私の実践・私の工夫(生活科)

1年
『ともだちいっぱいほしいな』              
栃木県宇都宮市立峰小学校
寺内 照子
1.実践にあたって

 本校は,宇都宮市の駅東側に位置し,商店街や住宅地が広がる落ち着いた地域である。児童数約500名の中規模校で,素直で明るく穏やかな雰囲気をもっている。

 今年も1年生80名が入学した。入学して間もない児童たちは,学校の中の新しいものや人に対して強い好奇心をもつと同時に学校生活への不安や戸惑いを感じている。1年生の不安を取り除くために,全校生での「1年生を迎える会」を児童会が主催したり,2年生が学校の中を案内してくれたりした。

 1年生も喜んで参加し,上級生に対して信頼関係が生まれるなどの効果が見られた。しかし,その中での自己紹介の時間に自分の名前がきちんと言えないなど相手に自分のことなどを伝える力は十分ではないと感じた。

 そこで,国語科との関連を図りながら,生活科の「ともだちいっぱい」の単元で,先生たちにきちんと挨拶して自己紹介ができたらサインをもらえるカードを持って1年生だけの学校探検をしたり,授業参観を利用して学校探検などでわかった峰小学校のお気に入りの場所をクイズも入れて友達や家の人に紹介したりする活動を設定した。

 これらの活動を通して学校を支えてくれる人々とのかかわりを深めたり,場所に愛着をもつようにしたりすると同時に,自分の考えをもち相手にそれを伝えようとする力を育てたいと考えた。

2.単元名  ともだちいっぱいほしいな

3.単元の目標

  (1) 学校において楽しく遊んだり生活したりしようとする。
 
  (2) 学校の生活を支えている人々や友達のことが分かって積極的にかかわったり,学校での出来事を身近な人に話したりできる。
 
  (3) 学校の施設の様子や学校の生活を支えている人々の様子に気付く。

4.単元の展開構想(全16時間)

  (1) ともだちとあそぼう (3時間)
 
  (2) がっこうのたんけんをしよう (7時間)
 
  (3) がっこうのまわりをあるこう (4時間)
 
  (4) たのしかったことをはなそう (2時間)


5.活動の実際

  (1) がっこうのたんけんをしよう
 
 最初は2年生に案内してもらって学校の中を探検したが,そのとき見てきた場所を発表しあうと「○○さんが見てきた教室おもしろそう。私も行ってみたい。」などさらに調べたい教室などが出てきた。

 今度は1年生だけ探検に出かけることにした。2年生に案内してもらった場所でもっとくわしく調べたい所や,新しく見てきたい所をグループで相談し,簡単な計画や約束を決めた。教師からも「今度の探検の時は,前よりも多くの先生に挨拶したり,自己紹介したりできるといいね。」と働きかけ,下記のようなカードを用意した。


 児童たちは,意欲的にさまざまな教室を訪問し,先生たちと話してサインをもらったり,教室を見て自分たちの教室との違いに気付いたりすることができた。見てきた後発見カードに気付いたことを書いたが,「みつけたよ」というカードだけでなく,「おもしろいな」「ふしぎだな」という表題のカードも用意し,多様な発見に対応できるようにした。


(2) たのしかったことをはなそう
 
 校舎の中や外,学校周辺などを見て回った後,今まで自分の見た中でお気に入りの場所を「峰小のお気に入り発表会」として授業参観を利用して家の人や友達に伝える活動を行った。お気に入りの場所で撮った写真を見せながら,どうしてそこが気に入ったのか,グループごとに説明した。

 飽きないで聞いてもらえるよう場所ごとにクイズも考え,家の人にも答えてもらった。クイズを事前に考えたとき,なかなか思いつかない児童には,国語の教材の説明文に見られる問いかけの文章を参考にさせた。また,発表に対して消極的になりがちの児童もいるため,今回の発表の話し方について朝の会のスピーチでも扱い,慣れて自信がもてるようにした。


 家の人に聞いてもらえることから,ふだん以上に児童たちははりきって発表に取り組んだ。保護者の方も,「児童が学校に親しみをもっている様子をみて安心した。」「保育園時代は,人前に出て話すのを嫌がったのに成長した。」との感想を寄せてくれた。

6.成果(○) と課題(●)

   カード等を工夫することにより,児童たちは意欲的に学校探検で課題に取り組むことができた。また,事前に教師同士の共通理解を図り,1年生の児童に適切に対応したことで,人とのかかわりを深めることができた。相手に親しみをもつことで,1年生なりに自分のことを相手に伝えやすくなり,伝える力を育むことができた。
 
 国語科との関連を図ったことにより,授業時間を効率的に使って効果をあげることができた。
 
 児童が意欲的に表現したいをいう気持ちをもつためには,感動を伴う豊かな体験を児童の思いをもとに設定し,その中で教師が適切な支援を行わなくてはいけない。さらに学校探検のやり方など工夫していく必要がある。
 
 国語との関連を図りながらも生活科としてのねらいを見失わないようにしなければならないと思う。

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