一次関数の指導
―ジオボードを使用して―
島根県大田市立志学中学校
福田 卓史
1.単 元 一次関数

2.目 標
 (1) 観察や実験等をもとにして,身の回りの事象の中には,一次関数としてとらえられるものがあることに関心をもつ。(興味・関心)
 (2) 一次関数としてとらえられる事象を見いだし,一次関数を用いて問題を解決することができる。(数学的な考え方)
 (3) 一次関数の特徴を理解し,表・グラフ・式に表すことができる。(表現・処理)
 (4) 一次関数に関する用語・記号の意味を理解し,一次関数のとる値の変化の割合やそのグラフの特徴について説明することができる。(知識・理解)

3.授業実践の前に
 (1) 我々の日常生活では,関数的な見方や考え方を用いることが多い。物の個数が増えれば全体の重さが増えることから,物をのせる板の強度に気を配ることは,その一例である。関数において,数量の関係を伴って変わる2つの数量の間に成り立つ一意対応の関係として関数を理解し,表・グラフ・式に表すことを通して,一次関数について理解できるようにする。これらの表現方法が,互いに独立したものでなく,見えないものを見えるようにして考察することが,関数関係を考察していくにあたって重要なこととなる。
 本単元は,1年における比例の学習を発展させたもので,具体的な事象から伴って変わる2つの数量を取りだし,それらの間の関数関係について理解するとともに,関数関係を見いだして表現し,考察する能力を養う。そのために,表・グラフ・式を用いて表すといった基本的な表現力をつけ,一次関数を用いて問題を解決する態度を身につけさせる。
 (2) 本学級は男子6名,女子2名,計8名の少人数学級である。数学に対する取り組みは意欲的で,課題にじっくり取り組むことができる。また、自分の意見や考えを素直に発表したり,ノートにまとめたりすることができる。互いに回りの意見や考えをよく聞いて、和やかな雰囲気で授業に取り組むことができる。1年の「変化と対応」でも,意欲的・積極的に授業に取り組んだが,座標の概念やグラフの傾き等の理解が十分ではない生徒もいる。
 (3) 数学に対する興味・関心をさらに高めていくために,単元の導入や学習内容を利用する場面では,生徒が自ら課題を見つけ,主体的に学習を進めていくことのできる問題解決的な授業を適所に取り入れたい。少人数のよさを生かすために課題を選択するようにし,生徒の考えを比較・検討する中で,数学的見方・考え方のよさを見いだすようにしたい。また,ここで課題学習を位置づけることにより,一見複雑そうな問題の中にも,一次関数が存在することに気づかせるとともに,問題を解決する過程で,数学的活動の楽しさを味わい,数学的な見方や考え方がよりいっそう深められるようにする。

4.指導計画(全20時間)
 ・一次関数2時間   ・課題学習2時間
(本時2/2)
 ・一次関数のグラフ4時間   ・二元一次方程式とグラフ3時間
 ・一次関数の式を求めること3時間   ・連立方程式とグラフ2時間
 ・一次関数の利用3時間   ・問題1時間

5.前時の活動
 <ねらい>
 ジオボードに輪ゴムをかけて図形をつくることで,ジオボードに慣れ,つくった図形の面積を求めることができる。
 ○わかばマークをつくってみよう。
 ○図形の面積の考え方について
・面積1の考え方  ・面積0.5の考え方
 ○面積2の図形をいろいろとつくってみよう。
 ○面積0.5の図形をもう一度考えよう。

・共通点:すべて三角形。図形の中に格子点がない。

 ○

図形の面積を求めよう。
 ○次時までに自分で形をつくって面積を求めておこう。

6.本 時
 (1) ねらい
 観察・操作等の具体的な活動を通して,2つの数量関係を見いだし,表現して考察する能力を養う。
 (2) 展 開
学習活動と予想される生徒の反応(*) 教師の支援(・)と評価(☆★)
導入
 かいてきた図形の周上の点と内部の点を数えて発表する。
 授業者が生徒のかいた図形を見ないで,面積を当ててみせる。
 *なぜわかるのだろうか。
 *点の数と面積に関係があるのか。

生徒が点の数と面積の関係を調べたくなるようにするために興味づけをする。


関係を意識することにより,自分なりの課題をもつことができたか。
課題
 点の個数と図形の面積の関係について,明らかにしよう。
面積0.5の図形と面積2の図形をふり返って考える。

A 内部の点の数を固定して,周囲の点の数を変えてみよう。
B 周囲の点の数を固定して,内部の点の数を変えてみよう。
 <A,Bのグループ別に考える>
 *A:面積が0.5ずつ増えていく。
 *B:面積が1ずつ増えていく。


簡単なものから考えるよう助言する。






点の数と面積との関係を考える方法を示す。
1つの形だけで考えずに,いろいろな形の場合について考えるよう助言する。
表やことば,図等でまとめようとしたか。
図形の面積と格子点の個数との間に関数関係があることを見いだし,表やグラフを使って調べようとしたか。
まとめ1
 グループの中でまとめる。
まとめ2
 調べたことをグループ別に発表する。
 *図,表,グラフ等でまとめる。
ふり返り
 結果に対する意味づけをする。
数学的な見方や考え方のよさを見つけるために,2つの考えを比較・検討する。

7.授業の実際・生徒の反応
授業展開と主な発問(○) 生徒の反応
かいてきた図形の周囲の点の数と内部の点の数を発表してください。
教師は,図形を見ずに,面積を当てて見せる。
・4名発表
なぜ,先生は面積を当てることができたか。
何か点の数と関係があるのかな。
式があるのかなあ。
今日は,昨日の授業で考えてみたことと,先生が面積を当ててみたことから,自分で調べたいテーマを考えて,解決してみたいと思います。
・テーマを考える。
・テーマを発表しよう。板書


自分のテーマと似たテーマの人とでグループをつくって解決してみよう。

A,Bグループは,解決の糸口が見えないようなので,
A:内部の点の数を固定して,周囲の点の数を変えてみよう
B:周囲の点の数を固定して,内部の点の数を変えてみよう
というやり方を示した。

 ・3分ほどで全員テーマが決まる。
僕も点だけで面積を求めるぞ。(B)
面積0.5や2の図形には,どれだけ形があるのか。(C)
周囲と内部で面積を求める。(A)
面積0.5とか2とかの形は,どれだけ種類があるのか。(C)
計算式を見つける。(A)
面積の求め方(B)
面積0.5が0.5のままで,どれだけ細くなるのか。(C)
ジオボードを操作しながら,
1)表にまとめていく生徒
2)式に表そうとする生徒
3)ことばでまとめる生徒
グループ内でまとめてみよう。


みんなに発表しよう。
 ・Aグループ:面積が0.5ずつ増える。
 ・Bグル−プ:面積が1ずつ増える。
 ・Cグループ:底辺と高さを変えなければ無数にできる。

8.研究の視点
 ・ジオボードを操作したり観察したりすることで,数学的思考が活性化したか。
 ・生徒が課題選択したことにより,少人数のよさが生かせたか。

 <参考文献>
 CRECER16 授業に役立つ数学の話 中学校数学科教育実践講座刊行会


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