4年
多様な解法を導きだし,
一人一人が学ぶ喜びを感じる授業をめざして

〜「垂直・平行と四角形」の指導を通して〜
兵庫県加古郡播磨町立播磨西小学校
吉田 孝蔵
 算数といえば,「答えは1つ,解き方も1つ」といった考えを,教師も子どもももっている。図形領域は,多様な答えと解法がある領域であり,子どもが算数の楽しさをより多く味わうことのできやすい領域である。この考えのもとに下記の実践を試みた。

1.単元目標

 ○ 平行四辺形,ひし形などのもつ美しさを感じ取り,身の回りから,これらを見つけようとしたり,垂直・平行の関係にあるものを探そうとしたりする。

 ○

 垂直・平行の意味や関係を説明できたり,辺や角の相等,平行などの視点から,台形,平行四辺形,ひし形の特徴を考える。

 ○

 三角定規,コンパスなどを用いて,平行な直線や垂直な直線を書くことができたりそれらの手法を生かして,平行四辺形,ひし形を書くことができたりする。

 ○

 垂直・平行の意味や台形,平行四辺形,ひし形の特徴や対角線の意味を理解する。

2.単元設定の理由及び主旨

 本学級の子どもたちが,これまでの平面図形の学習などを通して,本単元の基礎・基本と考えられることを身につけているかどうかを調べてみた。その結果は,次の通りである。

 技能┌─直線を引くことができる──できた(96%) できなかった(4%)
└─角の大きさをはかる──できた(84%) できなかった(16%)

 (問)どの長方形にもいえることを書きなさい

 知識(長方形)┌─・辺の数(36%) 角の数(32%) 頂点の数(12%)
├─・向かい合う辺の長さが等しい(20%)
└─・角の大きさが等しい(12%)

 問いの結果から考えて,帰納的,演繹的に考え,共通項を導きだし,一般化するといった見方・考え方を十分に身につけているとはいえない。

 そこで,単元全体に「書く」「写す」「測る」「折る」などの操作活動をできるだけ取り入れ,子どもたちが興味・関心をもちながら学習を進めていくことができるように指導計画をたてたい。また,「台形」などの性質を学習するときには,幾つかの台形から性質を導くように指導していきたい。さらに,「四角形」から「台形」「平行四辺形」と特別な形になるほど,その性質が増えていくことから相互関係に目を向けるようにしたいと考えている。

3.指導計画(14時間)

 第1次 播磨町や校区の地図から垂直・平行を考える。(5時間)

 第2次 道路で区切られた四角形(台形,平行四辺形,ひし型)を考える。(8時間)

 第3次 評価活動(1時間)

4.活動の実際

播磨町の地図をみて

 「垂直」「平行」の概念と子どもたちが出合うのは,本単元が初めてである。新鮮な驚きをもって,出合わせたいと考え,播磨町の地図(昇降口にある,たて2.5m,横2mの地図)を見ながら,わかることや気づいたことを自由に発表させた。

 「家が多い」「人工島がある」「学校がある」などと活発に発表していた。そこで,「道路は,どのように交わっている?」と問いかけてみた。すると,「斜めに交わっている」「十字に交わっている」「Tの形になっている」「直角に交わっている」「この道路を延ばすとあの道路と直角に交わるよ」といった発表が次々にされた。

 道路の交わり方を「直角に交わるもの」と「直角に交わらないもの」とに仲間分けをして,前者のように交わり方を「垂直に交わる」とまとめた。その後,垂直に交わる道路見つけを行った。このように楽しい雰囲気の中から,本単元の学習が始まっていった。 同様にして,平行の学習も行った。

 その後,方眼紙に「垂直」「平行」な線を書いたり,白紙に書いたりしながら,「垂直」と「平行」の関係を見付けていく学習へと進んでいった。

 次に,「垂直」や「平行」な線の書き方の習熟をねらいとして,それらをを用いて,正方形や長方形を書く時間を取った。ある子どもは,「垂直」の書き方だけを用いて,長方形を書こうとしていた。また,ある子どもは,辺の長さを無視して書こうとしていた。

 そこで,「どうすれば,早く,正確な図形がかけるか」と問いかけてみると,「決められた長さの辺を1本書く。次に,その辺に2本に垂直な辺を書く。そして,決められた長さを測り,その点を結ぶ」といった書き方を見付けていった。

どの図形にもいえることを見つけよう

 「垂直」「平行」の学習後,再度,播磨町の地図を見ながら,道路で区切られた色々な四角形見つけを行い,色々な四角形を見つけだした。四角形にも色々な形があり,四角形のことを詳しく学習していくことを告げて,「台形」「平行四辺形」「ひし形」の学習へとつないでいった。「台形」「平行四辺形」「ひし形」いずれの学習も,「図形の性質をみつけ,その後,図形を書く」といったパタ−ンで学習を進めていった。

 「平行四辺形」の学習を例に取り,詳しく書いてみる。まず,「平行四辺形の名称を知り,その特徴を見つけることができる」のねらいを立て,

 問題を知る段階, 調べることを考える段階, 個人で調べる段階, 結果を発表し,話し合う段階, まとめを聞く段階 の5つの段階の学習計画を立てた。

 まず,1の段階では,前時に見つけた四角形の中から,長方形でも正方形でも台形でもない四角形の学習をすることを告げ,「どんな四角形を勉強するのかな?」といった疑問を子どもたちがもてるようにした。平行四辺形を5つ書いたものを配り,「(1)から(5)のどの図形にもいえることを見つけよう」と投げかけた。

 次に,2の段階では,台形で,どのようなことを調べたのかを思い出させながら,調べる観点を考えさせたが,「頂点,辺,角の数」「角の大きさ」「線を書き加えて調べる」といったことしか発表しなかった。しかし,3の段階で,一人一人,平行四辺形の特徴を調べる活動に入っていくと

  ・分度器で角の大きさを測る活動

  ・

定規で辺の長さを測る活動

  ・

折り曲げて重ねようとする活動

  ・

対角線を書き,長さを調べる活動

  ・

写し取り重ねようとする活動

  ・

一辺に垂線を引き,平行を調べる活動

  ・

対角線を引き,できた三角形を比べる活動

 様々な活動をしながら,どの子も,ひとつのことを調べれば,次のことを調べていった一人一人の力は違っているが,どの子も,もてる力を十分に使い,問題に取り組んでいた。「角の大きさ」「辺の長さ」「辺の関係」「対角線の長さ」「合同」といったように色々な観点から特徴を調べていったことは,「多様は解法」の姿の一例である。

 さらに,4の段階では,「(1)〜(5)のどの図形にもいえることを見つけよう」という問いのため,自分の見つけた事柄には,普段は発表しない子どもも,自信をもって発表していた。そして,次のような特徴を見つけだした。一般化するときには,これらを,

  ・向かい合う辺が平行である。

  ・

向かい合う角の大きさが等しい。

  ・

向かい合う辺の長さが等しい。

  ・

対角線は真中で交わる。

  ・

1本の対角線で区切られた2つの三角形は,同じ大きさである。

  ・

隣合う角をたすと180度になる。

  ・

辺,角,頂点が4つある。

 1つ確認することが大切であると思い,拡大した図形を用いて,確認していった。同様にして,「台形」「ひし形」の特徴も見つけだしていった。

気に入った図形を書こう

 それぞれの特徴を見つけだした後,「特徴見つけ」で使った図形の中から,「書きたいな」「これなら書くことができる」と思う図形を選び,その特徴を用いて,書くように学習を進めていった。

5.実践を終えて

 特徴見つけや作図の時間を十分に取り入れることにより,図形の定義や性質以外の特徴を見つけだすことができたので,「学ぶ喜びを感じる授業」は,できたように思う。

 しかし,「垂直・平行」の学習で播磨町の地図を使ったことで,子ども一人ひとりに垂直や平行を調べたり,確認させたりすることができず,これらの概念を十分に身につけさせることができたとはいいがたい。

 また,子どもたちの見つけだした,特徴をみると定義も性質も含めて見つけだし,今の段階ではその区別がついていないのが現状である。まとめの段階や板書の段階で,定義と性質をもっと区別して扱うと,このようなこともなくなると思う。


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