選択理科の実践
−校区の環境問題について学習しよう−
鳥取県倉吉市立河北中学校
加藤 晋彦
1.本校の教育課程
 ・教科,領域時間配当
 1学年2学年3学年障害児学級1障害児学級2
国 語
社 会
数 学
理 科 
音 楽交流学級
美 術養訓
保健体育日常
技術家庭
選択(英語)
選 択   
道 徳
学 活
    作業4作業4
合 計3030303030

時間割の編成は2週間を1つのサイクル(土曜休業の週28時間,土曜課業の週32時間)として行い,選択(英語を除く)は,土曜休業の週の月曜日の午後に2時間続きの授業として設定した。

2.選択履修幅の拡大について
 本校の選択学習は,生徒自らが計画し,調査し,実践し,評価して次の計画に生かす力を育てる場として第3学年の選択学習を位置づけた。選択学習を前期・後期に分け,2時間続きの授業として設定することにより,次の点での広がりを期待した。
 ・準備や後片付けなどにゆとりがもてる。
 ・学習活動の場が学校内にとどまることなく,公立図書館,公民館,会社訪問など学校外にまで広げることが可能になる。
 ・地域の人材や地域のイベントを活用することができる。
 ・調査活動などの体験的な活動を多くできる。
 選択教科は,国語,社会,数学,理科,音楽,美術,保健体育,技術家庭の8教科とし,それぞれの教科に,コースと課題を設定し,生徒が自主的にコースを選択し学習する方法をとった。前期は17コース40課題,後期は23コース33課題を設定している。
 生徒の希望を優先とし,希望のない教科については開設しなかった。

3.選択理科のコース・課題の設定について
 選択理科の課題,コースについては次の点を考えて設定した。
 ・社会・数学の教科の特性を取り入れて総合的な学習を行いやすい課題を設定する。
 ・学習対象が校区の自然や生活に根づいたものであること
 ・体験的な活動を多く取り入れることができるもの。
 前期の選択授業では,3コース(A〜Dの4課題)を設定した。
 (1) 環境問題コース
A:河北中校区の環境問題について学習しよう。
 (2) 総合学習(理科・数学)コース
B:ニュートンがやったことをやってみよう。
C:ガリレオがやったことをやってみよう。
 (3) 総合学習(理科・社会)コース
D:上井地区の地形と集落,人間の暮らしについて
 生徒の希望を取ったところ,Aを6名が,Dを5名が希望し,B,Cは希望者がなかった。

4.学習内容
 A:河北中校区の環境問題について学習しよう。
生物指標により,水質検査を基に校区の河川の環境を調べた。
 <第1回> 学習計画づくり
生物指標による環境調査をすることに決定し調査計画は完成
 <第2〜7回> 野外での調査
 <第8回> まとめ
 D:上井地区の地形と集落,人間の暮らしについて
 上井地区は,後背湿地の地形上にあり,昔から雨が降るとすぐに水に浸かるという地形である。この地区では,古い集落は水が出やすいところを避けて,天神川の自然堤防である周りの山裾にできており,新しい集落は後背湿地上にできている。
 そこで,上井地区の高低差を水平測量により調査して,水がよく出るところと低いところの関連性を確認し,上井地区の歴史を調べて自然環境と人間の生活との関係を学習させた。
 <第1回> 学習計画づくり
 <第2回> 水平測量実習(水平測量の練習と記録の取り方)
 <第3〜7回> 水平測量による調査
 <第8回> まとめ,建設省見学

5.成果と課題
 (1) 成果としては,次のようなことが挙げられる。
2時間続きの授業にすることにより,当初の目的のように野外観察・調査を充分にさせることができた。特に疑問をもったところをその日のうちに再調査することができた。
生徒がテーマを選んだ動機は,特に環境問題のコースでは,川でサワガニを取ったりアユなどの魚を釣ったりする体験を持つ生徒が多く,必修教科の中では意欲が続きにくい生徒も意欲的に取り組むことができた。
上井地区の地形と集落,人間の暮らしについてのコースでは,住宅地域に出かけて調査するために地域の人と触れ合う機会が多く,地域の人から関連した話を聞くことができ,予想以上の成果が上がった。
選択授業全体で多くのコースを作ったため少人数で行うことができ,顕微鏡などの器具は一人一人に行き渡った。このことがまた興味を持ち続けることにつながったと思われる。
必修理科の中では扱えないような体験的な調査活動や校区内を対象とした学習内容であったため,多くの生徒は驚きの感想を持った。
 (2) 課題としては次のことが挙げられる。
野外調査のときは天候に左右されることが多くて計画通りに進まず,また,雨天のときに何をすればよいか戸惑ってしまった。
今年度初めてということで学習内容の深まりという点では不十分であった。さらに,まとめ方,評価内容,評価方法については,これからの大きな課題であるといえる。
選択理科の学習では探究的な学習内容が多くなるが,課題に対して当初「何をすればいいですか」と「指示されて動く」姿が多く見られた。「自ら考えて動き学習する」態度に変容させるためにも,必修理科の中で「探究的な学習方法の習得」をつけさせる必要があると感じた。
生徒の興味・関心,学習意欲を喚起するためにも,今後より広い視野に立ってのコースや課題を設定することが大切である。そのためには,現在配当されている理科教員の加配が望まれる。

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