基礎を養う       
−単元「あきとあそぼう」を通して−

山梨県甲府市立東小学校
窪田恵子 立花婦美子 飯田圭子

1.単元名 「あきとあそぼう」

2.単元について

   設定の理由

 入学以来,子どもたちは校庭や学校の周り・地域の公園など,自然とかかわりながら活動してきた。1学期には,校庭の桜の木を「クラスの木」として決め,その木を中心に春や夏の草木の様子を観察したり,朝気ふれあい公園に行き,草木や花・虫を観察したり遊んだりして自然とふれあってきた。また,あさがおの世話をし,育てることにより,成長の喜びや世話をする楽しさを味わってきた。子どもたちは,今までにこのようないろいろな体験をすることにより,少しずつ自然への興味・関心が深まってきた。

 秋は,1年間の中でも自然の大きな変化が1年生の子どもたちにもはっきり目に見える時期である。秋さがしをしたり,秋の自然の中で遊んだり観察したりする活動を通して秋の季節感を五感でとらえ,秋の自然の様子や季節の変化に気づき,秋を体全体で味わえるようにしたい。また,子どもたちが秋の自然物に関心をもってそれらを集めたり,木の葉や木の実などを使ったおもちゃやかざりなどの制作活動も取り入れ,子どもたちが進んで調べたり,自分なりの発想で工夫して物を創り出す喜びを味わえるようにしたい。

 そして,自分が作ったおもちゃやかざりの作り方を友だちに教えたり,作りたいおもちゃの作り方を教えてもらったりするなど友だちとのかかわりをもつことにより生活科のねらいである自立への基礎を養うことができると考えた。子どもたちは,お互いに伝え合い教え合うことにより,自分らしさや友だちのよさに気付いたり,一緒に作ったり遊んだりすることの楽しさに気付くことができる。

 子どもたちは,自分のめあてに向かって考えたり,調べたり,やってみたりしながら追求していく。さらに,つかみ取ったことを様々な方法で表現し伝えていく。これらの自分が主体となる学習活動は,総合的な学習の基礎になり,研究主題の「生きる力」にせまることになるだろう。

   評価の方法

 生活科は,具体的な活動や直接的な体験を重視する教科であるため,一人ひとりの子どもが,それぞれの目標に向かってどのように取り組んでいるか,子どもの立場に寄り添う姿勢であたたかい目で観察し,適切な援助を与えていきたいと考えている。特に,生活科の評価の方法として,発見カード・ふりかえりカード・生活科ファイルを活用していきたい。

 発見カードは,子どもが秋という自然の中で活動や体験を通して,それらにどのように興味・関心をもち,どんなことに気づいたかを評価したい。また,ふりかえりカードを学習の内容に合わせて活用し,自分自身の活動を振り返り,自分に目を向けさせたい。そして,発見カード・ふりかえりカード・活動プリントなどを綴じた生活科ファイルをつくり,活動や体験そのものや,その活動や体験の結果,生み出された成果や表現などを評価していきたいと考えている。

 こうした評価を適切な援助や指導に結びつけ,子どもたちの自信や意欲を高め,主体的な活動に発展させていきたい。このことが総合学習にも生かされていくものと考える。

3.児童の実態

 男子45名,女子33名 計78名で2学級の学年である。4月当初,全体的に落ち着かない雰囲気であったが,次第に学校生活にも慣れ落ち着いて行動できるようになってきた。全体的に明るく活動的な子どもが多く,休み時間は,のびのびと外で遊んでいる。

 学習については,与えられた課題にまじめに取り組み一生懸命考えたり,教師や友だちの話を集中して聞いたり,活発に発言したりしている。

 生活科の学習は,楽しみにしている子どもたちが多く,これまでに学校探検やあさがおの栽培活動などに意欲的に取り組んできた。学校探検では,2年生と「なかよしペア」を作り,2年生に案内してもらい学校を探検するなど異年齢の人とかかわり合いながら学ぶ体験をしてきた。また,あさがおの栽培活動では,毎朝水やりを欠かさずやりあさがおの世話を進んでやった。

 しかし,「虫や草花であそぼう」の学習では,雑草園の中に入るのをためらっていたり,友だちのするのを傍観している子どもも見られた。ふだん,このような場所で遊ぶ経験がないからではないかと思われる。

 また,事前に行ったアンケートの結果から子どもたちは,自然への興味・関心をもっているが,自然とふれあって遊ぶ経験や自然物を使って何かを作る経験が少ないこと,そして,作った経験がある子どもたちも幼稚園や保育園といった場の設定でのことであって,自ら進んで自然に目を向け親しんだり,働きかけたりする機会はあまり多くないことがわかった。

 「観察カード」や「発見カード」を書くことにより,徐々に身近な自然に目を向けることができるようになったり,自然を見ていろいろなことに気がつくようになったりして,いろいろな疑問を持ったり,調べてみようとしたりする姿勢が見られるようになってきた。

 「学校探検」では,2年生の行動を見て,学び方を学ぶことができた。また,「虫と遊ぼう」の学習では虫さがしをした後,その虫について名前・えさ・住んでいる場所など本や図鑑で調べた経験があり,調べ学習の仕方について少しずつわかってきているようだ。

 しかし,子どもたちは,課題を与えられるとそれについて取り組むことができるが,自ら課題を設定し主体的に学習する経験は,まだ少ない。

4.単元で培いたい力

[生活への関心・意欲・態度]

 ・ 秋の自然物に関心を持って集めたり,それを利用したおもちゃやかざりを進んで作った り,友達とかかわりながら楽しく遊んだりしようとする。

[活動や体験についての思考・表現]

 ・ 秋の自然物の特質を生かしたり自分なりの工夫をしたりして,おもちゃやかざりを作ることができる。

 ・ 自分が作ったおもちゃやかざりの作り方を絵や文で表現したり,友達が作れるように教えたりすることができる。

[身近な環境や自分についての気付き]

 ・ 秋の自然物の様子や季節の変化に気付く。

 ・ おもちゃやかざりの作り方を教え合うことにより,友達とかかわって活動することの楽しさに気付く。

5.総合的な学習につながる培いたい力

 ・ 公共の施設は様々な人々が利用していること,秋の自然物を使っておもちゃやかざりを作れることに,気付くことができる。(つかむ)

 ・ 秋の自然物を使ってどんなおもちゃやかざりが作れるか,本で見たり家族に尋ねたりして調べ,工夫しながら作ることができる。(調べる)

 ・ 自分が作ったおもちゃやかざりの作り方を,絵や文を使って,わかりやすく書き表すことができる。(まとめる)

 ・ 秋の広場で,自分の作ったおもちゃやかざりの作り方を友達に教えたり,作りたいおもちゃの作り方を友達に教えてもらったりすることができる。(伝える)

6.指導計画

 (実施期間10月〜11月<17時間>)
過程
(時間)
主な学習活動 教師の支援・働きかけ 形態
◆資料
第1次













(4)

(つかむ)
1) 校庭を散歩し,クラスの木を観察する。

2) 秋になって気付いたことを話し合う。

3)  朝気ふれあい公園へ行く。

 公園の中を散歩したり遊んだりする。

 公園の中で木や草花・虫の様子を観察して秋を探して,草花や木の実,木の葉などを集める。
 子どもたちの気付きを大切にし,その都度みんなに知らせるようにして,個の気付きを広げられるようにする。

 公園の使い方,公共施設でのマナーについて,よく考えて行動するようにさせる。

 おもちゃやかざりなど参考にできそうな図書や掲示物・見本などを用意する。
学級

 ワークシート(あきのさんぽ)

 発見カード(クラスの木・みつけたあきのたからもの)

 ふりかえりカード(1)
第2次








ちゃ







(6)

(調べる)
1)  集めた木の葉や木の実でどんなものが作れるか調べる。

 ・ 調べ方を考える。

 ・ 実際に調べてみる。

2)  作りたいものを決める。

人形・でんでんだいこ・やじろべえ・ツリー・リース・くびかざり・しおり・どんぐりごま・ブローチ・マラカス・けん玉・まとあて

3)  道具の使い方をしり,使ってみる。

 きり等でどんぐりに穴をあける。

 ボンドで,葉っぱを紙にはる。

4)  作りたいものを実際に作り,遊ぶ。

 人形・ツリー・しおり・マラカス
(1組教室)

 でんでんだいこ・どんぐりごま・けん玉・リース
(2組教室)

 まとあて・やじろべえ・くびかざり・ブローチ
(生活科室)

 図書や掲示物の他に家の人に聞いて調べることができることに気付かせる。

 たくさん調べたものの中から,希望の多いものに決めていく。

 道具を安全に使えるようにきり等の一斉指導を行い,注意して使用するように意識づける。

 材料集めについては学年だより等で,家庭に連絡し,協力を仰ぐ。

 出来上がった作品は展示し,互いに見せ合うことで他のものも作ってみたいという意欲を持たせる。
学級から各グループ活動へ

 ワークシート(つくれるものしらべつくるものしらべ

 ふりかえりカード(2)
第3次












(5)

(まとめる)
1)  人に伝えられるように自分の作品の作り方をまとめる。

2)  友達が作るための材料を準備する。

3)  何を教えてもらうか決める。

4)  会の進め方や約束を話し合い,準備する。

 友達がわかりやすい文や読みやすい字で書くよう促す。

 必要な材料を考え,用意しておくように助言する。

 1対1で教え合いができるように子どもたちの希望を取り入れながら決めていく。

 係分担を決めたり,必要な掲示物を準備させたりする。

 教える人と教わる人を交代して,両方経験できるように,役割分担を決めておく。

 子どものアイディアを生かしながら,活動しやすい場となるようにする。
各グループ活動

 ワークシート(あきのたからものをつかって…おしえてあげるよ)

 ふりかえりカード(3)
第4次
本時










(2)

(伝える)
1)  はじめの会をする。

2)  グループごとに友達と教え合いをしながら一緒に作る。

3)  終わりの会をする。

 楽しかったことを発表しあう。
 つまずきのある児童に助言する。

 音楽を流して,移動や片づけの時間を知らせる。

 子どもたちの思いをみんなで共感できるような言葉がけをする。

グループ活動

 ふりかえりカード(4)

7.本時の学習

 (1) 日時 平成14年11月18目(月)3−4校時

 (2) 場所 1年1組,1年2組,生活科室の各教室

 (3) 題材名 秋の広場でつたえよう(第4次)

 (4)  目標

 秋の自然物を使っておもちゃや飾りを進んで作ろうとする。〔関心・意欲・態度〕

 自分で作ったおもちゃやかざりの作り方を友だちに教えることができる。〔思考・表現〕

 秋の広場で,友達とかかわって,活動する楽しさに気づく。〔気付き〕

 (5)  展開

過程
(時間)
主な学習活動
○教師の支援・働きかけ
●評価
形態
◆資料




10分
1,はじめの会をする。

 ・はじめの言葉

 ・約束について

 ・先生の話
できるだけ子どもの運営にまかせるようにする。

前時までに自分たちで話し合った約束を思い出させ,意識づける。

子どもたち自身にねらいを意識させるような言葉かけをする。
グループの各教室




55分
2,秋の広場を楽しむ。

 ・グループごとにおもちゃや飾り等の作り方を説明し,作る。

人形・ツリー・マラカス・しおり
(1組教室)

でんでんだいこ・どんぐりごま・けん玉・リース
(2組教室)

やじろべえ・まとあて・首飾り・ブローチ
(生活科室)

 ・教える人と教わる人を交代する。
つまずきのある児童に助言する。

ものづくりをする時,子どもの気持ちが盛り上がるので,安全面には特に気をつける。

友達と進んでかかわりあいながら,楽しく活動ができているか。

自分でつくったおもちゃやかざりなどの作り方を友達に進んで教えているか。

交代の時には音楽を鳴らして知らせる。
グループ活動

 ワークシート(あきのたからものをつかって…おしえてあげるよ)

BGM




20分
ふりかえりカード(4)の記入

3,終わりの会をする。

感想発表

先生の話

終わりの言葉
自分たちの活動した気持ちを素直に表現するようにさせる。

できるだけ子どもの運営にまかせるようにする。

子どもたちの思いをみんなで共感できるような言葉がけをする。

友達と関わって活動する楽しさに気づいたか。
グループの各教室

 ふり返りカード(4)

 (6)  成果と課題

<成果>

 ・  本単元では,友達とのかかわりに重点を置いて活動を計画した。特に研究授業の中では,一緒に活動することの楽しさを子どもたちに気づかせるため,お互いに教え合う活動を取り入れた。初めての教え合いだったが,秋の自然物を使ったおもちゃや飾りをどの子もほぼ時間内に仕上げることができた。しかも,授業終末に行ったふりかえりカードの記入では,自分が調べてやってみた作り方を,友達に伝えることができた喜びを表現している子どもが多かった。1年生ではあっても,「伝える」活動を仕組むことにより,まず自分がその課題についてよく調べ,相手を意識してまとめることができるということがわかった。総合的な学習につながる「伝える」力が培えたと思う。

 ・  「伝える」活動のときは,希望者の中から教える子どもと教わる子どものペアを日頃の実態を考慮しながら前もって決めておき,1対1で教え合う行う学習形態をとった。これは,一人で大勢の友達に発表することよりも,顔を突き合わせ手を取りながら作り方を説明することの方が1年生の発達段階に即していると考えたからである。こうすることで,グループの中心的な子どもだけが活動し,ほかの子どもは見ているだけというような状況も防ぐことができる。実際の授業では,どの子も大変意欲的に活動し,説明の仕方も事前に一度指導しただけにもかかわらず,アドバイスを加えながらとても自然に教えることができた。教える側も教わる側も双方とも表情がとてもよかったのが印象的だった。

 ・  本単元では,以前から使用していた発見カードやワークシートに加えて,ふりかえりカードに記入する活動を取り入れた。これには,生活科としての目標の到達度をふりかえらせる質問項目とともに,3年生以降の総合的な学習の時間につながるような,自分の学び方をふりかえらせる質問項目を設定した。「つかむ」「調べる」「まとめる」「伝える」の各過程で,ふりかえりカードを記入するうちに,1年生でも自分なりに書くことができるようになり,考えを深めたり,意欲を高めたりするもととなった。

 また,低学年でも,しばらく前までの活動を思い出してふりかえることができるということもわかった。教師の側からしても,目に見えない部分である一人ひとりの気づきを評価してあげることもできてよかったと思う。今後も,積み重ね行っていきたい活動である。

 ・  評価については,学習カードを綴じ込んだ子どもたち一人ひとりの生活科ファイルに目を通し,コメントを書き添えて子どもに伝える方法とともに,観察表(見取り表・チェックリスト)に記入していく方法を取り入れた。これは,各過程ごとに設定した3つの観点による評価規準を前もって記述しておき,それに対する実現状況を子どもたち一人ひとりについて観察しメモできるようにした表である。どのように活用したらよいか迷っていたが,指導主事の先生のお話から,1時間の授業時間内で全ての子どもについて記述するのではなく,何時間かかけて見取っていったり,授業後に学習カードに目を通した中から気づいたことを記述していったりすればよいことがわかった。

 さらに,「受容(動)的評価方法」(児童の言動や学習カードの観察・分析)にとどまらず,「能動的評価方法」(問いかけや対話のような教師の意図的な働きかけによる分析)を積極的に取り入れていこくことが大切であることも教えていただき,今後の実践の糧とすることができた。

<課題>

 ・  生活科の学習では,体験の中に作る以外に外で落ち葉の中で遊ぶなど秋の自然にふれて活動する場面がほしい。また,季節の変化と生活に関わる部分をもっと多く取り入れるとよい。

 ・  作りながら遊ぶ,作ることと遊ぶことを一体化させることが大切で遊ぶスペースを作るとよい。

 ・  教師の願いや子どもたちの様子がよくわかるために学びの設定を指導案の中に入れていくことが大切である。

 ・  子どもたちが,「自分の考えを発信したい」という意欲をかきたてるような指導計画を立てていくことが大切である。

 ・  どのような指導体制で指導していくか教師間で話し合いを充分に行い,活動内容をしぼっていくことが大切である。

 ・  自分の活動を振り返ることにより,自己評価力が向上し次への活動につながるのでふりかえりカードを今後も活用するとよい。

 ・  ふりかえりカードは,子どもたちに馴染みやすいものがよい。また,ファイルに綴るなど継続し積み上げていくことが大切である。

 ・  生活科の評価は,3つの観点で行い,文章にメモをとる,チェックリストを使うなど評価記録簿を作成していくことが大切である。

 ・  指導案の中に指導項目を載せそれについて教材感(評価規準)を書き,それが目標とずれないようにしていく。

 ・  多様な評価方法で子どもたちを見取っていくことが大切である。

 ・  相互評価をすることで自分のよさに気づくことができるので,今後は相互評価も取り入れていくことが大切である。

 ・  生活科の学習は,総合的な学習の素地となる力が身に付くので課題解決的な学習を今後も取り入れていくことが大切である。

 ・  生活科も定着し環境も整ってきているが,なお一層学校の動植物等の環境整備,備品等の充実や地域教材の掘り起こし等に心がけ,マンネリ化したものにならないようにしたい。

 ・  コミュニケーション能力の育成は,生きる力に欠かせないため,「調べる」「まとめる」「伝える」といった学習は,国語科と関連して行うことが大切である。

前へ 次へ

閉じる