私の実践・私の工夫(生活科)

1年
ありがとうのこころをつたえよう 秋を味わう活動を通して   
長崎県A小学校

1.単元について

○児童の実態

 本学級の児童はこれまでに,「きょうから いちねんせい」の単元において,A町の森や学校の周りで昆虫や小動物とのふれあいを楽しんだり,春の草花で工夫して遊んだりと春の息吹を感じながら,「春」という季節感を味わう経験をしてきている。子どもたちは,自然豊かな環境で生まれ育ち,身のまわりには美しい海や森が広がる中で遊んでいるため,自然を身近に感じ,草花や昆虫,魚の名前なども良く知っている。

 子どもたちによって,それぞれに季節の味わい方や興味のむく方向はさまざまであるが,「秋」についても大変関心が高い様子が見られ,登下校中からすでにどんぐりや落ち葉などを拾ってきては,うれしそうに遊んでいる。

 しかし,「工夫する」「探究する」という点については,かなりの個人差が見られる。「この花は初めて見たぞ。何と言うのかな。」「この虫は何と言うのかな。」などと新しい疑問が生じても,自分で調べてみようというところまで進む子は少ない。又,草花を使った遊びについても,1つ遊び方を発見したら夢中で取り組むが,そのほかに工夫するという広がりが見られない子もいる。これらは,工夫・探究の経験不足によるものだと考えられる。そこで,本単元では,「秋」という季節感を十分に味わわせるとともに,課題意識を持ち,工夫・探究する力を育てるための体験を豊かにさせたい。

○単元構想の意図

 この単元を通して培いたい力は,工夫・探究する力とともに,課題を意識できること,すなわち自分の思いや願いを明確にすることである。本学級では,2学期の学級経営のテーマを「感謝の心」と設定し,これまでに6年生に対しては朝顔のつるで作ったリース作りを通して,先生方に対しては朝顔の種をプレゼントすることを通して,それぞれに「ありがとうのこころを伝える」活動をしてきた。

 本単元もその流れを受け,おもちゃランドに招待して,親切にしたり楽しませてくれた2年生や,秋を使ったもの作りでお世話になった地域のボランティアのみなさん,算数でお世話になっているサポート先生を対象に,見つけた秋でおもちゃを作ったり,きれいな洋服を作ったりして「秋の出店」を開き,「ありがとうのこころを伝える」目当てに取り組ませたいと考えた。「2年生」「地域の人」「サポート先生」という相手意識を持ち,「秋を使って楽しませたい。」という目的意識を持つことで,子どもたちの活動は深まりを見せるであろう。

 自分の思いを相手に伝えるためには,表現力と自分から働きかけようとする意欲が必要である。「秋の出店」という場を体験することによって,子どもたちが,達成の喜びや感謝の気持ちを伝える喜びを感じ取り,コミュニケーションの能力が育つとともに,感謝の心が養われることを目指したい。

2.単元のねらい

通学路や行程・公園・野原など,身のまわりの自然や人々の生活の中から秋を見つけ,季節の変化に気づくことができる。

見つけた秋をみんなで見せ合ったり,集めた落ち葉や木の実で遊ぶものを作ったり,遊び方を工夫したりして楽しむことができる。

2年生,サポート先生,地域のボランティアの皆さんを招待して喜ばせたいという目的意識を持って取り組むことによって,意欲的に自分の思いや願いの実現に取り組むことができるとともに,相手に喜んでもらう経験を通して,コミュニケーションの能力や感謝の心を培うことができる。

 活動の記録(単元全体)

過程教 師 の 手 立 て児 童 の 反 応








1 秋のA町の森で遊ぼう

 春のA町の森の様子を想起させ,秋ではどうなっているか,秋の様子で知っていることは何か話し合う場を持つ。

 子どもたちが登下校中に見つけてきたどんぐりを見せ,感じたことを発表させる。

 日ごろから少しずつ小さな秋(どんぐり・落ち葉など)を教室に集めておき,意欲を喚起しておく。

 秋のA町の森で秋を見つけることを促す。

 子どもたちが見つけた秋を写真で記録する。



 春にはバッタがたくさんいたよ。まだ小さかったよ。

 シロツメクサがたくさんあったよ。指輪を作ったよ。

 家の近くにね,落ちとったよ。どんぐりがいっぱい落ちとったよ。

 道にこんなどんぐりのあった。!

 どんぐりを見たら秋だなあって思うよ。

 どんぐりで,こまがつくれるよ。

 お人形も作れるとよ。

 やじろべえも作ったことある。

 早くどんぐりを捜しにいきたい!!

 赤や黄色の葉っぱがあったよ。

 こんなに小さなどんぐりがあったよ。

 先生このどんぐりなあに?

 帽子つきのこんなどんぐりがあったよ。

 先生この赤い実なあに?

 こがんいっぱい集まったよ。
2 秋で遊ぼう

 教師が作成した秋のおもちゃなどを見せたり,実際に遊ばせたりして,活動意欲を高める。

(カラービニルの洋服・まつぼっくりのネックレス・冠・どんぐりゴマ・ススキのふくろう・トトロ・まつぼっくり人形・猫の貯金箱など)


 わあ,きれかあ!!

 着てみたいなあ。

 こま作ってみたい!

 これどがんして作ってあるとかなあ。

 どのくらいけずればよかと?

 先生,ほらできた!

 まわった,まわった!!

 もっとつくりたい!

(とてもうれしそうに身に着けたり遊んだりしていた。)








 見つけた秋でどんなことができそうかな

 製作意欲が高まったところで,見つけた秋で誰とどんなことがしたいか話し合わせる。

 作ったものをどう活用するかまで話し合わせ,課題意識とともに,相手意識や目的意識を持つことができるようにする。

 さらに材料を集める意欲を喚起する。



 こまを作って遊びたい。

 クリスマスツリーを作りたい。

 洋服を作って着てみたいです。

 どんぐりの人形を作ってみたいです。

 落ち葉をいっぱい集めて,すくすくルームを秋の国にしたい。

 2年生のお返しの広場を作りたい。

 「すくすく秋の国」を開きたいです!

 保育園生にもあげたいな。

 お母さんと一緒に作りたいな。








4 もう一度秋を見つけに行こう

 目的をはっきりさせてから,B教会付近に秋を見つけに行くことを促す。

 子どもたちが見つけたものには共感をし,写真に記録する。

 子どもたちが気づかないものがあるときは助言をする。


 ススキがあるよ。

 先生こればか(オナモミ)って言うとよ。洋服につくとよ。

 赤い葉っぱのある!

 ほらこがん長かつるのある!

 帽子つきどんぐりのあったよ。

 ほらこれ帽子だけかたまっとる。

 先生,これ花?実?きれかね。

 あがん所にカラスノマクラのある。
 子どもたちが見つけてきたものは,種類別にすくすくルームに整理させる。

(子どもたちが集めてきたもの・・・落ち葉各種,しいの実,オナモミ,エノコログサ,カラスノマクラ,イヌタデ,ススキ,など)




 見つけてきたものを整理したり,観察カードにまとめたりする。
5 家族と一緒に作ろう

 学年通信で学年行事と組み合わせていることや学習のねらいなどを保護者に知らせておく。

 役員の方と事前の打ち合わせをし,進め方や教師の意図,配慮事項について伝える。

 子どもたちが日常から集めてきていたものを再度整理する。

 秋以外の材料(ボンド・画用紙・カラースプレー・カラービニル・カラーワイヤー・つまようじ・紙皿・たけひご・ストローなど)

 材料や道具の使い方安全上の諸注意をする。

 保護者の参考になるように,子どもたちに遊ばせるために作っておいた作品を掲示しておく。すくすくルームを活動がしやすいように環境を整えておく。

 活動に入ったら,それぞれの質問に答えたり,活動がしやすいように道具を案内したりしながら援助をする。

 家族がこれなかった子どもには,担任と○○先生で対処する。

 活動の様子を記録する。

 それぞれの保護者に言葉かけをしたり,作品のよいところを賞賛したりする。

 作品の記録をする。





 わくわくするよ。

 早く作りたいな。

 先生,家からまつぼっくりもってきたよ。

 クリスマスツリーを作るよ。

 またどんぐりもって来た。つるも持ってきた。

 何つくろうかな。迷うよ。

 スプレーで色つけたいよ。

 材料がいっぱいあって楽しみ。

 猫の貯金箱を作ろう。

 こまもペンダントも作ろう。

 ボンドがなかなかつかないときはどうするの?

 洋服はどこに穴を空ければよかと?

 トトロを作ろう。ほらかわいかろ?

 こんなふうにしてみたよ。帽子の上にどんぐりを乗せると。

 先生ほらイチョウで蝶々のできたよ。

 こまのこがん回った!

 こまにね,色ばつけたら回ったとききれかよ。

 どんぐりになかなか穴のあかん。

(初めの計画よりはるかにアイデアを出しながら子どもたちは生き生きと活動していた。家族と一緒ということで意欲もかなり高まったようであった。

子どもと同様に夢中になる保護者の姿も子どもたちを駆り立てていたようである。)

 きれいにできたよ。

 もっと作りたいよ。


 楽しかったよ。

 時間の足りんね。

 ○○さんのリースのきれかよ。

 ○○くんのゲームばしてみたか。


 ○○さんの洋服のかわいか。

 ○○くんのトトロのかわいかね。








6 秋の出店を開く準備をしよう

 家族との製作活動の体験をもとに,今度は自分で作ってみることや,作ったものをどのような形で2年生に贈るかなどを話し合わせる。

 自分が作りたいものの計画を立てさせ,絵や文にかかせる。


 今度は自分で作りたいよ。

 秋の国を開きたいな。

 すくすくルームを秋でいっぱいにしたい。

 すくすく秋の国にしよう。

 2年生にきてもらおう。地域の人にも来てもらおう。

 看板ば作らんば!!サポート先生にも来てもらわんば。

 何をつくろうかな。

 リースを作ろう。

 トトロを作ろう。

 ススキでほうきのできる。

 どんぐりごまつくってあそぼう。

 弓矢を作ろう。

 秋の洋服を作ろう。

 紙皿に森を作ろう。
 計画が立ったら,作業に入らせる。

 ボンド・きり・はさみ・スプレーなどの道具の使い方を指導する。特に安全面について気をつけさせる。

 すくすくルームに今まで子どもたちが集めた材料や道具を使いやすい形に配置し,場の設定を工夫する。

 製作の参考となるように,資料として家族で作った作品の写真や秋を使った作品を紹介した本を掲示・展示しておく。




 スプレーをかけよう。

 どんぐりに穴を空けよう。

 ビニールに葉っぱをつけよう。

 ススキに色をつけよう。

 どんぐりに色をつけてつまようじを差し込もう。

 イチョウをくっつけてちょうちょにしよう。

 まつぼっくりでヨーヨーを作ろう。
(各自作業に入る。)
 どんぐりに穴を空けるのは難しいので粘土を使ったやり方や板に釘を刺した簡易穴あけ器などを使って注意してさせる。

 スプレーの使い方をして見せたり,アイデアのよい児童の紹介をしたりする。

 1人1店とし,看板を作るなどの準備をさせる。






 まずは1年生同士で出店を回り,作品のよいところを見つけあったり,声のかけ方などのアドバイスをしあったり,楽しませる。
 穴の開いたどんぐりに針金を通してネックレスにしよう。

 オナモミでまと当てができるよ。


 (招待状を書き,2年生,サポート先生,地域の人に贈る。)

 (自分の店に名前をつけ,看板を作る。)

 (友達同士で店を回り,お互いのよいところやこうしたほうがよいと思うところを手紙に書く。)

 もっと声を出すとお客さんが増えるよ。

 いらっしゃいませという声が小さいから大きく出すといいよ。

 ほうきがとても上手でほしくなりました。

 大当たりがいっぱいあって楽しかった。

 秋の出店「すくすく秋のくに」を開こう

 2年生を招待するために案内係に方法を指導する。

 2年生に対してすすんで働きかけるように励ます。

 活動の様子を記録に取る。



 いらっしゃいませ!!楽しいものがありますよ!

 これはこうやって遊ぶんですよ。

 秋のボーリングしませんか。

 オナモミのまとあてしませんか。

 どうもありがとうございます。

 エプロンはどうですか。

 (2年生が来てくれて,とてもうれしそうに活動していた。はじめの緊張も徐々に取れていくようであった。)


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