教育改革のとりくみ

算数科少人数指導を通して

石川県宇ノ気町立宇ノ気小学校

1.はじめに

 本校は平成14度から2年間,石川県教育委員会より「個に応じた学習力向上のための実践研究校」の指定を受け,実践研究に取り組んできた。そして研究を進める上で「算数科少人数指導」を重点の1つに掲げてきた。

 本校の少人数指導に対する取り組みは2年目に過ぎないが,比較的スムーズに立ち上がり,無理なく機能していると周囲から評価されている。ここでは「教育改革」へのとりくみという論題をいただいているが,本校の少人数指導の取り組みについて,とりわけ現実的な運営の仕方について紹介させていただきたい。

2.本校の少人数指導の概略

 3年以上の学級を2分割して少人数学習集団を編成し,学級担任と少人数担当で指導にあたる。

  (1) 目的

少人数による学習集団を編成し,個に応じたきめ細かな指導を行うことで,基礎・基本を確実に身に付けさせる。

単元の内容に応じて,習熟度別学習や課題別学習を効果的に組み入れた学習過程を編成し,一人一人の個性や能力に応じた学習を行う。

教師が話し合い,協力し合い,子ども一人一人を生かす指導システムをつくり出すことで,教師としての専門性,力量を高める。

  (2) 少人数学習集団の編成と学習形態

基本的少人数学習集団

(等質集団)
学級を2分割した基本的に固定された集団(学期ごとに編成)

学力や人間関係を考慮し,グループの力が近い水準になるように編成する。
習熟度別学習集団ある一部の能力が近い水準にある集団

チェックテストや作業の結果を表す資料や教師の助言をもとにして,児童がグループを決定する。
課題別学習集団 学習課題や興味関心によって分けられた集団

チェックテスト等の結果をもとに,学習したいコースを選択する。(コースにより学習内容や活動に軽重をつける学習スタイルにちがいがある)

 1型 基本的少人数学習 2型 習熟度別学習 3型 課題別学習 4型 TT

 5型 基本的少人数学習+習熟度別学習 6型 基本的少人数学習+課題別学習

 7型 TT+習熟度別学習 8型 TT+課題別学習

※ 単元の内容に応じて学習形態を決定していますが,2型や5型で実施されることが多いです。

3.実施に向けて

  (1) 年度当初の日程

4月第1週には

  1) 診断テスト実施  全校一斉に

  2) 基本的少人数学習集団(等質集団)の編成(学担)

前年度の単元別テストの正答率と診断テストの結果,クラス編成資料等を参考に,ABの2つのグループに分ける

名簿に診断テストの得点と1学期のグループ名を記載し,少人数担当に提出

少人数担当が少人数指導用の名簿を作成

  3) 学担と少人数担当の打ち合わせ 全校一斉に

1学期の指導計画について

指導計画,チェックテスト,オリエンテーション資料,ワークシート,教材・教具等の準備の役割分担

担当グループの決定

  4) 今年度の少人数学習の児童への説明

グループの分け方,学習する教室,担当の先生,グループの所属 等

4月第2週から少人数指導開始

  (2) 共通理解している事項

少人数指導のための打ち合わせ時間を月行事予定に位置づける。

指導計画,チェックテスト,オリエンテーション資料,ワークシート,教材・教具等は,学年で相談して作成・準備する。(少人数担当も含め)

コース選択のためのオリエンテーションでは,児童が学習の見通しをもてるようにコースの特色を説明し,最終的には児童が決定する。

指導者の交代は1か月を目処とする。

ノート,ワークシート,プリント等は単元ごとにまとめ,算数ファイルにとじていく。(学びの履歴として残し,評価に活用する)

作成したプリント・ワークシート等は,印刷室の棚に保管し,誰もがすぐに利用できるようにする。

<少人数学習・ティーム・ティーチング 年間指導計画 1学期>

※月1回の打ち合わせの時間に相談しています。

   ○○☆☆△△▽▽□□ →(担当先生名)
単元名


コース編成と担当 役割分担
指導
計画
チェック
テスト
オリエン
テーション
資料
単元の
台紙
小数と整数



(7)

(3)
Aグループ 学担

Bグループ ○○

しっかりコース 学担
(基礎定着)

チャレンジコース ○○
(深化・発展)
☆☆ ○○ △△ ○○
小数の
かけ算とわり算(1)




(5)

(9)
Aグループ(学担)

Bグループ(○○

セルフ解決コース(学担)

サポート解決コース(○○
▽▽ ○○ ☆☆ □□
垂直と平行



(5)

(2)
Bグループ(学担)

Aグループ(○○

しっかりコース 学担

チャレンジコース ○○
□□     ☆☆
四角形

(12)
セルフ解決コース(○○

サポート解決コース(学担)
△△ ○○ □□ □□
計算の見積もり

(4)
Bグループ(学担)

Aグループ(○○
☆☆      

<指導計画と評価>

1時間ごとに記録をとっています。各時間のねらいや学習内容は指導計画では共通にしておき,指導の重点・特色の欄にそれぞれのコースのちがいを表しています。

5年1組 指導計画と評価  単元名 四角形  12時間   計画担当(△△
学習形態( )基 (○)習 ( )課 ( )TT ( )基+習 ( )基+課
( )TT+習 ( )TT+課
目標

台形,平行四辺形,ひし形などの形を作ったり,見つけたりすることに関心を持ち,それらの性質を進んで調べようとする。(関・意・態)

辺の位置関係に着目して,台形,平行四辺形,ひし形の性質を考えることができる。また,敷きつめなどの操作活動を通して,三角形や四角形の核の大きさについて考えることができるようにする。(考え方)

辺の位置関係に着目して,台形,平行四辺形,ひし形をかくことができる。(表・処)

台形,平行四辺形,ひし形の特徴・性質を理解する。また,三角形や四角形の角の大きさについて知る。(知・理)
ねらい 学習内容 教科書 指導の重点・特色  成果と改善点
実施
セルフ解決(○○ 実施
サポート解決(☆☆
辺の平行関係に着目して,いろいろ… 2枚の長方形を重ねて四角形を作… 40
41
6/18 2つの長方形を重ね,いろいろな四角形を… 6/18 はばのちがう2種類の長方形を重ねて,四角形…
台形と平行四辺形の作成方法を考え,作成することを通して,台形,平行四辺形の概念を深める。 一組の平行線を用いて台形や平行四辺形を作る方法を考える。
台形と平行四辺形を作る。
42 6/20 平行線の間や方眼紙に台形や平行四辺形をかく。同じ台形や平行四辺形でもいろいろなパターンでかくよう指導した。次時に扱う予定の三角定規を使った平行四辺形の作図も行う。 6/20 1組の平行線をひいたワークシートを用意して書かせた。平行四辺形を長方形の紙を重ねてかく方法はわかりやすかった。方眼にかく際は,ます目を数えて直線の傾きを決めることを思い出させた。
平行四辺形の作図の仕方を理解する。
平行四辺形の辺や角に注目して,平行四辺形の性質を調べ,理解する。
三角定規を用いて平行四辺形をかく方法を考える。
かいた平行四辺形を調べて,平行四辺形の性質を確認する。
43 6/20
6/23
平行四辺形の辺の長さや角の大きさの性質を測定によって気づかせた後,その性質を利用したいろいろな作図方法について考える時間をとった。いろいろな方法を広め合う時間がとれなかった。 6/23 作図と性質の理解をねらったため,性質の方は辺の長さ,角の大きさを調べることを指示した。性質にしぼって,子どもたちに自由に考えさせる時間を与える方が楽しく取り組めたのではないか。

<成績の記録>

※単元ごとのテストの結果を入力しています。

































(%)





(1)







































              100 100 150 150 100 50 100 150 900 100 150
6 2 1 1 A A       87 84 135 149 85 35 85 135 708 95 150
6 2 2 2 B A       75 40 135 145 85 35 75 117 632 85 125

<ノート,ワークシート,プリント等の整理の仕方>





 単元が終わったら,パンチで穴をあけ,算数ファイル(B4)に綴じる。

4.成果と課題

 アンケート結果(14年度 児童)

 少人数で算数を勉強することを,どのように思いますか。

 1学期3学期
よい31%32%
どちらかといえばよい28%30%
クラスの勉強と,あまりかわらない22%20%
どちらかといえばよくない13%11%
よくない6%7%
 「指導計画と評価」に各時間のねらいと学習内容や活動を明記し,成果と改善点を記録することで,指導と評価にあたった。その時間のねらいと内容,手立てをより明確にして指導にあたったことは,基礎・基本の定着に成果があった。また,1時間ごとに評価を行うことは,個に視点をあてた指導につながった。

 また,習熟度別学習や課題別学習を実施したことで「自分にあった学習ができた」という児童の反応も多く,概ね好評であった。特に理解に時間のかかる児童のグループでは,考えたり発言したりするための時間が十分確保され,のびのびと意欲的に取り組む姿が見られた。理解の速い児童のグループでも,発展的な教材を扱うことで,児童の知的好奇心に応える学習を行うことかできた。

 しかし,クラスごとの学習とあまり変わらないという声もある。習熟度別,課題別の学習のよさを児童一人一人が実感できる少人数指導を実施するため,教材開発やコースに応じた指導・支援のあり方を研究していきたい。


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