教育改革のとりくみ

地域にあり,地域とともに子どもを輝かせる学校をめざして
開かれた学校づくりへの実践 〜サマー・カルチャー・スクールへのチャレンジ〜

福岡県福岡市立香椎浜小学校

1.「地域の学校」として積極的な一歩を

 本校は,昭和58年に開校し,今年で21年目を迎える。福岡市東区に位置し,博多湾の開発によって生まれた地域である。在籍している413名の児童の全世帯が集合住宅からなっており,これらの建物が,学校を取り巻くように位置している。

 平成14年度は完全学校週5日制となり,地域の生涯学習の推進拠点となる公民館(福岡市は小学校区毎に公民館が設置されている)との連携を軸に,本校が地域コミュニティーの核となる「地域の学校」として,


【科学教室:2万ボルトの体験】
 (1) 学校の自主性・自律性を引き出す

 (2) 開かれた学校の推進に努める

 (3) 児童自らの考えや判断をもとにして,課題の解決に生き生きと活動できるようにすることを経営の重点として進めている。

地域コミュニティーの核としての学校とは,

社会と学校の相互による学校改革(コミュニティー・スクール論)をもとに,

家庭,地域社会と共生する学校(児童に関する共同責任)を目指すことであり,

そのために,

○公民館をパイプ役に○人材発掘を通して

○近隣教育機関との連携○地域諸団体との連携

などのフットワークを生かしたネットワークづくりを進めている。

2.学校・保護者・地域の連携,活性化の起爆剤として

 本校が「地域の学校」として保護者・地域との連携や活性化を進めていくために,

保護者・地域から信頼される学校

地域の教育力の向上に資する教育活動を企画推進する学校

生涯学習へ繋がる学習モティベーションを高める教育活動を推進する学校

を目指し,その企画運営に努めている。

 そのような中で,完全学校週5日制による休日の意義付けとして,子どもたちにとって有意義な時間の確保,よりよい体験ができる環境等の整備を進めていく必要があった。

 こうしたことから,児童や地域に対する教育活動を休止している夏期休業中の学校施設に息吹を起こすために,学校を開き,学校を地域のコミュニティーとして活用できる構想として「サマー・カルチャー・スクール」の計画に入った。

 本校区は,共働きの世帯が多く,長期休暇中の子どもたちは,自主学習,自主体験活動の指針をつかみづらい環境にある。また生活リズムも乱れがちで,2学期の始まりには規律を取り戻すのにかなりの時間を要する状況があった。

 そこで,規則正しい生活の中で,未知の活動との出会いや興味や関心が生かせる催し等を提供し,学びの意欲づくりや学びの楽しさを体感できる夏休み中の自主体験スクールとして,また子どもたちへの支援活動として「サマー・カルチャー・スクール」を企画したのである。

3.サマー・カルチャー・スクールの実施

 (1) サマー・カルチャー・スクールの目的・方針

      <目的>  

長期休業中の児童の生活習慣維持のため



学校は楽しい所という意識づくりのため・・・・学習への動機付け



週5日制に関する地域連携強化のため・・・・公民館教室等との連携強化



地域ボランティアの発掘と変化する学校教育への理解者づくりのため 他

      <方針>  

児童の自主登校,教室の自主選択,受講の束縛を行わない原則



PTA主催制による保障体制,教師・保護者による企画推進制の原則



規則的な生活習慣育成のための継続的な事業の原則



完全週5日制による公民館講座の継続化推進の原則

無償の原則

 (2) 内容

     (1)  図書室の開放と自由閲覧

     (2)
  読み聞かせ教室:地域ボランティアの協力

     (3)
  外国語教室:地域ボランティアの協力

     (4)
  囲碁教室:公民館「囲碁教室」の延長、地域ボランティアの協力

     (5)
  パソコン教室:暑中見舞い葉書作成を通したリテラシーアップ 教職員による指導

     (6)
  科学教室1:ペットボトル・ロケットの作成を通した興味関心づくり 教職員による指導

 
  科学教室2:超低温の世界(超伝導現象)等の体験活動 教職員による指導
福岡教育大学秋永教授の協力(学生ボランティアの協力)

     (7)
  工作教室:学校の森づくりの一環とした巣箱づくり、職員の指導 校区青育連の資材協力

     (8)
  映画鑑賞:宮崎駿作品他の紹介

 (3) 実施状況

      1) 保護者・地域宛ての説明資料の一部から

「サマー・カルチャー・スクール」は,PTA活動及び本校の教育の一環として長期休業期間中の児童の活動を支援し,健全育成を図ることを目的とする。

児童の参加は自由参加を基本とし,出校日とはしない。

安全確保上,出入り口については玄関を使用する。なお,ボランティア指導員による受付,巡回を実施する。

参加者は,玄関の受付に氏名等を記録し,所定のカードを身につける。校舎外に出るときには退校時刻を記録し,カードを所定の場所に戻す。

開放教室以外への立ち入りは禁ずる。

カルチャースクールの講師については,ボランティアを原則とする。

活動については,実費等がかからない内容で行うが,必要な場合は事前に学校と協議をする。

      2) 計画表の一部から



4.サマー・カルチャー・スクールを終えて

 今回のサマー・カルチャー・スクールでは,受付を通ったのべ人数から1,182名の子どもたちが参加していることが分かった。中でも,映画鑑賞や科学・工作講座などを開いた日は95〜153名ほどの参加が見られた。

 また,この事業を通して,囲碁の指導や読み聞かせ,外国語講座,工作の材料の提供,受付のお手伝い等々,保護者や地域の数多くの方の協力のもとで開催できたことが大きな収穫でもあった。成果としてまとめてみると,

地域,保護者から今回の取組を学校教育の前進,変化として評価を受ける。

校区児童の生活環境把握に効果があった。生活習慣,学習意欲作りに効果があった。

コミュニティー・ティーチャーの発掘を通した地域教育力の育成に資する事ができた。

教職員の学校の方針に対する意識づくりに貢献した。→教職員の取込みの工夫・強化

教科等学習との連携を密にするメニューの改編,授業変革の必要性が生まれた。

などがあげられる。また,この企画がきっかけとなり,2学期以降の生活科や総合的な学習の時間を始めとして各教科学習の中では,校区の方々の参加・協力を得た内容が進んでいる。その後,ウインター・カルチャー・スクールの実施や校区に在住している外国の方々や日本に帰国された方々などに日本語学習のお手伝いを通した地域ボランティアの方々との交流会(週1回)など,地域コミュニティーの役割を担う学校へと前進できたと考える。

 今,「児童のための児童によるサマー・カルチャー・スクール」を合い言葉に,児童会を中心として企画,運営の面から次回のサマー・カルチャー・スクールをどのように進めるか検討中である。


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