教育改革のとりくみ 目次
開かれた学校と学校評議員制度の導入

栃木市立栃木東中学校校長  大木 洋三


1.はじめに

 平成12年1月21日付けの文部事務次官通知「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について」で,学校評議員制が公にされたのを受け,栃木市教育委員会は,平成13年度より,「学校評議員制度モデル校」として本校を指定しました。
 これを受け本校では,評議員制度の導入のねらいを次の3点と考え,取り組みを開始しました。

 (1) 開かれた学校づくりの推進に機能させる。
 (2) 保護者・地域住民等の意向を把握し,これを学校運営に反映させるとともに,連携・協力に機能させる。
 (3) 学校運営の状況等の周知を図り,説明責任を果たすことに機能させる。


2.学校評議員制度を立ち上げるに当たって配慮したこと

  (1) 趣旨の正確な理解

 まず,全職員に学校評議員制度の趣旨,評議員設置の在り方,具体的な運営方法及び推薦や委嘱の手続きなどについて,校内研修会等により共通理解をはかりました。

  (2)

 具体的な設置形態等の検討

 本校の地域等の実情から考え,どのような形態で設置し,どのような内容を中心において意見を求めるか,どのように運営することが効果的であるかなどを検討しました。

  (3)

 学校評議員の構成の検討

 本校の場合,どのような人材を何名くらい委嘱することが最も効果的かを十分検討しました。

  (4)

 十分な説明のための準備

 適切な意見を得るためには,学校評議員にいかに学校の活動状況等について理解していただくかを説明しなければならないので,十分な説明のための準備に心掛けました。

3.学校評議員導入の実際

  (1) 学校評議員運営細則の作成

 栃木市教育委員会が作成した「栃木市小中学校評議員に関する要綱」に基づき,本校に適した「栃木市立栃木東中学校評議員運営細則」を設けました。
 本校の主な細則の内容は,次のとおりです。

 第1条 (趣旨)
 第2条 (役割)
 第3条 (推薦及び委嘱)
 第4条 (任期)
 第5条 (秘密の保持)
 第6条 (開催回数)
 第7条 (事務局)
 第8条 (開催手続き,形 態,方法)
 第9条 (任務)
 第10条 (留意事項)
 第11条 (公表)
 第12条 (意見の尊重と説明義務)
 第13条 (補則)

  (2)

 学校評議員の構成

[人数] 7名:男性4名,女性3名(40代2名・50代1名・60代2名・70代2名)
[役職] 自治会長・同窓会役員・PTA会長・女性団体役員・児童委員・教育相談・有識者

  (3)

 学校評議員会議の開催

ア.開催通知
  ・学校評議員会議の日程については,学校暦(年間計画)に位置づけ,開催通知は教頭が1か月前に発送。

イ.会議の形態
  ・評議員が一堂に会する会議形式。(非公開)

ウ.職員参加者
  ・校長・教頭・教務主任・その他(必要に応じ,生徒指導主事等)

エ.開催回数
  ・年間4回を原則。

  (4)

 校内組織等との関係

 学校評議員は本校の職員ではないが,学校が教育目標達成をするために機能する立場にあるので,学校運営組織の一員と考えています。しかし,学校運営組織の中にありながら,学校とは一定の距離を保った存在なので,次のことを説明することに努めました。

 ア.学校としての説明責任
 1) 学校教育目標・学校運営上の基本的方向
 2) 教育課程上の創意工夫
 3) 生徒の学習や生活の実態や指導の成果と課題
 4) 主な教育活動の計画・日程
 5) 諸課題とそれへの学校としての対応

 イ.職員会議との連携
 会議開催及び会議内容等は事前に,また,事後には経過及び実績について,職員会議で校長が報告しました。(「運動会の在り方」,「家庭訪問の在り方」,「外部評価の採用」の検討については,職員会議と議題を共有しました。)

 ウ.既存の組織との役割分担
 PTAなど,これまで非公式にも学校の意思決定に様々な影響をもっていた組織や地域の人々との関係を再考し,整理して,それぞれの組織や関係者にふさわしい方法で,役割を分担してみました。

4.学校評議員会議の実践例(紙面の都合で,平成14年度の実践例とします。)

 平成14年度の実践の様子は,次のとおりです。

  (1) 実施計画書

期日・時間主な内容学校の参加者備考
平成14年7月9日(火)
 13時30分〜16時30分
1.学校の特色と生徒の実態
2.学校経営方針
3.情報交換・意見交換
4.今後の計画
5.その他
・校 長
・教 頭
・教務主任
・学年主任
校長室
平成14年10月21日(月)
 13時30分〜16時30分
1.人権教育公開研究発表会の参観
2.意見交換
3.その他
・校 長
・教 頭
・教務主任
・学習主任
校長室
体育館
平成14年11月19日(火)
 13時30分〜16時30分
1.授業参観
2.意見交換
3.その他
・校 長
・教 頭
・教務主任
・生徒指導主事
各教室
校長室
平成15年2月13日(木)
 14時30分〜16時30分
1.1年間の振り返り
2.審議のまとめ
3.その他
・校 長
・教 頭
・教務主任
校長室

  (2)

 第1回学校評議員会議の様子

ア.自己紹介
 ・7名の評議員より紹介をいただく。

イ.学校の特色と生徒に実態について
(校長より報告)
 1. 学校の歩み
 2. 教育目標
 3. 学校経営の方針
 4. 生徒の様子
 学級数・生徒数,母子・父子家庭,両親欠損家庭,就学援助生徒数,不登校生,等
 5. 職員の様子
 職員組織,加配教員,職員年齢,通勤距離と時間,等
 6. 学校の特色
 シンボルである「竹」について,人権教育研究校,部活動の実態,総合的な学習の時間,等
 7. 学校の課題
など。


学校評議員会議の様子
ウ.学校教育に関する教育界の動きと本校の主な行事について
 校長より,新聞の切り抜きを基に,昨年4月から今年7月までに話題となった教育界の出来事の紹介をしました。主な事項は,次のとおりです。

 ○完全学校週5日制スタート ○新学習指導要領完全実施
 ○絶対評価と通知表・内申書 ○10代女性人工中絶最多
 ○指導力不足教員対策開始 ○高等学校再編
 ○運動部活動離れ ○学力低下
 など。

また,今年度の学校行事として,次の事項を説明しました。

 1. 家庭訪問
 2. 定期テスト(中間・期末・実力テスト)
 3. 運動会
 4. クリーン作戦
 5. フィールドワーク
 6. 三者面談
 7. 学校祭
 8. 人権教育公開研究発表会
 9. 長距離走大会
 など。

エ.情報交換
 ・校内を見学したが,学校環境がきれいになり,生徒が生き生きしてきている。
 ・最近,道路上でのあいさつが元気に交わされるようになり,評判が高まっている。
 ・運動会を参観したが,応援団が改善され,何回もアンコールが続くなどすばらしい行事となった。(昨年度の学校評議員会議の成果と受け止めた。)
 ・汗と涙の運動会で,内容がよくなっているが,女子の騎馬戦は賛否両論ある。
 ・保護者や地域の人は,全てにおいて本校が一番との認識が強いので,ぜひ,そうなって欲しい。(期待に応じる「特色ある学校」づくりを)

オ.今年度の課題(「家庭訪問の在り方」)の協議
 (ア) 協議事項の提案(校長より)
 昨年度は,「運動会の在り方」について御協議いただき大きな成果を得たが,今年度は「家庭訪問の在り方」について,次の事項を御検討いただきたい。
  ・家庭訪問の是非  ・家庭訪問の時期
  ・家庭訪問の内容  ・その他
 (イ) 主な協議内容
 ・家庭訪問の趣旨を,保護者に十分理解させるなどの啓発が必要なのではないか。
 ・社会の情況が変化していて,パートなどは会社を自由に休めないことがある。
 ・家庭訪問に替えて,三者面談を増やすなどの学校がみられる。
 ・保護者や教職員のアンケート調査をして,これに基づいて協議したらどうか。

  (3)

 第3回学校評議員会議の様子(第2回目の様子は省略)

ア.報告事項(校長より)

 1. 「自宅研修」の見直し
 2. 学校の禁煙化
 3. 2学期制の増加傾向
 4. 特別支援教育の必要性
 5. 県立校の男女共学化
 6.  本校の様子(県歯科医師会表彰,市定例監査を実施,「朝の10分間読書」が充実,東中祭・人権教育公開研究発表会が好評)

イ.家庭訪問のアンケート調査結果について(校長より報告)

 1) 家庭訪問の必要性について
   ・ 教職員84%,保護者85%は,必要性を認めているが,その内容には違いがある。
〈教職員〉保護者といち早く信頼関係を築き,連携して生徒の健やかな成長を目指す。
〈保護者〉時間を十分に取り,じっくり話し合う機会としたい。
 2) 家庭訪問の時期について
   ・ 教職員の56%は,これまでどおり4月の下旬から5月のはじめに希望しているのに対し,保護者の58%は,6月下旬から夏休みにかけての要望が多い。
 3) 家庭訪問に対する自由意見について
   ・ 教職員からは,担任を継続する場合はカットしてよいのではないかという意見が多数あった。また,保護者からは,家庭訪問と面談の選択性を希望する意見が出た。

ウ.主な協議内容

 ・ 保護者は,学校での子どもの様子について知りたいのが本音であり,これまでと違い夏休みに教員の「振替休暇」がなくなるので,夏休みが可能となるのではないか。
 ・ 親としての「子育て観」を理解するため,また,子どもの夢や願いを親と教師が共有するためにも,じっくり話し合える夏休みではどうか。
 ・ 家庭訪問に対して,学校でしっかりした考えを統一して,保護者に納得させることが大切となる。流行に流されず,教育理念を確立した上で,実施して欲しい。

  (4)

 第4回学校評議員会議の様子(今年度の課題「家庭訪問の在り方」のまとめ)

ア.報告事項(校長より) →紙面の都合上省略します。

イ. 主な協議内容
 職員会議の結果の,夏休みに家庭訪問を実施したいという教職員の意見を尊重し,次のとおり,保護者あての通知書をまとめました。

 学級担任にとっては,生徒の住む地域や家庭の状況を観察して,保護者と連携を密にしながら,相互信頼を築くため,一歩保護者に近づき隔たりを埋めるねらいがある。また,保護者としては,「子育て観」を知ってもらい,担任の人柄や教育観について知る手がかりとなる。これらのことから,家庭訪問は欠かすことのできない教育活動であり,今後も継続すべきである。ただし,実施時期については,教職員や保護者の意見を調整し,これまでと変更して,じっくり情報を確認し合える夏休みに行うことが望ましい。

5.おわりに

 平成13年度の課題「運動会の在り方」と,この実践例(平成14年度)の課題「家庭訪問の在り方」については,学校評議委員会議の協議事項を参考にして,教育活動を実施しましたが大変好評を博しています。また,今年度は「学校評価における外部評価の在り方」について御協議いただいていますが,これを基にして,次年度から外部評価を実践したいと考えています。


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