生きる力を高める理科教育〜身近な疑問から課題を設定し解決していく力を育む〜
川崎市立中野島中学校
吉田 崇
1.はじめに
 さまざまな課題解決学習が行われている中、新学習指導要領全面実施に伴い、中央教育審議会答申の中で言及されている「生きる力=自分で課題を見つけ、自ら考え、自ら課題を解決していく力」の原点にもう一度立ち、各章や単元のねらいに即して課題を設定でき、その課題を解決するために、自らいろいろな計画や工夫をし、得られたデータを適切な方法で扱い、それらを総合的に考察し、より良く表現するだけでなく、知識として共有できる授業展開の取り組みを行った。
 また、「総合的な学習の時間」との連携についてもその一例を取り上げる。

2.ねらい
 中学校3年間を通し、「自然の事象の中に問題を見い出し、目的意識を持った主体的で意欲的な観察、実験を行い、課題を解決する」といういわゆる問題解決的な学習を定着させていくことを念頭に置き、ここではその基礎作りとして、1分野1年「音の世界」における課題解決学習を通して行うとともに、「音」についての理解を深めさせる。また、「総合的な学習の時間」に習得した、発表(プレゼンテーション)に関するスキルを活用することで、教科と「総合的な学習の時間」との相乗効果を期待する。

3.授業展開の留意点
  
(1) 課題解決学習の進め方を定着
(2) 単元(小単元)のねらいに即した課題の発見と設定
(3) 自ら工夫した実験・観察の方法
(4) テーマに適したデータの扱い方やまとめの工夫
(5) 効果的な発表(プレゼンテーション)

4.指導計画
 1学級6班編制(6〜7人グループ)で実施した。

5.授業の展開
  (1) 課題解決学習の進め方
 1学年での授業であるため3年間を見通し、ここでは課題解決学習の基本的な進め方を提示し、そのガイドに沿って生徒が学習を進めていく方法で行った。ガイドは各班に1枚、ラミネーターにかけたカードを配布し、また全体にはOHPで投影しておく。
(課題解決学習の都度流用する。)
 

  (2)

 単元(小単元)のねらいに即した課題の発見と設定
 課題解決学習を行うにあたり重要視しなければならないことの1つは「自分で課題を見つける」ことであるが、単元(小単元)のねらいに即した課題を設定できる生徒は多くない。ややもすれば、ねらいから大きく逸脱したものや、短絡的な課題になってしまう可能性がある。その解決手段として2つの方法を試みた。

. 「単元(小単元)の項目(目的)の確認」
最初に教科書を使い、単元の項目(目的)をリストアップする。これにより、生徒が課題を設定する際の基準線が位置づけられる。
. 「仮テーマの作成」
課題設定を最初から本テーマの設定とせず、仮テーマとして設定をする。仮テーマが決定した班からテーマの板書をし、クラス内である程度調整してテーマのばらつきをはかる。
. 「仮テーマの修正とテーマ決定」
設定した課題の目的を明確にしたのち、そのテーマをさらにふさわしいテーマとすることができる。また、発表をする際に、「聞き手側の興味を引くようなテーマ」になるようにアドバイスをすることで、本学習の充実をはかる。

  (3)

 自ら工夫した実験・観察
 一人ひとりが課題解決のための実験計画を立て、班で検討をし1つの計画を作成する。この時点で教師が入り、アドバイスを与えるとともに実験に要する器具や装置などの確認を行うため、「実験計画書」の作成と提出を促す。
 また、実験の行う中での試行錯誤を通じ、課題解決への一層の工夫をはかり、実験の技能だけでなく思考力を養う。

●課題一覧(実際は6クラス36班で実施したが、ここでは2クラス分を紹介する。)

テーマ

実験方法
1-1
音はどの高さまで聞こえるか
発振器をスピーカーにつなぎ耳で聞く
1-2
音の伝わる速さ
笛、ビデオカメラ、ストップウォッチ
1-3
どんなものでも音が伝わるか
糸電話、物質(紙、プラスチック)
1-4
音の出し方(大小)で振動は変わるか
音の実験用太鼓
1-5
空気以外に音は伝わるか
机など
1-6
音の強弱と音の出ている時間
おんさ
2-1
物質の違いによる音の伝えやすさ
糸電話、物質(木、プラスチック、ゴム、糸、金属)、発振器、アンプ、オシロスコープ
2-2
音はわけられるか
糸電話
2-3
音の高さと振動の関係
紙コップ、薬包紙、マグネシウム粒,ペトリ皿
2-4
音の伝わる速さ
ソプラノ笛、校庭
2-5
音の大きさと振動の関係
音の実験用太鼓
2-6
音の高さと振動の関係
ウクレレ、オシロスコープ


実験計画書

水の振動を見る装置(食紅水)

マイク内蔵ウクレレ(オシロへ)