教育改革のとりくみ 目次
基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り,個性を生かす指導を充実する数学科指導の在り方
〜指導目標と評価規準を明確にした指導計画の作成〜
〜個の学習状況に応じたきめ細やかな指導の充実(少人数指導とTTの併用)〜

岐阜県A中学校


1.はじめに

 教育改革が様々な形で進められている。私たち教育現場ではこれを「教育の内容・方法」の改革と「教育の仕組み」の改革の2方向から捉えているが,ここでは,絶対評価の導入に伴い,評価規準を明確にした指導計画の作成と,個の学習状況に応じたきめ細やかな指導を行うための少人数指導とTT指導の併用について実践報告をしたいと思う。

2.実践の内容(第2学年「連立方程式」)

(1) 評価規準を生かした単位時間の展開案

●単元名
 連立方程式:『1節 連立方程式』
●本時のねらい
   2変数を含む具体的な場面で,2つの条件を満たす数の組は一意的に決まることがわかり,対応表等を使って求めることができる。
●本時の展開(指導計画2/11):TT指導

過程学 習 活 動指導・評価
素材
提示
[素材]
 赤,黄の袋には,それぞれ同じ数のビ−玉が入っています。次のような条件を満たすとき,それぞれの袋に入っているビー玉の数はどれだけでしょう。
 条件1:赤 赤 赤 + 黄=21
 条件2:赤 赤 + 黄=16
具体物を使って場面の理解を図る。
(関心・意欲・態度)
課題化 [課題]
 2つの条件を同時に満たすとき,赤,黄の袋に入っているビー玉の数を求めよう。
1つの条件だけでは,それぞれの袋のビー玉の数は一意的に決まらないことがわかる。
(知識・理解)
課題
追求
[個人追求の時間]
 ○それぞれの条件を満たす数の組を対応表から求める。
 ○赤,黄それぞれに入っているビー玉の数をx,yとし,条件を式化する。
TTによる個別指導により,個々が自分の考えを持つことができる。
(見方・考え方)
まとめ [全体での交流とまとめの時間]
 ○2つの条件を満たす数の組が一意的に決まることを理解し,求め方を交流する。
  ・条件を2元一次方程式に表す。
  ・対応表を使って,2つの条件を満たす数の組を求める。
自分の考えが持て,他との比較ができる。
(表現・処理)

(2) 評価規準を位置づけた連立方程式の指導計画

●指導計画:TT指導と少人数指導

ねらい素 材評価規準評価
方法







(TT)
 2変数を含む具体的な問題を解決することを通して,2元一次方程式とその解の意味が分かる。  赤,黄の袋にはそれぞれ同じ数のビ−玉が入っいます。赤の袋3つと黄の袋1つの合計が21個のとき,それぞれの数をめなさい。







































(TT)
 2つの2元一次方程式をともに満たすxとyの値の組を考えることを通して,連立方程式とその解の意味を理解させる。  赤,黄の袋にはそれぞれ同じ数のビ−玉が入っています。次のような条件を満たすとき,それぞれの数を求めなさい。
 赤赤赤+黄=21
赤赤+黄=16

(少)
 連立方程式を,代入法によって解くことができるようにする。  次の連立方程式を解きなさい。
  x + y = 12
x = 8+ y

(TT)
 連立方程式を,加減法によって変数を消去して解くことができるようにする。
 ビビビビ+ポポ =380(g)
  ビビビ+ポ =250(g)
 このような条件を満たすとき,(ビ)ビスコ1箱と(ポ)ポッキー1箱の重さは何gか求めなさい。

(少)
 x,yの係数が異なる連立方程式を加減法で解けるようにする。  次の連立方程式を加減法を使って解きなさい。
1)
  x +2 y =11
2 x−3 y=8
2)
  6x+5y=28
4x+7y=-2

(少)
 代入法,加減法を適切に使い分けて,連立方程式を解くことができるようにする。  次の連立方程式を解きなさい。
1)
  4x+7y=39
2(x−y)=3x+3y
2)
  4x−2y=3x+5
x/3 −y/2=2
 節の学習内容の定着を図る。  教科書の計算練習 










(TT)
 具体的な問題の解決を通して,一次方程式と連立方程式の解き方を比較して,連立方程式のほうが式をつくりやすいことに気づかせる。  50円切手と80円切手を合わせて15枚買い,900円払いました。50円切手と80円切手を,それぞれ何枚買ったでしょう。

(TT)
 距離,時間,速さの問題で,それらの関係を図や表にまとめさせ,連立方程式を立式させ,解決していけるようにする。  峠をはさんで11km離れたA,B両地点があります。ある人がA地点からB地点へ行くのに,A地点から峠までは毎時3km,峠からB地点までは毎時5kmの速さで歩いて3時間かかりました。A地点から峠まで,峠からB地点までは,それぞ何kmあるでしょう。
10
(TT)
 連立方程式を使って,割合の問題を解決していけるようにする。  銀を92%ふくむ合金と84%ふくむ合金があります。この2種類の合金をとかして混ぜ,銀を90%ふくむ 合金を500gつくろうと思います。それぞれ何gとかして混ぜればよいでしょう。
11 単元の学習内容の定着の確認 単元テスト 

●評価規準
<関心・意欲・態度>
 1. 事象の中には,2変数を使わなくては表せないものがあることに関心を持つ。
 2. 代入法や加減法を使って形式的に処理していくよさを知り,進んで連立方程式を解こうとする。
 3. 見通しをもって,連立方程式を工夫して解いていこうとする。
 4. 連立方程式を使うよさを知り,問題解決場面で連立方程式を進んで活用しようとする。

<見方や考え方>
 1. 連立方程式を解くのに,1つの変数を消去して,既習の1元一次方程式に帰着させる。
 2. 連立方程式を解くのに,代入法や加減法を用いて形式的に処理する。
 3. いろいろな連立方程式を解く際,操作を簡単にする手順を考える。
 4. 題意を理解したり解法を発見するために,線分図に表したり表を利用したりする。
 5. 方程式をつくるために,問題を数量化して考え,数量を関連づけて取り出す。

<表現・処理>
 1. 2元一次方程式の解をいくつか求めることができる。
 2. 2つの2元一次方程式を両方とも成り立たせる文字の値の組を調べることができる。
 3. 代入法を使って,連立方程式を解くことができる。
 4. 加減法を使って,連立方程式を解くことができる。
 5. いろいろな連立方程式を解くことができる。
 6. 問題解決のため,取り出した数量を関連づけて方程式で表すことができる。
 7. つくった連立方程式を解くことができる。
 8. 解の吟味をすることができる。

<知識・理解>
 1. 2元一次方程式とその解の意味を知る。
 2. 連立方程式,連立方程式の解,連立方程式を解くことの意味を理解する。
 3. 文字を消去する方法には,代入法と加減法があることを知る。
 4. 連立方程式を解くには,式の形の特徴をとらえ,文字の消去しやすい方法を選べばよいことを知る。
 5. いろいろな連立方程式の解き方の手順を知る。
 6. 連立方程式は一定の手順に従って解くことができることを知る。
 7. 具体的な場面において,連立方程式を使って問題を解決する考え方や,手順を理解する。

3.成果と課題

 単元指導計画を作成し,単位時間の素材を明らかにし,その素材から見方・考え方のできる課題を用意し,生徒の各自の考えを発表し交流することで,生徒の力を伸張させる方向性を明らかにしていくことができた。また単位時間の評価の方法から,生徒一人一人の評価をするための具体的,客観的な手がかりが得られた。
 単元指導計画を作成したものと実際の生徒の考え方とに違いが出ることがあり,指導計画を固定的にとらえないで,常に更新していく姿勢が大切である。

〈参考資料〉自己評価表



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