私の実践・私の工夫(生活科)

1年
あきとなかよし『あきランドであそぼう』           
愛知県岡崎市立上地小学校
■ 授業実践に向けて

 私たちは,あきとなかよしの単元の実践に向けて,生活科部会で「子どもの気付きを広げ深める」ためのさまざまな手立てについての研究を進めた。

  対象と子どもの気付きのかかわり


  活動場所について

 学校の近くの大谷公園を中心として,ここでダイナミックに遊ぶ時間を多くとりたい。大谷公園にはどんぐりなどの木の実が多くある。集めるだけでなく,自然の中で思いっきり五感を働かせながら秋探しをする。また何度も公園に行くことによって繰り返し対象とかかわることができる。


木の葉のお面をつけた教師
  導入における教師の支援

 どんぐりや木の実を使った秋の服などは具体的に教師が提示しやすい。ただその提示の仕方が問題である。子どもたちは見たからといって同じものを作るわけではないので見本として良いのではないか。そこで担任以外の教師が,導入場面で木の葉のお面を付けて登場することにした。

  自分自身への気づきを深めさせる場面設定について

 グループで作る前に各自何を作りたいか考えて,作りたいものを何回も作らせる時間の確保をする。一人で遊ぶものをまず考えて作らせる。自分で考えたことがうまくいかないことがあるが,何回もやっているうちに成功する喜びを見つけられるだろう。また友達に聞いたり,家に帰って親に聞いたりすることもできる。こうして繰り返しながら対象とかかわることで,その子どもの思いに基づいた気付きを深めることができるであろう。

  子どもの見取りと気付きを広げ深める教師支援の工夫について

 各グループが「あきランド」を計画して準備していく間に,お互いに気がついたことを教え合うようにしたり,かかわる機会を多くしたりする。また,教師が一緒に参加してあげたり,ほめたり,良いところに気付いた子の意見をとり上げたりして,子どもたちの気付きを積極的に引き出すようにしていく。
■ 「あきとなかよし−あきランドであそぼう」の授業実践のようす

 1 .単元目標

 身近な秋の自然に目を向け,五感を使って秋を見つけたり,遊んだりしながら,秋の自然と親しむことができる。

 秋の公園や野原に行き,落ち葉や草の実,草花などの特徴を生かして遊ぶことができる。

 集めてきた落ち葉や木の実,草花などを利用して,自分の作りたいものを工夫して楽しみながら作ることができる。

 秋の自然物を使ってみんなで楽しく遊ぶことのよさや,友達や自分が遊びを工夫できるようになったことに気付くことができる。

 2 .実践の手立て

(1)  「学習対象との出会い」を工夫すれば,自分たちもやってみたいなと学習への興味・関心を持ち,生き生きと学び続ける意欲を育てることができるであろうと考え,つかむ段階で秋の物を教師が身に着け,「森のおきゃくさん」となって登場する。

(2)  他とのかかわり合いの場を工夫すれば,学ぶ楽しさを体得し,思考を深めることができるであろうと考え,同じ関心を持ったグループで活動し,あきランドの準備をする。

 3 .単元構想

段階 学  習  活  動 教師の指導と支援





1.  教師が見つけた秋の自然をきっかけにして,身の回りの様子が変わってきたことを発表し合う。

2.  大谷公園に行き,秋を見つける。
 「森のおきゃくさん」になって,秋の自然のものを身に付けて登場し,秋見つけに行きたいなという意欲を持たせる。

 子どもの行動・つぶやき・会話などから,どんな自然と触れ合っているのかを探る。





3.  見つけたこと,感じたこと,楽しかったことなどを書いて,お互いに知らせあう。

4.  大谷公園へ行き,秋を感じる。

5.  感じた秋を,紙に貼ったり,書いたりしてお互いに知らせる。

6.  南公園へ行き,落ち葉・実・草花などで遊ぶ。

7.  遊んだ事を振り返り,集めてきたものでどんなものが作りたいか計画をたてる。

8.  拾ってきた落ち葉や木の実で作って遊ぶ。
 カードに書くときに,体の五感を使って,まとめてみるように声をかける。

 子どもが書いたカードを,色・形・音・においなど,五感についてまとめる。

 五感を意識して秋を感じている子を認め,一つの感覚だけでなく,五つの感覚を使うように声をかけていく。

 なかなかやりたいことが見つからない子には,教師が一緒に遊び,秋を感じる。

 教師も一緒に活動に参加し,子どもたちの工夫している遊びを認めていく。

 まずは,一人で遊べるものを考えて作るように告げる。





9.  グループに分かれ,「あきランド」の準備をする。

10.  「あきランド」を開き,みんなで楽しく遊ぶ。

11.  活動を振り返り,自分のがんばり,うれしかったこと,友達の良かったところなどを先生に向けて手紙を書く。
 教室を秋のイメージにし,子どもたちが作ったものや集めたものを掲示する。

 教師も参加者としてかかわり,友達と協力して,楽しく遊んでいる姿を認める。

 教師も友達を助けたり,工夫してがんばっていたりした子を認め,言葉かけをする。

 4 .実践<友達とのかかわり合いで学びを深める>

 大谷公園では,次々とどんぐりやまつぼっくりを見つけて歓声を上げたり,オナモミを見つけてくっつけあったりする子どもたちの姿があった。また,色づきはじめた木の葉を拾って「このはっぱは,こっちのはっぱと色がよくにているね」「これはおもしろい形をしているね」と,自分の気付きを友達に伝え合う子もいた。「先生,このどんぐりをいっぱい拾っていったら,教室でも遊べるね」と言う子がいて,さっそくどんぐりやまつぼっくりなど思い思いのものを集めることになった。

 教室にもどって公園探検で拾ってきた木の実や木の葉を使って,一人で遊ぶものを作った。どんぐりごまやマラカス,まつぼっくりのツリーなど思い思いのものを製作した。

 A男は,どんぐりごまの製作でつまようじをさす場所を何度もさしかえては試す姿も見られた。その後,作ったものを生かしてみんなで遊べるあきランドを作ろうと投げかけ,みんなで遊ぶと楽しそうな遊びを考えて,グループに分かれた。

 ほかのクラスもお客さんとして来てくれることを知り,さらに意欲を高めていった。グループに分かれたところで,作ったものを生かしてどんな遊びがしたいのか,そのためにはどんな材料が必要になるのか,どんな手順で作るのかなどを計画書に書き,手順を確認しながら製作できるようにした。

 グループ活動に移ると,遊び方のルールを考えたり,作るこつを教えあったりする姿が見られた。一人製作のときにけん玉を作ったB男は,「こうやって紙コップをくっつけるといいよ。」と作った経験を生かし,初めて作るD男に教えていた。

 D男も自分から尋ね,積極的に取り組んでいった。B男もさらにけん玉作りに自信を深めていった。一人で作りあげた満足感から12個ものけん玉を作り上げ,できた喜びに浸っているA子の姿もあった。

 E男は初めてやじろべえをつくり,バランスがうまくとれずに何度も作り変えていく中で,どんぐりの大きさや竹ひごの指す位置にこだわり,バランスが取れるやり方を見つけていった。一番大きなやじろべえを作ったことも自信につながっていった。

どんぐりのけん玉つくり


どんぐりのやじろべえ


教えあう子どもたち

 5 .実践<表現することで自分を見つめなおす>

 それぞれのグループを2つに分け,お店屋さん・お客さんになって行った。自分の役割やお客さんに言うことなどを,事前にカードに書くことで自信を持って行えるようにした。また,遊んでいてより楽しくなる方法に気づいたときは,その場で教えあうようにした。子どもたちは活動の中で自分のやり方のよさや友達のお店のいいところに気付くことができた。

 教師は個々の活動の様子を見取り,工夫している子をほめたり困っている子に助言したりしたが,すべての子どもを見ようと欲張ったため,よい気付きを見落としてしまったこともある。

 「あきランド」で遊ぶ場面では,どのグループも次々に来るお客さんに対して上手に対応していた。これまで納得するように活動を重ねてきたことで,子どもたちは自信を持って活動でき,成就感を味わうことができた。子どもたちは,一人では解決できなかったことも,他とかかわることで教えあい気付きも深まった。活動のたびに「振り返りカード」を書き,自分や友達のがんばりについて振り返ることで,次の活動への意欲も高まっていった。

 これまでの生活経験の少ない子どもの中には,自分から活動できない子もいたので,そうした子を見逃さず活動内容を明確にした上で取り組ませることが大切だと思った。また,個々の活動をただ見るだけでなく話しかけたり子ども同士の会話を聞いたりして見取り,場に応じた適切な支援をする必要性を感じた。

 6 .実践<さまざまな人に発表することで自分の成長を知る>

 本校では,2月に「サンクフェスティバル」という生活科と総合学習の発表会が全校で行われる。保護者や地域の人,これまでお世話になった人を招いて,活動の様子を発表する。異学年の交流も行う。1年生は「あきランド」で取り組んだことを発展させて,「あそびランド」を行った。

 自然物を使った遊び,昔からの伝承遊び,工夫したおもしろい遊び,などを楽しむことにした。お兄さんやお姉さん,家の人や地域の人も来るということで,1年生の子どもたちなりに意欲を高めて取り組むことができた。


サンクフェスティバルの「あそびランド」での高学年との交流

 サンクフェスティバルの準備では,その日の活動のめあてをグループで話し合って決め,それに対して教師も適切な支援をしたので,自分が何をするかという目的をしっかり持って取り組むことができた。そして自分たちが作ったもので十分遊ぶことで,気付きを広げ生き生きと活動することができた。サンクフェスティバル当日は,たくさんの人を相手に遊び方やルールを分かりやすく説明し,お客さんと一緒になって楽しむことができた。

 このサンクフェスティバルで,これまでの自分たちの活動を振り返り,自分や友達の成長に気付くことができたと感じている。


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