東海大学助教授
菊池 文誠
発見宮殿
Palais de la decouverte
科学産業都市 ラ・ヴィレット
Cite des Sciences et de l'lndustrie La Villete

フランス(2)

発見宮殿
(Palais de la decouverte)

所在地Ave.F.D.Roosevelt,Paris
電話番号40-74-80-00
交  通地下鉄Franklin D.Rooseveltで下車するのが便利である。グランパレ(Grand Palais)という名の大きな建物にある。この建物は1900年のパリ万国博を記念して建造されたものでその一部が発見宮殿となっている。
開館時間9:30〜18:00,日曜は10:00〜19:00(演示実験の時間は午後の後半に集中している。)
休館日月曜のほか,1月1日,5月1日,7月14日,8月15日,12月25日である。
写真撮影可能
 1937年に科学の普及を目的として,ジャン・ペランの提唱により開館した。ここは一般の科学博物館とはやや異なった感じのもので,展示のほかに職員による講義・実験にウェートがかかっている。内容は自然科学のすべての分野をカバーし,技術系のものはほとんどない。物理,地球科学,天文学,宇宙科学,化学,生物学のほか,科学博物館ではあまり例のない医学や数学に関するものがあるのが特色といえよう。そしてオリジナルの装置やレプリカを見せるのでなく,館員による説明や実験で科学を理解する場所である。項目別に分かれた多くの展示室があり,各分野の基礎的な知識と最新の情報がバランスよく解説されている。演示実験のための設備も充実していて,一日に数回(ものによっては一回)それぞれの場所で実験が行われている。特にコッククロフト型高圧発生装置による静電気の実験は大変な迫力である。学校の生徒が団体で来て学習するには恵まれた環境である。パリ大学の附属という形のため,大学のスタッフや院生が全面的に協力している。


発見宮殿入り口

放射線実験

原子核物理コーナー

 プラネタリウムも併置され,参考図書などの刊行物も豊富である。ただし,ほとんどがフランス語で書かれ,英語のものは施設全体のガイドブックぐらいである。見所は,科学の基礎の解説と最新の姿の調和である。一例を挙げると,フランスは原子力発電の推進に関して世界の先頭を進んでいる国である。また,放射能の発見された国でもある。当然ながら,その関係の展示に力が入れられている。二階にある核物理・原子力部門の部屋には原子核や素粒子の基礎からパネルで説明がなされるとともに,関連の科学者の業績が紹介され,歴史的な流れも理解できるようになっている。そして原子力やアイソトープの利用,さらに計測や安全の確保などの応用面の展示がある。原子力発電所のプラントの模型もあり,全体的にもまた,各部分ごとにも理解できるようになっている。このあたりの問題のとらえ方は日本の原子力関係の展示方法とまったく異なる。さらに,この模型による核分裂シミュレーションや中性子発生装置を用いた放射化と生成された放射性物質の崩壊の様子を見る実験が行われている。これらと平行して宇宙線や高エネルギー物理の解説もあり,科学の基礎から応用までが見事に統合されている。このような説明の展開は,他の展示やデモ実験でも見られる。

科学産業都市 ラ・ヴィレット
(Cite des Sciences et de l'lndustrie La Villete)
所在地:30Ave.Corentin Cariou 75019 Paris
電話番号:46-42-13-13
交  通:地下鉄7号線で市内中心から約20分,Porte de la Villete下車
開館時間:火〜日曜,祭日 10:00〜18:00
休館日:月曜
写真撮影:可能
 フランス革命200周年記念の一環としてパリ北東の元食肉処理場跡に建設されたラ・ヴィレットは科学産業年という意味である。科学技術を普及・啓発する目的で生まれたこの施設は従来のものとは全く異なった新しい発想と方法で科学と産業の姿を紹介する世界でも最大級の施設である。周囲を運河に囲まれ,敷地は35万平方キロメ−トルあり,年間500万人が訪れている。エキスプローラと呼ばれる展示場は音,光,映像などのメディアを駆使して宇宙,地球,生命,物質などを紹介している。また,水族館やプラネタリウムもある。
 全体が銀色に輝くジェオードと呼ばれる巨大な球形映写施設では超広角レンズのオムニマックス映写機とものすごい音響効果のスピーカーシステムで科学映画を上映している。


ラ・ヴィレット入口

ジェオード全景

 周辺一帯は公園になっていていろいろな施設があり,まさに「年」そのものであり,パリの新しい名所になっている。このような奇想天外なタイプの科学館のあり方についての評価は,訪れる人によって分かれると思われる。フランス国民の未来志向型の面が現れているといえよう。

 パリ市内のその他の科学史跡
 カルチェラタンの中心にあるパンテオン寺院はルイ15世が建立を指示し,およそ30年かかって1789年(フランス革命の年)に完成した。幅110m,高さ83mの巨大なドームでフーコーが振り子の実験をして地球の自転を証明したことは余りにも有名であり,現在も振り子がつけられている。地下はフランス文化の発展に寄与した人達の墓所になっていて,ユーゴー,ルソー,ボルテール,ゾラ,ドラクロアなどの他,科学者ではジャン・ペラン,カルノー父子,ランジュバン,ゲイリュサック,アラゴー,ラグランジュ,ピエール&マリー・キュリー夫妻などが埋葬されている。
 また,市庁舎近くにある高さ52mのサン・ジャック塔で1648年にパスカルによって水銀を用いた気圧の測定がなされ,気圧が高さによって変わることが示された。この塔の入口にパスカルの像がある。


パンテオン

サン・ジャック塔


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