東海大学助教授
菊池 文誠
国立航空宇宙博物館
National Air and Space Museum
国立アメリカ歴史博物館
National Museum of American History

アメリカ(1)


 アメリカの首都ワシントンの中央部に,ポトマック川に面して東西6Km,南北2Kmほどのモールと呼ばれる広大な芝生のグリーン地帯がある。ここに,国会議事堂やホワイトハウス,ワシントン記念碑,リンカーン記念堂などがあり,周辺の連邦政府諸機関の建物と合わせて文字通り政治の中心である。同時に,ここはもう1つの顔があり,スミソニアン協会所属の16の博物館,美術館などの施設が集中している文化の中心でもある。これらを見るために,年間3000万人近くの観光客が訪れるという,まさにアメリカの「聖地」である。
 スミソニアン協会はイギリスの貴族で鉱物学者のジェームス・スミソン(1765〜1829)の,「もし,子どもがいないまま死んだら,スミソン家の財産はアメリカ合衆国へ人類の知識の向上と普及のために譲る」という遺言によって設立された。現在は,アメリカ各地に多数の研究機関や博物館を擁する巨大な組織となっている。モールの中央にヨーロッパ中世の古城を思わせるような本部の建物がある。また,各博物館は規模が大きく,ひとつに一日かけても足りないものが多い。
スミソニアン協会本部
スミソニアン協会本部

国立航空宇宙博物館
(National Air and Space Museum)

所在地Independence Ave. SW.Washington. DC 20560
電話番号202 357 2700
開館時間10:00〜17:30(夏季の木曜は20:00まで)
休館日クリスマス
アドレスhttp://www.nasm.edu/
写真撮影可能
 スミソニアン博物館の中でも最高の人気のある施設である。燃料を入れればそのまま飛べるといわれる240機にもなる実物の航空機,アメリカの開発した多数の宇宙ロケットと宇宙船,アイマックス劇場などがある巨大な博物館である。
 展示の目玉となるものは1階の入口近くにある。有名な「月の石」は1972年にアポロ17号が持ち帰ったもので,手で触れることができるようになっている。この玄武岩はみんなが触るので表面がツルツルになっている。
 動力を用いた世界最初の飛行機はライト兄弟によって作られたが,これもホールの天井から吊り下げられている。また,1927年リンドバークによって大西洋単独無着陸横断に成功した「スピリッツ オブ セントルイス」もある。
 比較的新しいものでは世界初の超音速機,アメリカ初の有人宇宙船フレンドシップセブン,アポロ11号の指令船,中距離核ミサイルなど,飛行機と宇宙開発の区切りとなったものが展示されている。
 一般の展示としては1階に旅客機や輸送機などの民間航空機,ヘリコプター関係,ジェット機,月面探査関係など。2階は各種軍用機にかなりのスペースが使われている。第2次世界大戦の戦闘機コーナーには,イギリスのスピットファイア,ドイツのメッサーシュミットなどと並んで日本の零戦もある。さらに宇宙開発関係の膨大な展示があり,ロケットの数々や火星,木星などの惑星探査機を見ると,アメリカがいかに国家の威信をかけて宇宙開発に取り組んでいるかがうかがえる。
 また,この館では,教育用プログラムも準備されていて,学校の団体などに対していろいろな演示実験,紙飛行機の製作,飛行機の原理や宇宙関係の解説などを年間を通じて行っている。付属のアインシュタイン・プラネタリウムおよび,すばらしい臨場感のある立体映像「アイマックス」も一見の価値がある。3階は食堂,図書室,それに研究施設になっている。


国立航空宇宙博物館全景

月の石

アポロ宇宙船


月面車

旧日本海軍の零戦

国立アメリカ歴史博物館
National Museum of American History
所在地:14 ST.& Constitution Ave. NW Washington. DC. 20560
電話番号:202 357 2700
開館時間:10:00〜17:30
休館日:クリスマス
写真撮影:可能
 ヨーロッパに比べて遙かに歴史の浅いアメリカではあるが,歴史を重んじる気風は強い。ここは,アメリカの歴史を科学・技術分野を含めいろいろな角度から紹介している。
 入口を入って正面にまず目につくのは古い巨大な星条旗である。これは1814年のもので,星(1つの州)が15である。この旗から,後の国歌『星条旗よ永遠なれ』作詞の霊感を得たというアメリカの魂の原点でもある。そして,その前にはフーコーの大きな振り子があって見学者が好奇の目で振れの角度の変化を眺めている。
 館内はアメリカの生活に関係した展示が多く,それぞれの時代の雰囲気を伝えている。市民生活,農業,工業,商業,軍事などの分野ごとに膨大な内容である。それでも常時展示されているのは所蔵品のほんの一部である。
 科学技術関係では,エヂソン関係,アメリカ最初のノーベル賞のマイケルソン関係などが目につく。以前はバンデグラーフの1号機やフェルミの原子炉の実物大模型があったが今は更新されている。その他,交通関係や最近の情報関係,医学・薬学関係などが主なものである。
 地下の食堂は広く,売店も商品が豊富でスミソニアン随一である。書籍や展示品に関係したものが購入できる。


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