私の実践・私の工夫(生活科)

2年
出発! 自分たんけん           
福岡県京都郡豊津町立豊津小学校
川端 道彦
1.実践に向けて

 既存の社会科や理科が,自分の身近な社会や自然を切り離して客観的にとらえることを尊重するのに対して,生活科では子ども自らが環境の構成者であり,そこにおける生活者であるという立場から,自分とのかかわりでそれらに関心をもつようにすることに特質がある。

 つまり,生活科の学習では,得られた内容よりも,子どもと対象とのかかわりそのものが重要な意味をもつものである。また,生活科は,子どもが知的好奇心・探究心をもって,自分の思いや願いを生かし,主体的に活動できるようにすることを一層重視している。そうした活動から自然に生まれる気付きを大いなる刺激にして,活動や体験,交流を深めたり広げたりできるように展開していきたい。

2.単元名

 出発!自分たんけん

3.ねらい

 自分の成長には家族をはじめ多くの人がかかわり,いろいろな人に世話になってきたことに気付くと同時に,成長によっていろいろなことができるようになった自分に自信をもち,これからの生活に意欲をもつことができる。

4.指導計画(全16時間)

 1 タイムスリップ(ぴったしカンカン1枚の写真・思い出の品物展)
 2 自分探検(エピソード3)
 3 記録に残そう(見合いの会)
 4 未来へジャンプ(メッセージ送信)

5.活動の実際

 (1) 活動欲求を起こす事象提示




■ぴったしカンカン1枚の写真・思い出の品物展
 学習の方向をつかませるために,時間の経過により違いが明確にわかる写真や思い出の品物の具体物を提示した。
 自分自身の成長に関心を持たせるために,S子のエピソード(「わたしが,この人形と同じぐらい小さく生まれたので,家族のみんなが,元気に育つのかとても心配したよ」)の取り出しを行い,子どもたちに紹介した。









 自分の成長について関心を持たせ,自分の成長を振り返ってみたいという活動欲求を起こさせることができた。しかし,この時期の子どもにとって,自分の成長を頭の中だけで振り返ることは困難である。自分の成長を振り返るには,それなりの具体的な手掛かりが必要である。

 (2) 手掛かりの存在に気付くエピソードとの交流




■エピソード3
クリックすると動画を見る事ができます。 クリックすると動画を見る事ができます。 クリックすると動画を見る事ができます。  自分自身に関する事柄(謎)や当時の自分のイメージをふくらますことができる愛着のある手掛かりの存在に気付かせるために,「プーさんの人形」「名前」「よだれかけ」の3つのエピソード(デジタルコンテンツ化)を子どもたちに紹介し,交流させていった。
 感動や驚きの気付きや自分の成長についての手掛かりになる対象をワークシートに書き込ませた。






 3つのエピソードの紹介や交流によって,子どもたちは,過去のいろいろな自分に出会うには,手掛かりがあることに気付き,調べていくための見通しや意欲を持つことができた。

 (3) 交流を通して表現内容や調べ方の幅を広げる





T男は,生まれてからの身長や体重の変化等について,母子手帳や健康手帳をみて表現。しかし,T男は,人とのかかわりをどのように書いたらよいのか困っていた。
M子は,母親に聞いたり,アルバムを見たりという調べ方をしていた。




■見合いの会
 自分の課題解決に向かわせる視点をもたせるために「今,困っていること」を出し合い,交流の視点を整理(12)した。

 1 調べ方(誰にどう聞くか)・・・「インタビュー」「手紙」
 2 表現内容・・・・「自分との間にどんなことがあったか」

 自分の課題解決への気付きが生まれる交流の場となるように,見合いのグループを4つに分け,それぞれのグループの中に,表現内容や方法がうまくいっている児童を配置した。


児童の変容

交流による表現内容の変化 交流による調べ方の変化

 (4) 学習したことが生きる活動

 自分の成長への気付きを交流する中で,それぞれの気付きのよさを価値付けた。そして,「これからどんな自分になりたいのか。」と子どもたちに問いかけた。
 すると,「友だちを大切にする人になりたい。」「一年生にやさしい六年生になりたい。」等様々な未来の自分像に関しての思いをもっていた。

■メッセージ送信
 子どもたちのこの姿は,本単元の学習を通して,自分たちの中に自己存在感や自己肯定感が生まれ,これからの自分の成長に希望をもって意欲的に生活する意識をもたせることができたことを表している。
 そこで,今の気持ちを未来につなげるために「メッセージ送信」と題して,未来の自分に送るメッセージをビデオ録画した。

6.成果と課題

 成果

  1) 時間の経過によって,違いが明確にわかる写真の提示や意図的に取り出した思い出の品物に関するエピソードの紹介は,子どもに活動欲求を起こさせ,学習の見通しを持たせる上で有効であった。
  2) 自分の成長を実感できる具体的な手掛かりの存在をイメージさせるために,デジタルコンテンツ化したエピソードの紹介は,自分の成長を振り返る手掛かりの存在に気付かせることができた。
  3) 交流活動(情報交換の場)においては,課題解決に向かう視点を示すことやグループ構成の工夫が児童の課題解決への支援として有効であった。

 課題

  1)  対象とのかかわりは,気付きを深め,自分の思いや願いを実現させる上で大きな意味をもつ。しかし,子ども一人一人を見たときに,追求意欲に応じきれていない面があった。今後は,広い視野で子どもの学びを見取り,個に応じ個を生かしていくための方法や支援のあり方のさらなる開発が必要である。

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