ホーム > 教師の方へ > 中学校 > 授業実践記録(理科) > 博物館と連携して地域素材を生かし、小中学校理科の系統性を踏まえた探究的な火山学習~黒姫火山灰は語る 私の住む信濃町の大地~

教師の方へ

授業実践記録(理科)

博物館と連携して地域素材を生かし、小中学校理科の系統性を踏まえた探究的な火山学習
~黒姫火山灰は語る 私の住む信濃町の大地~

長野県信濃小中学校 結解 武宏

1.はじめに

筆者は義務教育学校で小学6年と中学1年の理科を教科担任していたことから、小中学校理科の系統性を踏まえた探究的な火山学習を考えた。小学6年では野外観察実習で信濃町の地層観察やそこで採取した黒姫火山灰に含まれる鉱物を観察する。そして、中学1年では既習の知識や概念をもとに、採取した黒姫火山灰に含まれる鉱物の種類と割合を観察していくことで、かつて大噴火していた黒姫山の起源やその噴火の様子がわかる世界へと子どもを誘いながら、探究的に学んでいく子どもの姿に出会いたいと考え、授業を構想した。

2.素材選定

黒姫山は本校から眺めることができ、登山やスキーなどなじみのある山である。子どもはかつて黒姫山が大噴火を繰り返したこと、山の形を変えてきたことはあまり知らない。そこで、黒姫高原スキー場の野尻ローム層の露頭を野尻湖ナウマンゾウ博物館の館長さんより教えていただいた。小学6年では、土地は火山の噴火によって変化することを学ぶ。そのため野外観察実習を野尻ローム層の露頭で行い、採取した火山灰に含まれる鉱物について子どもは学んでいく。そこで、筆者自身は「黒姫山は年代によってどのような火山活動を送ってきたのだろうか」と黒姫山の歴史を知りたくなった。そして、野尻ローム層の火山灰に含まれる鉱物の種類と割合に着目して顕微鏡観察し、文献や博物館の館長さんから学んだ。すると黒姫山は信濃富士と呼ばれ、約25万年前から火山活動をはじめ、最新の活動である約4万年前ごろに現在の中央火口丘ができた複式成層火山となり、火山活動の様子は激しい噴火から穏やかな噴火に移り変わっていたことが分かった。

3.素材の教材化と黒姫山の火山活動の授業の学習展開。

「素材」と「素材の価値」を表1に示す。

表1

素材 素材の価値
・黒姫高原スキー場の地層ならびに地層のはぎ取り標本 ・後期更新世の下部野尻ローム層(5万年前)、中部野尻ローム層(4万年前)、上部野尻ローム層(2.5万年前)が見られる。小学6年の地層見学では現地で代表となる鍵層から火山灰を採取して、理科室でわんがけを行い、鉱物を観察している。 ・地層のはぎ取り標本は、野尻湖ナウマン象博物館より借用して使わせていただいた。
・桜島の火山灰や長野県八ヶ岳起源の火山灰 ・円錐状の火山。有色鉱物(かんらん石や輝石、角閃石)を多く含み、無色鉱物(石英や長石)の割合が少ない。桜島は火山の形や噴火の様子、溶岩が確認できる。
・雲仙普賢岳の火山灰や北アルプス樅沢岳付近の火山起源の火山灰 ・無色鉱物(石英、長石)を多く含み、有色鉱物(黒雲母、角閃石)の割合が少ない。雲仙普賢岳は火山の形や噴火の様子、溶岩が確認できる。
・下部野尻ローム層内の火山灰鍵層(ブレッチャーゾーン)
黒姫山起源
5万年前
・層の色は灰色。粒の大きさが大きい。厚さ60cm。無色鉱物を多く含み、有色鉱物の割合が少ない。層の厚さや粒の大きさ、火山灰に含まれる鉱物の種類と割合から、マグマのねばりけは強く、激しく噴火したことがわかる。
・中部野尻ローム層内の火山灰鍵層(赤スコ)
黒姫山起源
4万年前
・層の色は赤茶色。粒の大きさがあまり大きくない。厚さ40cm。有色鉱物を多く含み、輝石が多くみられる。火山灰に含まれる鉱物の種類と割合から、ブレッチャーゾーンと比較するとマグマのねばりけは弱く、比較的穏やかな噴火であったことがわかる。
・火山灰分析の手引き書 ・実物の鉱物や鉱物の特徴を図や文章で示した「火山灰分析の手引き書」を手元に置きながら、鉱物の色や形に着目した観察を、個別に進めることができる。さらに、各鉱物の主な特徴についても記載してあるので知識を得ることができる。
・火山分類表 ・火山の形、盾状火山、成層火山、ドーム状火山、噴火やマグマのねばりけの様子、主な火山の火山灰、火山灰の種類と割合を記載した火山分類表。

筆者は、小学6年での火山学習を踏まえて、中学1年では単元名「黒姫火山灰は語る 私の住む信濃町の大地」を行った。その「学習活動と問い」や「教師の支援」を表2に示す。

表2 学習展開

学習活動と問い(○) 教師の支援
1 火山噴火モデル実験を通して火山と出会い、小学6年で地層観察した黒姫高原スキー場の露頭のはぎ取り標本を観察する。(1時間) ○黒姫山の火山モデルを噴火させてみよう。 ・信濃町全体に火山灰が降り積もっていた。 ・黒姫山の噴火で今の大地ができているのかもしれない。 2 日本の火山を比較し、火山マグマ噴出実験を観察する。(2時間) ○火山の形と噴火の様子に違いが生じるのは何が原因なのだろう。 ・マグマのねばりけが強いと激しい噴火で、形が盛り上がったドーム状の火山になり、白っぽい溶岩になるのだな。 ・火山噴火モデル実験(火山灰分布)と火山マグマ噴出実験(マグマのねばりけの違い)を通して、火山噴出物やマグマのねばりけに着目し、火山の噴火や形の違いに疑問をもてるようにする。 ・日本の代表的な火山の写真を提示し、比較することで、火山の形や溶岩の色と噴火の様子の違いに気付き、火山の形や噴火の様子が異なる原因をマグマのねばりけと関連付けて説明できるようにする。
3 火山灰について考え、自分の鉱物標本をつくる。(1時間) ○火山灰とはどのようなものだろうか。 ・火山灰はただの灰ではなく、地下のマグマが冷えてできた鉱物なんだな。 ・黒っぽい鉱物と白っぽい鉱物の2種類があるな。 ・無色鉱物では石英、長石が見られた。有色鉱物では黒雲母、角閃石、輝石、カンラン石が見られた。 ・火山噴出物である2種類の火山灰(北アルプス由来、八ヶ岳由来)に着目し、火山灰はただの灰ではなくマグマに含まれる鉱物であることに気付くことができるようにする。 ・鉱物の種類によって鉱物の色や形に違いがあることを説明できるようにする。
4 2つの火山(桜島、雲仙普賢岳)の火山灰に含まれる鉱物の種類や割合の違いについて考える。(2時間) ○火山によって火山灰に含まれる鉱物の種類や割合にはどのような違いがあるのか。 ・桜島の火山灰には有色鉱物が多く、雲仙普賢岳の火山灰には無色鉱物が多い。 ・火山灰の有色鉱物の割合が多いとマグマのねばりけが弱くなり、無色鉱物の割合が多いとマグマのねばりけが強くなる。 ・無色と有色鉱物の種類と割合に着目して火山灰を顕微鏡観察し、火山によって火山灰に含まれる無色と有色鉱物の種類や割合に違いがあることに気付き、火山灰に含まれる鉱物の種類や割合と地下のマグマのねばりけを関連付けて説明できるようにする。
5 黒姫高原スキー場の地層のはぎ取り標本を再び観察して、過去の黒姫山の火山活動についてイメージ図や言葉で予想する。(1時間) ・色や層の厚さが異なる。 ・粒の大きさや色が違う。 ○年代によって黒姫山の火山活動にはどのような違いがあったのだろうか。 6 火山灰に含まれる鉱物の種類や割合に着目して顕微鏡観察し、年代別による黒姫山の形や噴火の様子、マグマのねばりけを考える。(2時間) ・5万年前の火山灰には無色鉱物が多い。4万年前の火山灰には有色鉱物が多い。 ・5万年前の火山灰の方が無色鉱物の割合が多かったことから、火山の噴火が激しく、マグマのねばり気も強かったことが分かる。 ・火山活動は年代によって変化してきたことが分かった。 ・露頭のはぎ取り標本を再提示し、当時の黒姫山の火山の様子についてイメージ図や言葉で記述するよう促すことで、黒姫山の火山活動の変容の様子を予想することができるようにする。 ・火山灰に含まれる鉱物の種類と割合に着目して顕微鏡観察し、得られた結果から、火山分類表をもとにして、班の友と話し合いながらワークシートにまとめることで、火山灰に含まれる鉱物の種類と割合の違いから、同じ火山でも年代によって火山活動が異なってきたことを説明できるようにする。
7 火山岩と深成岩のつくりの違いについて考える。(2時間) ○火山岩と深成岩はどのようなつくりの違いがあるのだろうか。 ・火山岩である安山岩は、鉱物の部分と鉱物ではないところがある。 ・深成岩である花崗岩は、鉱物の部分でできている。 ・マグマの冷え方の違いによって、岩石の組織のつくりに違いが見られるのだ。 ・火成岩の粒の色や形、大きさに着目してスケッチし、火山岩と深成岩の組織の違いをマグマの冷え方と関連付けて説明できるようにする。 ・チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)の再結晶実験をすることで、マグマの冷え方によって、岩石の組織のつくりの違いがわかるようにする。
8 火山活動がもたらす災害について、地域や日常生活と関連付けて考える。(1時間) ○私たちの地域や日常生活に対して、火山活動は何をもたらすのだろうか。 ・火山は身近にあるので、ハザードマップで安全な場所を確認しておく必要があるな。 ・火山のおかげで温泉施設があったり、地熱発電ができたりするんだな。 ・火山活動が私たちの生活に与える影響を班で話し合うよう促すことで、火山の噴火への備えをする必要性や火山は多くの被害をもたらすだけではなく、私たちの生活をよりゆたかしていることにも気付くことができるようにする。

4.子どもの学びの姿

①小学6年での野外観察実習(露頭観察)と双眼実体顕微鏡による火山灰に含まれる鉱物の観察

黒姫高原スキー場の地層観察を行うと、子どもは「地層をみると何層にもなっていた。これが黒姫山や妙高山の火山灰が降り積もってできたなんて信じられない」と地層の高さや広がりに驚いていた。また、火山灰に含まれている鉱物を顕微鏡観察すると、「こんなにも鉱物がきれいで宝石みたい」とつぶやき、教師が教えなくても火山灰分析の手引書の鉱物写真を参考にしながら鉱物の特徴をとらえて、鉱物を同定していく子どもの姿が見られた。

(現地地層の写真1と、はぎ取り標本の写真2)
(現地地層の写真1と、はぎ取り標本の写真2)

②マグマのねばりけのちがいによる火山マグマ噴出実験

(火山マグマ噴出実験 写真3)
(火山マグマ噴出実験 写真3)

火山の形が異なる理由を「マグマの質(固さ、強さ)」「噴火物の量」と答えた子どもの考えを、実際に目で確かめてほしいと考え、マグマのねばりけのちがいによる火山マグマ噴出実験を各班で行った。重層と洗濯のり、石膏を使い、水分の調節によってマグマのねばりけの違いを出す火山マグマ噴出実験である。実験結果から「マグマがサラサラしていて広い範囲に流れていった方は山が低いが、マグマがねばねばとしていて山頂付近で固まっていった方は山が高く、もりあがった」と地下のマグマの性質の違いと火山の形を関連付けて考察する子どもの姿が見られた。

(子どもが記述したノート 写真4)
(子どもが記述したノート 写真4)

③地層のはぎ取り標本観察を観察して、過去の黒姫山の火山活動についてイメージ図や言葉で予想した。

教師は地層のはぎ取り標本を提示して、黒姫山はどのような火山活動をしてきたのか子どもにイメージ図や言葉を学習カードに書いてみるよう促した。すると子どもは、地層に含まれる岩や砂の大きさ、地層の色に着目して過去の黒姫山の火山活動を予想する子どもの姿があった。

(鉱物観察 写真5)
(鉱物観察 写真5)

④火山灰に含まれる鉱物の種類と割合に着目して顕微鏡観察し、その結果を分析し、火山分類表をもとにして、班で友と話し合いながら年代別による黒姫山の形や噴火の様子を考えた。

学習課題「赤スコ4万年前、ブレッチャーゾーン5万年前の火山灰層に含まれる鉱物の種類、量、割合に着目して、火山分類表をもとに過去の黒姫山を考えてみよう」では、子どもは自分が作成した鉱物標本や火山灰分析の手引き書を参考にしながら、火山灰層に含まれる無色鉱物や有色鉱物の同定をしていくことができた。ここで、既に小学6年の火山学習で、採取した火山灰に含まれる鉱物を観察した既習の知識や概念が生かされていた。さらに、中学1年では火山灰に含まれる鉱物の種類と割合を見ていきながら、黒姫山の火山活動をかつて大噴火していた黒姫山の起源やその噴火の様子を考察している子どもの姿に出会えた。

子どもの考察の一部より
「黒姫山の火山灰5万年前は無色鉱物(石英や長石)が多いことから、マグマのねばりけが強いことがわかり、火山噴火の様子は激しく、ドーム状の火山の形をつくったのではないか。また、4万年前は有色鉱物(輝石やカクセン石)が多いことから、マグマのねばりけが弱く、火山噴火の様子はおだやかで、傾斜がゆるやかな火山の形をしていたのではないかと考えました。」

単元展開のまとめとして「単元を通した学び」について授業を振り返りながら記述をさせた。

子どもの「単元を通した学び」の振り返り

はじめは火山や火山灰はどれも同じと考えていました。6年生の時に学習した鉱物も1つの種類しかないと思っていました。けど、実際に火山の形や噴火の様子、マグマのねばりけを考えていくと全く違っていました。黒姫山は昔、大噴火をしていて、激しかったということがわかってきました。今は噴火していませんが、昔は、火山の形は盛り上がっていて、噴火を繰り返していく中で、今の円すい状の山の形になっていったのだと思います。火山学習での発見は、自分たちが今歩いている信濃町の道や場所は火山灰が降り積もってできていることを知りました。火山活動によってもし、火山が噴火したときどんな行動をとればよいか、考えておいたほうがよいと火山学習を通して学びました。でも、火山は温泉やダイヤモンドなどの恵みもあると知りました。この長野県では火山がたくさんあります。噴火の災害のことも日頃から考えていかなくてはならないと思いました。

この単元の振り返りから子どもは、小中学校理科の火山学習を通して、黒姫山について探究してきたことの凄さを実感していった。また、黒姫火山灰に含まれる小さな鉱物というものを微視的な世界で見ていった。そして、過去の火山活動を知ることで巨視的な世界に迫ることができるという理科学習での探究の面白さを味わっていくことができた。

5.おわりに

この学びを通して、著者もあらためて、児童生徒が観察・実験や直接体験をして、それらの経験から得られた結果について科学的な言葉や概念を適切に使って説明したり、検討したりすることや、知識・技能を習得したり、思考力・判断力・表現力等の科学的な探究能力や問題解決能力を育成したりしていくことが大切であると考えた。また、学習した原理や法則などが日常生活や社会の中でどのように使われているか調べたり、日常生活や社会に適用したりして、理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会をもたせることも重要であると考えさせられた。

引用・参考文献
結解武宏「生徒と共に創る授業のための教材研究中学校1年火山活動の授業、『理科の教育』4月号、Vol.63、No.741、東洋館出版社、2014
結解武宏「義務教育学校からの理科学習の“わかりなおし”小学校第6学年、中学校第1学年の系統性をふまえた探究的火山学習の取り組み、『理科の教育』6月号、Vol.66、No.779、東洋館出版社、2017

ページの先頭へ