教育改革のとりくみ 目次

新学習指導要領実施に向けての取り組み
「ふれあい」をキーワードとする学校づくり

神奈川県秦野市立西小学校

はじめに

 神奈川県西部秦野市の西部に位置し,学校の周りは住宅地が広がり,南に国道246号線,北から西にかけ自然豊かな丹沢山系を望める学区である。

 大正10年創立で,平成22年度には「創立90周年」を迎える。この間,児童が2000人を越え,昭和50年に渋沢小学校と,昭和57年に堀川小学校と分離・新設してきた。

 地域や保護者の方々の多大な協力を得ながら,現在983名の児童数となる。

 本校の教育目標(右表)は

心豊かで,たくましく生きる力
を身につけた子どもの育成


 教育計画の具体的施策(右表)として

人と人とのふれあい

人と自然とのふれあい

人と文化とのふれあい

と,「ふれあい」をキーワードとする学校づくりをおこなっている。

 また,秦野市教育委員会から平成 21,22 年度「小学校(算数)研究実験校」の委託を受け,『考える足場』をつくる算数授業を研究・推進している。

 特に基礎・基本の充実を図るために新学習指導要領で求められているスパイラル学習に焦点を当て,その学習形態に,「ふれあい」をキーワードとする学校施策との連動で,学習ボランティアを活用し,マイペースタイムで児童一人一人の学習実態をはかりながら基礎・基本の定着に努力し,新学習指導要領に向けた算数科の取り組みをより充実させてきている。


今回は,算数科におけるその研究の概要とその実践を紹介する。

 

平成21,22年度秦野市教育委員会委託「小学校(算数)研究実験校」

平成21年度 校内研究:算数科「子どもが生きる算数を目指して」
〜 わかる・できる・楽しい学習 〜

わかる いろいろな問題を解くもとになる考え方や解き方が理解できること。
できる 基礎的・基本的知識が身に付き,基になる考え方や解き方を用いて,練習問題や発展問題を解くことができる。
楽しい ちょっと頑張ればできそうな課題に挑戦し,「わかる」「できる」を実感したり,学び合いの場を設け,わかったことを共感する喜びを知ったりすることにより,算数の楽しさを知ること。

◎ 研究内容と具体的な取り組み

『考える足場』をつくる算数授業を研究し,「理論的に考える力」「発展的に考える力」「読み取ったり,表現したりする力」を育てていけるようにする。

学習サポートボランティアを導入して,マイペースタイムの充実を図る。

夏,冬,春休みに,各学年に算数課題を出し,基礎・基本の習熟を図る。

『考える足場』をつくる算数の授業展開モデルを理解し,『考える足場』を取り入れた単元指導計画や,算数の授業展開モデルの流れになるように指導案を作成し,実践していく。
  (全学年が学期に1回,単元を決めて授業実践をし報告する。)

『考える足場』をつくる算数の授業モデル

足場をつくる ・・・ 本時の学習に関する既習事項を確認する。
主発問1の全体解決 ・・・ を受けて,本時の問題をクラス全体で解決する活動(新しい解法を学ぶ)
主発問2の全体解決 ・・・ を受けて,本時の問題を個人で解決する活動(新しい解法を使う)
まとめ ・・・ 主問題の解法の共通点を考える。
摘要・発展問題 ・・・ 理解の定着をはかる練習や,理解の深化をはかる発展問題を解く活動

 

第3学年 算数科学習指導案

1 単元名 かけ算の筆算(2)

2 単元目標

(1)

2位数×2位数の乗法の計算のしかたを理解する。
A(3)ア

(2)

2位数×2位数の乗法の計算が確実にでき,適切に用いることができる。
A(3)イ

3 本時の学習(5/9)

(1)

目標

39×75のような(2位数)×(2位数)の乗法の計算のしかたを考え,筆算のしかたをまとめることができる。

(2)

展開
学 習 活 動 と 予 想 さ れ る 児 童 の 反 応
考える足場をつくる
前時の復習をする。
12枚入りの折り紙を23袋用意しました。折り紙は,全部で何枚になりますか。
どのように考えればよいかを確認する。
ノートの記録を確認し,黒板で説明する。
主問題を既習内容を基に考える(全体解決)
あめを75袋用意しました。1袋に39個入っています。あめは全部で何個ですか。
問題文のキーワードを確かめながら,立式をし,答えの見積をする。
 
C: 75セット用意したからかけ算だね。  
  式を立ててみよう。 式は,「39×75」です。
  だいたい40が70セット
 

4×7=28だから,その答えを10倍,さらに10倍にすると,だいたい2800くらいかな。

  2800より大きいかな。  
主問題を筆算で考える(自力解決)
39×75の計算を筆算でやってみよう。
一人ひとりが39×75の計算を筆算でやってみる。
 
C: 今まで通りの筆算でできるよ。
  位はそろえて計算したよ。
  だいたい40が70セット
 

一の位から計算しよう。

  千の位をこえるよ。どうする?
まとめる

足場では千の位の数はなかったが,主問題の筆算「 39×75の計算 」では,これまでと同じように,くり上がりの数字を書きながら,順番に計算していくことを確認する。

適用・発展問題を解く

52×28

67×57 86×49 74×75

補助数字を書くことや「×」の記号にも留意するよう助言する。

加法と同様にくり上がりに気をつけ計算することを確認する。

 

実践を振り返り

毎時間,はじめに既習の知識や考え方を確かめることにより,本時の課題解決が図られたと考える。

既習事項を振り返ることを前提に授業を展開するので,身近な解決方法から取り入れ,その授業のねらいに沿った思考活動が行われたと思われる。

足場の既習問題の解法で使用した考え方と,本時課題の解法で使われた考え方を関連付けることで,アイディアや考え方の学習が確かなものになり,さらには,1時間で学んだことをもとにして,適用問題に意欲的な取り組みができた。


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