2年
「おいしいやさい,大きなおいもをそだてよう」
〜一人一人の子どもが思いや願いをもって活動できるように〜
川崎市立宮崎小学校
及川 純子

1.単元について

 (1) 子どもの実態

 子どもたちは,1年生で冬野菜のコマツナを栽培してきた。学年の畑に種をまき,水やりや何度かの間引きをした。コマツナは北風のもとでも青々と育ち,子どもたちはこのコマツナで,おみそ汁とお雑煮の2度の「食べよう会」を楽しんだ。
 2年生では自分で食べたい野菜を作るんだと一人一鉢の野菜栽培に張り切っている。しかし夏野菜は,アサガオや球根,栽培のように,水やりと肥料やりの他にもいろいろな世話があることを知らない子も多い。


 (2)

 単元設定の理由

 こうした子どもたちに,
本で調べたり家の人から話を聞いたりしながら,自分の野菜を大切に育てようとする態度,
野菜の育ちの様子を観察し,自分なりに表現する活動,
世話の大切さや成長の変化の気付き,収穫の喜びや自然の恵みへの気付き,
の育ちを期待したい。


 (3)

 活動に当たって

 長期間に渡る栽培活動では,子どもたちが自分なりの願いや思いをもち続けていくことが大切であると考え,活動のきっかけ作りに留意した。

1) 地域の野菜作りに目を向けて

初回の町探検での畑やビニルハウスの見学,
学年全員でのタケノコ掘り,
 など,この学区ならではの地域の方々の協力を得て,子どもたちが野菜作りに関心が向くようにした。


2)

 野菜クイズで野菜との楽しい出会いを

グループに5種類の野菜の苗を配る。
 〜「何の苗かな」
次にそれぞれの種を配る。
 〜「どの種は,どの苗になるのかな」
最後に実(野菜)を配る。
 〜「どの種は,どの野菜になるのかな」
葉や茎の色,においを調べるうちに,子どもたちから,
「この種をまいてみたい」
「この苗を植えて育ててみたらわかるよ」
「ナスがとれたらどんな味か食べてみたい」
とそれぞれの願いや思いが生まれてきた。


2.授業の実際(12時間扱い+常時活動)

<<活動のきっかけ>>

「楽しいよ みやざきたんけん」

 ・町探検で畑で作られているものを見たり,野菜を作っている人にインタビュ−したりする。
 ・町探検で見た畑やビニルハウスのようすを,VTRや写真で思い出したり探検マップに書き入れたりしながら,野菜作りに興味をもつ。

<<活動の流れと活動の実際>>

子どもの思い学習活動教師の支援と子どもの様子
わたしたちも野菜を育てたいな。
【やさいをそだてよう】
(1時間)
どんな野菜を育てるか,話し合う。
野菜あてクイズを楽しみ,野菜への興味や育ててみたいという気持ちを大切にする。


「なんこぐらいとれるかな」と投げかけ,たくさんとれるといいなという期待をもって,栽培を続けていこうという意欲を引き出す。
ミニトマトやナス,キューリなどを育てたいな。
【やさいをうえよう】
(4時間)

個人用の植木鉢やプランター

土づくり,畑作りをする。
野菜のたねをまいたり,苗を植えたりする。
まいた種や植えた苗に向けて,自分の願いを絵や文でかく。
土作りについて聞いてきたり調べてきたりした子をほめ,土が大切なことを確かめ合う。
作業活動は広い場所で行う。土や肥料は,鉢やプランターに入れる順にならべておく。
畑作りに必要な用具の安全な扱い方を示範指導する
願いや思いに共感し,これからの世話や観察を意欲的に進めらるように励ましていく。
【おいもをうえよう】
(1時間)

学年の畑

サツマイモの苗の植え方や育て方を農家の人に聞き植える。
町探検で見学させていただいた農家の方から苗を分けてもらう。
苗を届けてもらう日に,サツマイモや野菜の世話などの話を聞く機会を設ける。
早く大きくなってね。
【おいしくそだてやさいたち】
(4時間)
【大きくなあれおいもさん】
(2時間)

早く実がなるといいな。

世話の仕方について話し合う。
芽の出るようすや成長のようすを観察し,カ−ドにかく。


上手な育て方を調べていく。
調べたことをもとに世話をし,継続観察をする。

(常時活動)

芽が出たり,苗が育ってきている様子を話し合い,これからの育て方に関心が向くようにする。
「変わったことが見つかったらカードに書いて教えてね」と呼びかけ,友だちと教え合ったり比べたりしながら観察していくようにする。
色や大きさなど観点を持って細かく観察している子のよさを広める。
世話の仕方について,調べたり聞いてきたりしたことを,その都度知らせ合う「野菜ニュース」の時間を設ける。
「カードが何枚たまるかな」と呼びかけ,観察が持続していくようにする。

<<活動の発展>>

「やさいパーティをしよう」(7月,4時間)

 ・野菜を収穫し,みんなでサラダなどを作り,1年生を招待して一緒に食べる。
 ・うれしかったこと,楽しかったことを絵や文にかく。


「野菜パーティーをしよう」

「みんなでおいもパーティーをしよう」(10,11月,22時間)

 ・サツマイモ畑の変わってきた様子や世話してきたことを振り返りながら,いも掘りをする。
 ・大きなおいもがとれた喜びを,1年生と一緒においもパーティーをして楽しむ計画を立て準備する。
 ・おいもパーティーで1年生と遊んだり,おいも料理を作って1年生と食べたりしながら,楽しく過ごす。




3.学習を振り返って

<<活動のきっかけから思いが広がる>>

 町探検や野菜クイズなどの活動をきっかけに,子どもたちは野菜への思いを広げていった。「自分で作った野菜を食べてみたい」という願いもあって,その後の世話や調べ活動にも意欲的で,新しい発見があると嬉しそうに伝えていた。長期に渡る栽培活動では,こうした子どもの思いや願いを大切にして生きたい。

<<人とのかかわり合いが意欲の継続を生む>>

 子どもたちは,毎朝の水やりの度に実の数を数えては友だちと比べたり,朝の会の「野菜ニュース」で発表したりして成長をとても楽しみにしていた。
 また,「発見カード」を読み合ったりしていろいろな気付きを認め合う中で,更に野菜への思いが強まっていった。
 ようやく収穫できそうな頃のカラス事件は,子どもたちには予想外のことであった。さっそく話し合いがもたれ,かかし作りが始まった。古着や棒を持ってきたり,近くの畑の鳥よけをを見た来たりして協力して作る姿がみられた。困ったときは,みんなで解決していこうという態度が育った。


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