1年
東っ子のみそ作り                
熊本県人吉市立人吉東小学校
成尾 明美

1.単元について

 人と人とのつながりが希薄になる傾向にあるといわれる今日,人とうまく関われない子どもが増えていることが危惧されている。本実践では,子どもの「思い」や「願い」から生まれた「みそ作り」を通して,多くの人々とふれあいながら,コミュニケーション能力を高めていきたい考えた。


2.「みそ作り」教材化の価値を次のように考える

 ○ 食に対する欲求が,活動意欲を高めることができる

 ○

 めざすものの明確さが取り組みやすさを生むことができる

 ○

 作り上げた感動を味わうことができる

 ◎

 人との関わりを通して,コミュニケーション能力を高めることができる


3.授業の実際

 (1) みそ作りへの興味・関心を持たせる導入の工夫


 

 
 
1) 地域へ目を向ける「いえのちかくで見つけたよ」

 「家の近くで見つけた秘密をみんなに教えてあげよう」と学習課題をたて,家の近くや学校の行き帰りで見つけたおもしろい・不思議な・みんなに教えてあげたい「場所・もの・人」などを探すことから「みそ作り」の活動は始まった。

 
秘密の場所へ行ってみたい

 

 
 
2) みそ作りへのきっかけ作り「町探検」

 前時で子どもが興味・関心を示した,秘密の場所への探検である。子どもたちは「みそ・しょうゆ蔵」の存在を知らなかったため,探検コースに「みそ・しょうゆ蔵」を意図的に組み込み,子どもの発見から「みそ・しょうゆ蔵」の存在に気づかせていった。

 
「みそ・しょうゆ蔵」の探検にいってみたい

 

 

 

 
 
3) みそ作りへの興味・関心を持たせる
「みそ・しょうゆ蔵探検に行こう」

 探検に行った子どもたちは,実際にみそやしょうゆの製造過程を目にしたことにより,みそ作りへの興味・関心を持たせることができた。

  
「1年3組特製みそ」を作りたい


 (2)

 みそ作りへの活動意欲を高める工夫

 1) 「1年3組特製みそ」への思いを強める「みそ作りの準備をしよう」

 子どもたちは,「みそ作り研究会」を開いてみその材料や作り方を確認し合い今後の取り組みについての活動計画を立てていった。この活動計画に従い,実際にスーパーに行ってみその材料を買ったり,大豆を洗って煮るなどの体験活動を積み重ねながら,みそ作り本番への下準備を行った。


 2)

 地域の人材を活用した「親子みそ作り大作戦」

 今回のみそ作りでは「みそ名人」を講師に迎え,子どもの「思い」や「願い」の実現をめざした。みそ作りでは,みそ名人の話を真剣に聞きながら積極的に取り組む子どもの姿が見られた。


 3)

 みそへの意識を継続させるための「みその味はどうかな(みその試食会)」

 みその完成までには,1か月から1年の熟成が必要になる。子どもの中にはみその様子がどのように変化しているのか気になる子もいれば,全く関心のない子どももいた。そこで,「みそを見に行ってもいいですか。」という一部の子どもの「思い」や「願い」から出発して,みその試食会を実施することにした。


 (3)

 新たな活動への広がりと深まりを持たせる工夫

 1) 子どもの思いや願いから生まれた「野菜作り」

 「自分たちで作ったみそで作るみそ汁には,自分たちで作った野菜を入れなければ本物の1年3組特製みそ汁にはならない。」という子どもの「思い」や「願い」から野菜作りに取り組むことになった。1学期の土作りから取り組んだ栽培活動の経験を生かしながら,野菜作りの先輩である2年生からのアドバイスも受けて,野菜作りに取り組んだ。


 2)

 子どもの思いや願いから生まれた「みそ作り発表」

 クラスのお宝として「みそ汁」を1年生全員にごちそうすることになった。しかし,みそ汁だけのお宝紹介に満足せず,自分たちのこれまでの取り組みを紹介したいという思いや願いを持つようになった。学級会を通して5項目を作り上げ,希望グループに別れて,劇や紙芝居,クイズ,表,作文など様々な表現方法でまとめていった。これらの表現方法は,2年生から招待された「大根パーティー」での出し物からヒントを得たものである。


 3)

 子どもの思いや願いから生まれた「みそパーティー」

 1月22日,子どもの「思い」や「願い」の最終目標である「みそパーティ」を実施した。計画から準備,本番の運営まですべて子どもの手によって行われた。


4.成果と課題

 (1) 成果

 導入を丁寧に取り組みながら,子どもの「思い」や「願い」をふくらませたことが,活動意欲の高まりにつながった。自らの「思い」や「願い」を実現するために身近な人々や自然と積極的に関わろうとする子どもの姿が見られた。さらに,取り組みを通して,人や自然と関わることの楽しさやすばらしさも味わうことができた。


 (2)

 今後の課題

 今回の取り組みは,生活に生きて働く力のきっかけづくりにすぎない。学習したことを家庭に返しながら,確かな力となるよう働きかけていきたい。今後も,子どもの「思い」や「願い」を大切にした,校区の特性を生かした教材開発に取り組んでいきたい。



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