1・2年
だいず・だいすき        
〜豊かな感性を持ち,意欲的に学ぶ子どもを目指して〜          
三重県員弁郡藤原町立西藤原小学校
位田あけみ
川出真季子
I.本校のめざす「生活科」・「総合的な学習の時間」

 本校では,平成8年度から『ふるさと再発見』と銘打って,地域の自然や暮らし・歴史とのふれあいを子どもの学習活動の中に取り入れた環境教育を進めてきた。取り組みとしては,身近な自然の中に入って「目で見」「肌で感じる」など,まさに五感を使って自然に働きかけることを重視した。

 また,地域の歴史やくらしを訪ねながら,子どもたちを取り巻く環境(ふるさと)について考え,働きかけられる子をめざしたものである。本校ではこの環境教育を基盤とし,「生活科」および「総合的な学習の時間」を進めている。

 その学習形態については『意欲的に学ぶ子』を目標に,子どもの主体性を培っていくような授業をめざしている。
 「生活科」「総合的な学習の時間」において,大切にしていこうと確認しているのは次の3点である。

  1 子どもの興味・関心に基づいた課題を設定させること。

  2 子ども一人ひとりの変容をしっかり見ていくこと。

  3 子どもたちにとって豊かな体験をさせること。

 昨年度は,低学年は生活科で「大豆」を栽培し,中学年では「蚕」・高学年では「ヤママユ」を教材とし,「総合的な学習の時間」の研修を進めた。教材研究をより充実させ,子どもが体験しながら楽しく学ぶことができる授業や,子どもの中から出てきた課題を解決していくような授業をめざしている。

II.子どもの実態

 学校の目の前には児童が入って遊べる森林,児童の家の周りには水田,畑が広がっており,自然環境に恵まれた地域である。しかし,子どもたちは数年前まで,豊かな自然に恵まれていながら,校庭のそばにある山には近寄らないし,近くを流れる川へも行ったことがないという状態で,「自然離れ」が当然のような生活をしていた。

 このような子どもたちの現状から「もっと地域に目を向けた教育をしよう」とする,「ふるさと再発見」の教育活動に取り組んできたことで,川への関心が深まったり木に巻きついた蔓でターザンごっこをしたり,ブランコを作ったり,枯れ枝や木の葉で秘密基地を作ったりと,自然と楽しく関わっている姿が多く見られるようになった。

III.1・2年生 生活科の取り組み☆

.単元名 「だいず・だいすき」


.ねらい

大豆の成長に期待を抱き,土づくり,種まき,肥料やり,消毒,収穫などの栽培活動ができる。


やってみたいことや,できそうなことを考え実行することができる。


自分の活動をふり返ることができ,次の活動に活かすことができる。


2年生はリーダー性を発揮し,1年生はその指示に従い,協力して活動することができる。


.指導計画および時間

=だいずだいすき=(年間・全30時間)

(1)  調べる活動(2時間)

大豆のことで見つけたことは「大豆ノート」に記入。自主的な活動。
2年生は、大豆のことで調べてみたり、確かめてみたいことを図書室の本で調べてみる活動。かめ虫対策、大豆サラダの作り方、ごうじるの作り方を学校や家で聞き取り。

(2)  

観察する活動(13時間)

5月〜10月(夏休み中は各自で観察・栽培)

(3)  

栽培する活動(観察する時間外に3時間)

畑を耕す・種まき
 その後は観察する活動時に草取り・水やり
 かめ虫がいるときには、班ごとに当番でかめ虫とり
  収穫、大豆取り

(4)  

夢を実現する活動(11月に12時間)

大豆のサラダ作りに関して
調理員さんからの聞き取り、サラダ作り、試食会など。


地域に伝わる「ごうじる作り」に関して
聞き取り、レシピ作り、ごうじる作り、地域の方を招いての試食会など。


.活動内容

《大豆に対する子どもたちの夢》大豆でどんなことをしてみたいか,聞きました。



(1) 調べる活動

 本で調べたり,お家の人に聞いたり,実際に作ってみたりして,大豆に対する知識を自分なりに獲得させていくことを大切にしている。大豆を大きくして,豆をいっぱい収穫したいという思いから,栽培の方法を本で調べたり,おじいさんが,作っているので,教えてもらったり,また,大豆から豆腐ができることを知って,実際に作ってみたりして,自分でどんどん調べて行動に移していた。

(2)

 観察する活動

 大豆の成長をよく観察できるようになることを望んでいる。そのために,教師がこれだけは,子どもたちに観察させたい観点をきちんと示し,記入させていくことにした。絵は,描く前に,どんなところが,変わったかをみんなで発表し,確認したことを絵に表すようにしてきた。

 観察を続けていくことで,前との変化に気づき,色や形や触った感じなどもよく捉えられるようになってきた。

(3)

栽培する活動

 栽培の世話としては,草取り,肥料やり,消毒などがある。 草取りは,7月に2回,9月に1回行なった。肥料は,種を蒔くときにやっておいたので,やる必要はなかった。ところが,6月に入り,予想もしない事態が起こった。カメムシが大発生したのだ。カメムシは,葉っぱの至る所にくっつき,葉を食べ,穴をあけていた。このままでは,葉っぱどころか全部枯れてしまうのではないかと大騒ぎになってしまった。これが,子どもたちが言うところの「カメムシ事件」である。

 子どもたちは,とにかくカメムシをやっつけなくてはという思いを強く持ち,どうしたら,退治することができるのだろうと考えた。そこで,大豆を作っている家の子が,お家の人にどのような退治の方法があるのか聞いてくることになった。お家の人に聞いてきたことを発表しあい,どの方法がいいのか話し合った。考えた方法は班によって異なったが,その後,子どもたちは,カメムシの命のことを考えて,どの班もビニール袋に入れて山に逃がしてやるという方法を選び,夏休みまで,毎日カメムシ取りを根気よく続けた。また,夏休みには,学校で育てていたプランターの大豆を家に持ち帰り観察や水やりなどを継続し行った。

 2学期に入り,いつものように大豆畑へ観察に行ったところ,強い風の日があったせいか大豆が倒れていたのを子どもたちが見つけ,「倒れていたから,おこして土をもっておかなあかん。」と一生懸命土を盛り,手で押さえている姿が見られた。

 11月には,すっかり成長した大豆から,実を取り出した。子どもたちはその実を見ながら,「ここまで大きくなったんだね。」「がんばったね,大豆さん。」と声をかけていた。

(4)

夢を実現する活動

「ごうじる作り」

 子どもたちの大豆に対しての夢を実現する一つとして,昔から地域に伝わる「ごうじる」をおばあさんに教えてもらい,自分たちで作ることにした。おじいさん,おばあさんと昔の遊びをする会で,ごうじるをご馳走しようと計画し進めてきた。

 ごうじる作りまでに,給食でいただく大豆サラダの作り方を調理員さんに教えていただき,味見もしてもらったことから,「どうやったらおいしくできるか」ということを考える場面を設定した。また大豆サラダの時の自分の働きぶりについて振り返り,ごうじる作りに向け,自分のめあてを考えた。班ごとにおばあちゃんにごうじるの作り方を教えてもらいに行った後,ごうじるを作り,教えていただいたおばあちゃんに試食していただき,ごうじる作りをふり返った。

 初めて自分たちだけで作ってみたごうじるは,辛かったり,味が薄かったり,どろどろしすぎていたので,「今度こそ,おいしいごうじるを作って,おじいちゃんやおばあちゃんに飲んでもらおう」とどうしたらもっとおいしいごうじるを作ることができるか考え,もう一度挑戦した。2回目のごうじる作りではどの子も自分の仕事に責任を持って,自信を持ってごうじるを作る姿があった。

おじいさんおばあさんとごうじるをいただく会


.成果と課題

 本校では,縦割り(異年齢集団)班活動に重点を置いて集団作りを行ってきている事もあり,2年生はリーダーとして活動していこうとする姿が見られる。この大豆の取り組みの中でも,大豆の観察をノートに書くときに2年生が書き方を教えたり,大豆サラダ作りでは,何をしていいかわからない子に「○○持ってきて!この仕事して!」等の指示を出したりしていた。このような2年生に対して,1年生は素直に指示を受け入れ,実行に移すことができた。

 ある班では,班の子全員が自分の仕事を思う存分できなかったので,そのことを振り返り,自分の仕事をしっかりできるよう,その場でお互いの意志疎通をしていくように気をつけ,ごうじる作りに取り組んだ。その結果,自分たちで一人一人の持ち味を出しながら,気持ちよくごうじる作りをすることができたことを「私たちの班,すごいな。」という言葉と生き生きとした表情で語っていた。今後も自分の思いをわかりやすく説明する力,友達と力を合わせて作り上げていく力を付けていきたい。

 また,郷土の食べ物である「ごうじる」を子どもたちが作って発信したことで,あらためて地域の方々にも「ごうじる」を見つめ直していただく契機となった。これまでに開いてきた「おじいさん,おばあさんに昔の遊びを教えてもらう会」を引き継ぎ,一緒にごうじるをいただく会を企画した。今年は全員の祖父母の方に呼びかけを行ったところ,多数の方に集まっていただき,規模の大きいごうじるをいただく会になり,たくさんの方に学校の取り組みを知っていただくことができた。これからも地域とつながりながら,ふるさとの自然を見つめ,豊かな感性を持って意欲的に学ぶ子を育てることを願いながら指導していきたい。


2月の「ふるさと発表会」では,全校児童や地域の方々の前で,自分たちで育てた大豆の生長を表現

前へ 次へ

閉じる