1年
うちのひとだいすき      
〜国際理解教育の視点を取り入れた生活科の実践〜      
熊本県 B
1.単元について

 (1)子どもの実態

 2学期後半に入り,子どもたちも学校や学級の色々な活動に参加することができるようになってきた。また,給食や,係り活動なども進んでできるようになってきた。
  しかし,自分は学級の一員,家族の一員,地域の一員という意識に欠けるところがあり,自己中心的な行動にはしることがあった。

 (2)国際理解教育についての考え方

 新しい教育の課題として国際理解教育が挙げられている。ここでは,国際理解教育を次のように考えた。

自分以外の色々な人々と協力・協調できる資質(異文化理解の資質)を育てる教育

 つまり,子どもたちにとって一番身近な家族から,地域,世界に住む人々まで様々な人々と予断や偏見なく協力・協調できる,異文化を理解できるような子どもたちを育てることを目指していく教育として考えた。

 (3)国際理解教育の視点からの教材分析

 本単元において,自分と家族,自分と他者のかかわりをより意識させるようなはたらきかけを行うことは,国際理解教育がめざす他者との協力・協調の心を育むうえで重要であると考えた。また,このかかわりにおいて感謝の心が持てるよう支援することで,子どもたちは生活環境が変わっても,色々な人と協力・協調できる資質を育てることができると考えた。
 また,学校で自分にできることはなにかを考えることは,学校の一員,地域社会の一員という自覚を育てるきっかけになると考えた。

2.授業の実際

 (1)みつめる段階「うちの人を紹介しよう」(3時間)
ねらい家族紹介を通して家族一人ひとりの役割や家族への自分の思いに気づき家族の一員としての自分を振り返る
学 習 活 動教師の支援と子どもの反応
(1)家族と一緒に楽しんだことや家族からしてもらったことを発表する
子どもたち同士,発表しあう中で思い出していた。
 ご飯を一緒に作りました。
 病気の時看病してくれました。
(2)家族を紹介する絵やポスターを描く。
どうしてその人をかきたいのか理由をはっきりさせてからかかせるようにした。
(3)家族の発表会をする

 (2)さぐる段階「私にもできるよ」(4時間)
ねらい家族の一員として自分にもできる仕事があることに気づき,進んで役割を果たそうとする。
学 習 活 動教師の支援と子どもの反応
(1)自分の手伝いの経験や友達の手伝いの経験をきき,やってみたい手伝いを決める。
自分のやったことのある手伝いを発表させることで,手伝いへの意欲化を図った。
(2)家庭で手伝いをやってみる。
「お母さんはお仕事をしていて,お皿とかも洗ったりしているから大変だ。洗剤とか使って手もあれるし。なにかやりたいな。」という感想がでてきた。
「初めてふとんをたたんだ。お姉ちゃんいつもたたんでくれてありがとう」という感想もあった。
(3)上靴洗いをやってみる。

自分にできることを考えさせたところ靴洗いをやってみたいという意見が多かったので,上靴洗いに挑戦することを決めた。

 (3)ふかめる段階「みんなありがとう」(2時間)
ねらい家族の温かさに気づき,感謝することができる
予想される学習活動及び教師の支援教師の支援と子どもの反応
(1)家族に感謝の気持ちを込め,工夫したプレゼントを作る。
実際に手伝いをしたり,上靴洗いをしたことを通して家族への感謝の気持ちを高めさせた。その上でプレゼント作りを行った。

 (4)ひろげる段階「もっとできるよ」(2時間)
ねらい家庭でのことに加えて学校で友達やみんなのためにもっとできることはないか考え,話し合い,計画を立てることができる。
学習活動教師の支援と子どもたちの様子
(1)学校のくらしの中でみんなのためにできることはないか考え話し合う。

グループで話し合ったあと,全体の中で話しあった。
スリッパならべ,水かけなど,様々な意見が出た。

3.成果と課題

 子どもたちは手伝いを通して,家族や学校の友人へと意識を広げることがきた。これは国際理解教育がめざすものの一つ,「異文化理解」につながっていくと考える。子どもたちにとって,最も身近に存在する異文化を持った人,それが家族であり,学校の人である。その人たちのために自分ができることを自分たちなりに考えて取り組むことができたからである。
 本実践後,放課後や休み時間「スリッパならべてきたよ」「あ,今日は僕はまだ花を見に行ってない,この前○○さんのは花が咲きかけていたけどどうなってるかな。咲いてたら教えてやろう。」など,学級園や花壇などへ足を運び,気づいことや自分がしたことを話しにくるようになった。子どもたちの実践は今も続ている。
 この意識をさらに広げていくことで,色々な人と協力・協調できる子どもの育成が図られるのではないかと考える。


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