教育改革のとりくみ 目次

子どもの輝きを求めて
〜二期制と学校改革〜

大阪府東大阪市立縄手小学校
校長 保平 良仁

1.はじめに

 東大阪市教育委員会は,平成17年度から市立小中学校で二期制を導入しました。その目的は「教育改革の一層の推進とし,これまでの学校の教育活動を見直し,子どもたちが生きる力を確実に身に付けるよう,子どもたちの学校生活を充実させる」としています。これを受けて,本校では「確かな学力を身に付けることは,これからの世の中を生きるには必要な能力である。この,確かな学力の育成は,学期の期間を長くすることで効果的に展開できる。また,子どもの成長には個人差がある。一つの学期の期間が長くなることで,より,子どもの成長や変化を見取ることができる」としました。

 明治以来続き,文化として定着している制度を変更することは,戸惑いと不安があるのは当然のことです。しかし,変化の激しい社会にあって,学校は不易の部分を大事にしながら,より効果的な教育活動を展開し,保護者の信託に応えていかなければなりません。二期制への移行を機に,特色ある取り組みで学校改革に臨みました。

2.きめ細かな評価活動  〔資料(1)参照〕

 二期制は「学期の期間が長くなることで,よりきめ細かく子どもを評価できる」という良さがあります。では,この良さをどのようにして保護者に示していくのか,お題目に終わるのではなく,具体を模索しました。

 担任は,各単元終了時に評価を行っていましたが,その評価活動を見直すことにしました。学力の全体像を把握する必要性や,通知票に連動させる基礎資料を作成するために,単元終了時の評価活動を,単元の規準を具体的に示し観点別に評価する「学習のようす」という補助簿を作成し,きめ細かな評価活動の推進に努めました。

 1・2年は,国語と算数。4年以上は,国語,算数,理科,社会の教科で実施しています。

−担任の声−

単元ごとの目標がはっきりしているので,まず,「学習のようす」を見て授業するよう心掛けている。

基本に立ち返って,子どもにどんな力をつけたいのか,意識することができた。

評価のための指導になってしまわないように常に気をつけた。

4月当初,「学習のようすを有効活用しよう」と意気込んだものの,つけやすい,つけにくいがあった。つけにくかったのは,めあてと授業が一致していなかったこと。

子どもを評価するだけでなく,自らの実践を反省し,検討することでもあった。

 苦悩する担任が多かったのは事実です。行動が意識を変えると言われているとおり,評価活動の必要性が徐々に浸透していき,意識が変わってきていることも事実です。保護者の高い評価を裏切ることなく,更に,指導と評価の一体化を推進していかなければなりません。

3.きめ細かな情報提供

 二期制の導入で,通知票は2回になります。懇談会の回数も減ることについては,保護者が不安を感じるのは当然のことです。子どもの学習期間は長くなりますが,保護者への情報提供の機会が減少することは連携を密にする意味においても支障をきたすものと思います。

 本校では,7月,10月,12月,3月に個人懇談会を計画しました。7月と12月は三者懇談で,他は二者懇談です。5月の家庭訪問を合わせますと,約2ヶ月に1回,子どものことについて保護者と話す機会が確保できたということになります。学校にとっては,従来以上にきめ細かく子どもを観察し,変化に気付く感性を持たなければなりませんが,教員として当然のこととして共通理解を図りました。

 日頃,学校と疎遠になっている保護者にとっては,大きな負担になるものと考えられます。このことから,個人懇談会の充実に繋げていかなければならないという課題が明確になりました。

4.夏休みの取り組み  〔資料(2)参照〕

 本市の二期制は,10月の3連休で前期と後期に分けていますので,長期休業期間は,学期の途中に位置付くことになります。中でも,夏期休業期間の存在が,学習の継続性が途切れるということで課題とされていました。

 本校では,子どもに過度の負担はかけない。夏休みの存在意義を損なわないという前提で,プール開放や図書室の開放等,従来の取り組みを継続しながら,学期の途中にあるからこそできるものと捉え,新たな有効活用を試みました。

−登校日を授業日に−

 従来の自由登校日をより充実させるため,市教委の承認を得て,登校日を授業日と位置づけて時数を上乗せし,教育課程に位置づけました。低・中・高学年別に4日,午前中授業としました。授業内容は,国語・算数・水泳学習で,指導体制は,1−6年,2−4年,3−5年の組み合わせで,TTや分割指導でわかるおもしろさを追求しました。

 指導内容等,綿密な事前の打ち合わせや,わかるおもしろさを明確にした指導方法の工夫改善,国語,算数にこだわらず他教科への広がりといったことが新たな課題として明らかになりました。

−講座の開設−

 気になる子どもへの補充学習や,教員の得意分野を生かした講座を開設し,学習への意欲的な取り組みを促したり,興味関心を高める場として開設しました。

 6日間で24講座,延べ756名(在籍369名)の児童が参加しました。100名を超える講座もあり,事前の準備は大変でしたが,教員も子どもも楽しめるものでした。授業とは異なる子どもの輝きに出会うことができました。

5.特色ある教育課程

 常々,教育課程に表情を持たせたいという思いを持っていました。二期制への移行を機に,国語と算数を重点教科に位置づけ時数増を図るとともに,自力学習と交流学習を取り入れた授業展開をめざしています。

 本校では,学校5日制が完全実施されたことを受け,学校裁量の時間として週2時間上乗せし「縄手タイム」として欠けた時間の補充に充てていました。この時間を国語と算数に位置づけました。ゆとりを感じ,子どものペースに合わせた指導が可能になるということで各担任には好評です。また,教科が入ることで子どもの意識も変化しています。

 今後,時数増による効果を検証しながら,指導方法の工夫改善に努めていかなければなりません。

6.おわりに

 準備の段階で大事にしたことがあります。それは,市が導入するから仕方なくというのではなく縄手小の二期制をつくろう。子どもと保護者に足場を起き,子どものための二期制でありたいという共通の思いを持ち,全員で一つ一つのことを企画していきました。

 自分たちで創り上げた縄手小の二期制という意識は,教職員の意識を大きく変えることにつながりました。

 二期制の導入は,学校改革を目指すものです。従来の教育活動を見直し,二期制という枠を最大限活用した新たな取り組みを展開しました。形が出来上がって1年が過ぎようとしていますが,真価が問われるのはこれからです。


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