1.2年
合同単元
「子ども広場で遊ぼう」        
〜総合的な学習へとつなぐ生活科学習のあり方〜          
福岡県八女市立川崎小学校
大坪 初次郎

1.基本的な考え方

  ○ 生活科の学習内容を押さえながらも,総合的な学習への素地作りを見通した資質・能力・態度の形成に当たる。

  ○

 ゆとりある体験活動をするために,子どもの思いを生かすカリキュラムを,1年生・2年生の2年間を見通して編成する。

  ○

 ゆとりあるしかも充実した体験活動をするために,子どもの思いが膨らむ単元構成の工夫,及び,指導・支援・評価の工夫を行う。


2.児童の実態及び単元について

 学校の南側に小高い山があります。子どもたちは「裏山」と呼んで,秘密基地を作ったり,かくれんぼ・鬼ごっこをしたりして遊んでいます。年度初めに1年生は「学校探検」2年生は「校区探検」をしますが,両学年共に裏山で遊びたいという願いが出ました。そこで,1.2年の合同単元として「子ども広場で遊ぼう」を設定しました。その中で,家に帰ればテレビやゲ−ムが友だちの子どもたちに,自然の中で遊ぶ楽しさや,自分たちで遊びを作り出し工夫する楽しさ,友だちと協力する楽しさを味わわせようと考えました。


3.授業の実際

  (1) 単元名 子ども広場で遊ぼう

  (2)

 目標

1)

 学校の裏山の樹木や草木で遊んだり,身近な自然物や身近にあるものを利用して遊び物や飾り物を作ったりなどして遊びを工夫し,みんなで遊びを楽しむことが出来る。

2)

 子ども広場をよりよくするために,友だち同士,遊びの情報を交換し合ったりして友だちとの関わりを広げることが出来る。

3)

 自分たちの遊びを工夫し作り出す活動を通して遊びの楽しさに気づくとともに,そのような遊びを作り出して楽しむことの出来た自分自身の成長に気づくことが出来る。

  (3)

 展開(25時間扱い)
 学 習 活 動教師の支援○と,子どもの様子◎

 

 

 

 

 

 
1) 遊び探しをする
 裏山の中の活動できる範囲を平テ−プで囲い,子どもたちに分かるようにした。


 坂道は事前に除草するなどして,安全面に配慮した。


 子ども広場の学習のすべての活動をなかよしペアで行わせ,関わりを深めることが出来るようにした。
2) 見つけた遊びを紹介する。

<ここはシ−ソ−になります。どうですか。>
 自分なりに納得のいく遊びを見つけることが次の意欲につながると考え,活動には十分な時間をとった。


 この単元は,教師3人のTTで学習を進めた。それぞれの教師は,子どもたちの様子を見ながら,遊びが見つからないペアには,遊びの場所や遊び方についての助言を与えた。
3) 子ども広場の遊びを決める

<みんなの願いをまとめていきます。>

 ○ 入り口に看板を作ろう。
 ○ 案内のための地図を作ろう。
 ○ 休むためのいすも作ろう。
 自分たちの広場には,どんな遊び場があったらいいか,紹介し合った遊び場の中からよりよいものを選ばせた。


 子どもたちが決めた遊び

 ・楽しいがけ登り・シーソー
 ・恐怖のすべり台・落とし穴
 ・ぶらさがり・たからさがし
 ・的当てゲ−ム・ブランコ
 ・お化け村・平均台渡り
 ・ちゃらちゃらどんどこ(楽器)

 

 

 

 

 

 
1) 子ども広場を作る。
 話し合いで決まった遊びを,ペアで協力して作る。
 自分たちの力では出来そうにない場や遊びについては,学校補助員さんや担任外の先生方にも「手伝ってください」とお願いに行くように助言した。
2) 子ども広場で遊ぶ.I

<楽しいがけ登りで遊ぶ子たち>
 それぞれの遊び場を回って,楽しかったら「赤カ−ド」を,もっと工夫したらいいと思ったら「青カ−ド」を渡し,お互いで遊び場を評価しあった。

<赤カ−ドを渡す子>
3) 遊び場を作り替える。
 「青カ−ド」をもらった友だちからのアドバイスを元に,遊び場の作り替えを行った。
4) 子ども広場で遊ぶ.II

<楽しいぶら下がりは,楽しいぞう!>
 子どもたちが遊びに満足するまで,十分に遊ぶ時間をとった。授業の終わりには感想発表の時間をとった。どの子も楽しかったことを元気に発表できた。


 このまま終わるのはもったいないから,上級生などを招待したいという声が上がり,招待に向けての話し合いを行った。

 

 

 

 
1) 上級生を招待する
 昼休みに1週間,子ども広場への招待を行った。昼の放送で,「裏山に1年生と2年生で,子ども広場を作りました。遊びに来てください。」と全校の友だちにお願いした。

 毎日,多くの上級生が遊びに来てくれて,自分たちの作った遊び場に自信を深めていった。
2) 保育園児を招待する。


<幼稚園児を世話する子>
3) 保護者を招待する。

<お母さんも,がけ登りに挑戦だ!>
 幼稚園児へは,招待状を作成し一人一人に手渡すようにし,招待前から関わりを持たせた。


 保護者の招待は,授業参観を利用し,時間を設定した。

<幼稚園からのお礼の手紙>
4) 活動を振り返る。

  ○  自己評価カ−ドを使い,自分のこれまでの学習を振り返る。


4.成果と課題

  ○ 子どもたちは,自らの課題を自らとらえ,自らの力で解決し,さらに活動を発展させていった。そして,このような学び方を身につけながら,自分自身の成長に気づいていった。生活科では,学習内容が定められているが,このような学び方そのものは,総合的な学習に生きていくものと考える。

  ○

 それぞれの段階(課題設定・課題解決・評価)に十分な時間をとり,子どもたちの活動を保障したことにより,子どもたちの意欲が継続し,活動に深まりと広がりが見られた。

  ○

 なかよしペアによる学習を行ったことで,2年生には上級生としての意識を持たせ責任ある活動を行わせることができた。さらに1年生は,支えていただいているという安心感を持って学習を行うことが出来た。

  ○

 TT(2学級を3人で指導)による学習支援をすることで,子どもたちの学習の広がりや高まりに対応することが出来,子どもの願いや思いを実現させるのに有効であった。

  ○

 多様な評価活動を行ったことは,子どもたち一人一人を見取り,成長を支えるのに有効であった。

  ●

 このような大単元をゆとりあるものにするためには,他教科との関連を大事にし,年間指導計画作成段階において工夫しておくことが大切である。

  ●

 幼稚園等との連携は,年間を通して関連が深まるような計画性のあるものに積み上げていく必要がある。

  ●

 子どもの評価を見取る評価については,来年度の指導要領の改訂に沿い,さらに研究を深めることが大切である。


評価規準を位置づけた単元指導計画
1.2年合同単元「子ども広場で遊ぼう」 学習指導要領(内容(6))

1.目標
  (1) 学校の裏山の樹木や草木で遊んだり,身近な自然物や身近にあるものを利用して遊び物や飾り物を作ったり等して遊びを工夫し,みんなで遊びを楽しむことが出来る。
  (2) 子ども広場をよりよくするために,友だち同士,遊びの情報を交換し合ったりして友だちとの関わりを広げることが出来る。
  (3) 自分たちの遊びを工夫し作り出す活動を通して遊びの楽しさに気づくとともに,そのような遊びを作り出して楽しむことの出来た自分自身の成長に気づくことが出来る。

2.評価規準
ア.生活への関心・意欲・態度
イ.活動や体験についての思考・表現
ウ.身近な環境や自分についての気付き
いろいろな遊びに関心を持ち,楽しく遊ぼうとしている。
身の回りの自然や身近にある物を使うなどして遊びを工夫し,みんなで楽しむとともに,それを表現できる。
身の回りの自然や身近にある物を使うなどして遊べることや,みんなで遊ぶと楽しいことに気付いている。

(1) 身の回りの自然や身近にある物,昔からある遊びなどに目を向けて遊ぼうとしている。
(2) みんなと一緒に活動したり,遊んだりしている。
(3) 自然や物と一体となり,夢中になって遊ぼうとしている。
(1) 自然や物,場所などの特徴や状況を生かして遊びを考えたり作ったりできる。
(2) 遊び方や約束を変えながら楽しい遊びを作り出すことができる。
(3) 工夫して作ったり協力して遊んだりしたことや楽しかったことなどを表現することができる。
(1) 自然や物を使うなどして作ったり遊んだりすると楽しいことに気付いている。
(2) 約束やル−ルがあると楽しく遊べることが分かっている。
(3) 遊びを通して,友だちの良さや自分の成長などに気付いている。

3.指導と評価の計画
段階
学 習 活 動
主な支援と評価



(1) 遊び探しをする。
 学習の全ての活動を1.2年生のなかよしペアで行うようにし,関わり合いを深めることが出来るようにする。
ア.(2)(観察)
(2) 見つけた遊びを紹介する。
 自分なりに納得のいく遊びを見つけることが次の意欲につながると考え,活動には十分な時間をとった。
ア.(1)(観察)
めあて
 子ども広場をつくろう。
(3) 子ども広場の遊びを決める。
 紹介し合った遊び場の中からよりよいものを選ばせる。
イ.(1)(観察・ノ−ト)



(1) 子ども広場を作る。
 ペアで協力して作らせる。
イ.(1)(観察)
(2) 子ども広場で遊ぶ。(I)
 赤カ−ド・青カ−ドを利用して,お互いの遊び場を評価させる。
ア.(2) ウ.(1) (観察・ノ−ト)
(3) 遊び場を作りかえる。
 カ−ドをもとに作り替えを行う。
イ.(2)(観察)
(4) 子ども広場で遊ぶ。(II)
 子どもたちが遊びに満足するまで,十分に時間をとるとともに,感想発表により,活動の満足度を把握する。
ア.(3) イ.(3)(観察)
ウ.(2)(ノ−ト)

(1) 上級生を招待する。
 いろいろな人たちを招待することにより,自分たちの活動に自信を持たせる。
 自己評価カ−ドを使い,これまでの学習を振り返らせる。
ウ.(3)(観察・ノ−ト)
イ.(3)(観察)
(2) 保育園児を招待する。
(3) 保護者を招待する。
(4) 活動を振り返る。


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