1年
子どもたちは『 トトロのようだ 』と感嘆の声を上げた!!        
〜1年単元「あきに  なったね  きもちが  いいね」より〜      
茨城県日立市立塙山小学校
鈴木 知子
地域の特性を生かし児童の可能性を引き出す支援をするには
〜 児童の思いや願いを生かし,楽しく学びを深め,意欲を育てる指導法 〜

■ 授業実践に向けて
はじめに
   学校にも椎の木はあるが,どんぐりの大きさや色の違いに気付き,塙山第四児童公園で子どもたちは夢中になってどんぐりを拾い集めた。

 また,自然に落ちたどんぐりが地中に根を張り,芽も出ているのを発見した子どもたちは,口々に『トトロのようだ』と感嘆の声を上げた。植物の根っこを縄跳びがわりにしたり木登りをしたりする姿は,縄文時代の子どもの遊びとも違わないのではないかと思えたほどだ。

 ただ,小木津山自然公園の活動の中で気になったことは,多くの子どもたちが芝すべりやがけのぼりなどをして大胆に遊んでいたり,今まで見たことのない蜘蛛や冬支度を始めた蛙探しに夢中になっていたりする中,かれらの傍らで一人で散歩をして,ほかの子どもたちとかかわれず,遊べない子がみられたことである。

   教師の予想を超えたことは,「2年生の秋祭り」に招待され遊んできただけに見えた1年生が,とてもたくさんの事に気付いて学びを深め,「自分たちも」という意欲をもらってきたことである。

 遊び,手作りの物,品物の並べ方,呼びかけの声,服装・・・・,そして,上級生に優しくされたことが自分もやってみたいという意欲につながっていった。どこのお店でも,上級生が笑顔で優しく声をかけてくれたことや,お絵かきコーナーでは自分たちが描くための見本となるような絵も飾られていたことなど,大人になると気付かないで見過ごしてしまいがちな子どもの気付きがそこにあった。「みつけカード」に書かれたその気付きこそ,私たち教師が見取り,新たな活動へと導いていかなければならない。

 現在,自然体験の不足している子どもたちに,地域の特性を生かし,生き生きとした体験をさせることで,子どもたちの可能性を引き出したいという願いから本実践を行った。

■ 主題設定の理由
児童の実態から
   本校は,造成した高台の住宅地の中にあり,校地には「自然の森」と呼ばれる場所もある。地区は,地元の住民より,団地造成によりほかの地域から移ってきた住民が多いという特徴をもつ。また,アパートも多く,児童はいろいろな幼稚園や保育園から入学してきている。

 本年度入学した児童の家庭は共働きが多く,日常的に親と共に身近な自然に触れることは難しい児童が多い。また,女子の中には「生き物が苦手だ」という児童もいる。このような実態から本校においても,本来なすべき児童の体験が不足し,人と人との直接的なかかわりが希薄になってきている。そこで,児童がかかわれる自然を利用した公園での活動において,児童の思いや願いを生かし,主体的に学習に取り組ませることができれば,対象に対して一人一人の創造的な発想や工夫が生まれ,満足感・成就感が実感できるのではないかと考え,本単元を学習指導要領の内容(5)「季節の変化と生活」及び内容(6)「自然や物を使った遊び」にもとづいて構成した。

■  自然体験  ■


        キーワード「 遊び
自然(遊び)から学ぶ。自然(遊び)で学ぶ。自然(遊び)を学ぶ。

■ 本単元の構成
    本単元は,春探検「あそびばへ いこう」で行った校区にある塙山修理公園を,よく知っている自然豊かな公園と位置付け,その続きとしての秋探検として実施した。同じ公園を訪れることは,季節を違えて活動が連続・発展していくことをねらっている。また,いろいろな公園を繰り返し訪れることで,自然環境の季節の変化を身体全体で感じ,友達の輪が広がり自然の中でダイナミックに活動が展開できることを願った。

単元のねらい
 
 自然豊かな公園で遊んだり,秋の自然物や身近にある物を利用して遊ぶ物や飾る物を作ったりするなかで,自然とのかかわりに関心をもつことができる。
 
 公園での遊びを通して,友達と遊び方を考えたり情報を交換したりしながら友達とのかかわりを広げ,活動の楽しさや満足感・成就感を自分なりの方法で,表現することができる。
 
 工夫しながら遊ぶ物を作ったり遊び方を考えたりする活動を通して,遊びの楽しさに気付くとともに,友達とかかわって活動することの楽しさやそのような遊びを楽しむことのできた自分自身の成長に気付くことができる。

育てたい児童の力
   本単元では,活動を通して児童に,(1)動植物の季節による変化とそれぞれの特徴に気付き,自然物を観察する力,(2)友達とかかわりながらいろいろな公園で遊ぶ中で,それぞれの場での遊び方を考え,気付いたことや楽しかったことを表現する力,(3)自然物を使って工夫しながら遊ぶものを作ったり遊び方を考えたりする力を育てたいと願い,単元「あきに なったね きもちが いいね」を地域の特性を生かして活動できるように構成した。

単元計画
  主な学習活動 他教科との関連 子どもの意識の流れ
出会い (ふれる) 【春】
はなやましょうがっこうには,
なにがあるかな?
校庭を探検しよう。
校庭の木,花壇,遊具,生き物
「自然の森」
ちかくのこうえんにいってみよう
塙山修理公園に行こう。(探検[1])
手作りの道具をもったよ
池の生き物,木や花
原っぱで遊ぼう。
国語
たんけんしたよ,
みつけたよ



算数
じゅんばん



3年 理科
季節と生き物

花がきれいだね。
いろいろな木があるんだね。
ツバメがいたよ。


池にはおたまじゃくしがいっぱいだ。
ザリガニもいるかな。
飼ってみたいなあ。
アジサイの花が咲いているよ。
活動する 【秋】自然の中で楽しもう。
はるのようすとくらべてみよう
なにをしてあそぼうかな?
塙山修理公園に行こう。(探検[2])
いろいろな公園に行ってみよう。
塙山第四児童公園
どんぐりがいっぱい
日立小木津山自然公園
バスに乗って行こう
あそぼう!! つくろう!!
自然物を使って作ってみよう。
どんぐりごま,やじろべえ
マラカス,でんでん太鼓,けんだま
ペンダント,ネックレス,ブレスレット
リース,フクロウ・射的など
あきまつりをしよう
2年生のお祭りに招待されたよ。
2年生に教えてもらったよ
おうちの人やおせわになった人におれいをしよう
自然のものを使ってしおりを作ろう。
いつもありがとう
ようちえんやほいくえんの子がきたら,いっしょにあそぼう
なにをしてあげようかな。
種のプレゼント(アサガオ・ひまわり)
算数
10より おおきいかず

国語
いろいろな くちばし










道徳
葉っぱのフレンディ










国語
てがみを かこう
しらせたいな,
みせたいな






池の水が少なくなっているよ。
草も倒れているね。
どんぐりの芽が出ているよ!!
芝滑り,楽しいなあ。
カエルがいるよ。
あれは何?


初めてどんぐりに穴をあけたよ。難しいね。
どうしたらいいんだろう。
もっと,遠くへとばしたいな。


じょうずだったね。
あんなふうにすればいいんだね。


だれにあげよう。
喜んでくれるかな。


教えてあげるよ。一緒に遊ぼう。
大切に育ててね。
表現する
広げる

■ 活動の実際
<基礎体験>学校・公園での自由遊び<体験の繰り返し>季節による変化・自然発見 遊びの工夫・仲間作り<活動の広がり>自然物を使って遊ぶ物を作る 他社へのプレゼント


共通体験としての自然体験(生活科)
■学校・校区の公園【春】

家の人に作ってもらった網や釣竿を持って,塙山修理公園に行きました。池や原っぱで泥だらけになって生き物を探しました。
■校区の公園【秋】
小木津山自然公園■

いろいろな公園に行って思いっきり遊びました。自然の変化や不思議を発見しました。
■遊ぼう!作ろう!■

自然物を使って遊ぶ物や飾る物を作りました。2年生のお祭りに招待され,工夫していることに気付きました。

気付き体験・追究・交流学ぶから新たな活動へ

遊びの工夫友達とのかかわり
意欲の高まり他者への働きかけ

■ 実践を振り返って

 今の子どもたちは,友達とのかかわり方の経験不足のためか,少人数でしか遊べなかったり,自己中心的なため些細なことでトラブルになってしまったりすることが多い。そこで,私は,自然の中で遊びにひたらせることや大人数で学習を進めることが友人とのかかわり方の改善に役立つと考え,授業に取り組んだ。

遊びとは?
本来,子どもにとっての遊びとは,大人が学びを期待したり求めたりしてはいけないものである。
自然体験

交流
【自然】
さあ,出かけよう。
見つけたよ。飼いたいな。
落ち葉や木の実で遊ぼう。
切れちゃって痛かったな。
人とのかかわり


【人】
みんなで行ってみよう。
一緒に遊ぼう。
工夫して,作ろう。
プレゼントしよう。
困ったな。悲しかったよ。
学習(価値のある学び) 大切な気付き


 春と秋の違う季節に2度,塙山修理公園で自然に触れることで,秋に紅葉するものはあまり見られない公園であっても,生き物が変化し季節に合った過ごし方をしていることに気付いた児童が多く見られ,春には生き物とりに夢中だった池を中心とした活動だったものが,秋には原っぱの草を利用して遊ぶ姿が多く見られた。団地にある塙山第四児童公園には初めて行った児童もいたので,前とは違った学区探検の様相もあり楽しみながら探検し,高台から太平洋や市街地も見ることができた。「夏はいつも途中の公園で水を飲んで休んでから帰るんだよ。」なんていううち明け話も聞かせてもらった。

 お世話になっている2年生や家族,給食のおばさん,用務員さん,校長先生,教頭先生・・・に,葉っぱや押し花などを挟んで作ったしおりをプレゼントしたが,給食のおばさんから絵手紙をお礼にいただいたことで,さらに交流が深まっていった。「いいなあ,あげればよかった。」友達がもらったのを見て,手紙のやりとりのよさに気付いた子がでてきた。

 「おいもは,とてもおいしかったです。ぼくもおいしいおいもをつくるよ。がんばるよ。」「わたしは,わたあめのわたがすごいとおもいました。わたとわりばしがつくとはおもいませんでした。」「しゃてきは,一ぱつも100てんぜんぜんあたらなかったけど,かみひこうきもらったからうれしかったです。」「わたしはビーズのお店がきれいでいっぱいかいました。わたしも2年生になったらじょうずにできることをめざしてがんばります。」

 2年生では,どんな生活科がまっているのか 今から楽しみです。

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