授業実践記録

科学的素養を育む授業実践
北海道札幌市立平岡緑中学校
戸田 賢之

1.はじめに

 生徒の心に火をつける〜「学んでいる」「知りたがっている」「疑問を解決しようとしている」「考えぬいている」「自分から動き出そうとしている」〜等の状況を如何に創りだすかを自身の授業課題とし,試行錯誤している。

 

2.単元

 2分野下「植物のくらしとなかま」

 

3.学習の流れ

1 ラミネートシートの作成
  校内のツツジを採取しに行き,観察後,一人ずつ,ラミネートシート化した。
 
ラミネート化は一週間後
生徒には好評
  (作成の仕方は後述)

1 単元の最後に,@で作成したラミネートシートを使用し,以下の花のつくりを観察する(1時間。本時)。
 
サルビア ベゴニア トレニア
  ※それぞれ,園芸店で 100 円程度


4.授業に関して

 ワークシートの観察記述から(1クラス分から抽出)

  サルビア
 
花の中に長い花がついていて,見たときは「何だこれ??」と思った。ほかの花とぜんぜん違って楽しかった。
花びらが2つあって,両方花びらといえるのか迷った。もしかしたら,下の方にある花びらのようなものが子房で,中のものが胚珠なのかもしれない。
下の方についていたのには毛が生えているから多分「がく」だと思う。

  ベゴニア
 
子房&胚珠がない??やく&柱頭がない → 種子で子孫を残さない??
受粉をする機能がなかった。本当に花なのか?
おしべ,めしべがない。花の中心の黄色から汁が出てきた。

同じ種類の花でも,黄色い部分が丸いのが雌花で違うのが雄花?

種子植物じゃない?

おしべもめしべも見つからない。根っこで育つと思う。
雄花と見られるものの花びらの下のふくろのような物の中には花粉のような物が入っていた。

  トレニア
 
花びらについているのは本当におしべか?(花びらから出ているが)
どうしておしべがめしべみたいに生えていないのか?

天使のわっか(のようなもの)の正体は何なのか? おしべは2つあるが・・・

   

ベタベタしたのがめしべで,ベタベタしていないのがおしべ。

天使のわっかは何か? おしべはなぜ短いのか?

なぞの物体がおしべだということに気づいた。

   

花びらからおしべが飛び出していた。

はじめてトレニアという花を調べて,がくの形がほかの花のがくと違うことを発見した。

 

  授業の流れ
   
 

 生徒には予め,「調べた花について,他の班に説明する」ことを課しており,生徒はまず「自分たちの班の花のつくり」について知ろうと,動き始めた。

 単元のはじめにツツジで花のつくりを学習した生徒にとって,この3種の花のつくりの観察は,ツツジのように一筋縄にはいかないようである。このあたりが「なぜ?」「これは何だ?」「???」という生徒の知的探究心をくすぐったのだろうか?

 
 

 既習事項に当てはめて考えたり,自分なりに仮説を立て,実験・観察道具を使用しはじめたり,同じ種類の花の観察を行っている班員のところへ相談に行ったりしはじめた。

 
   ここで,生徒の自由な動きを整理し,効率よく交流(共有化)をはからせようと,次のクラスの授業からは,「クロス交流法」なる交流方法を,最初に行ったクラスの生徒の動きから考え,用いた(非常に有用であった。方法は後述。)。
 
 

 授業終了のチャイムが聞こえたとき「えっ。もう終わり」という生徒の声が聞こえた。同時に,終了後も私に疑問をぶつけたり,仮説や観察したことを力説する生徒がいた。
いい授業ができたかな・・・。と実感した一瞬であった。

 

5.最後に

五感をフルに使って,しっかりと花を「みた」のだろう。
花のつくりの多様性を,花の視点から述べたこの一文に,科学的素養の育みがみえたと私は思っている。

 

6.参考資料

  ラミネートシートの作り方
 

花を採取し,台紙に貼る。花びらの端の方は乾燥させると丸まるので,端の方を中心にセロハンテープ等で固定する。全てをセロハンテープで覆うと,水分が蒸発せず,黒カビが発生することがある。

「花びら」等の部位を示したシールを貼る。

日陰で一週間ほど乾燥させる。

低温でラミネートさせる。温度が低くてつかない場合は温度を少し上げて再度ラミネートする。何もはさまず透明になる部分がある場合は,適温設定でも大きく変形しやすいので注意。

完成! 生徒がよろこぶ。


  交流方法
 
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