3年

「豊かな量感を身に付ける指導の在り方」
〜長い長さの実践を通して〜

佐賀県有田町立有田小学校
小柳 英樹

1.はじめに

この領域のねらいは,量感を豊かにすることである。ここでいう量感とは,量のだいたいの大きさが分かったり,測定器具や測定単位を選択したりする等の力と考える。

ところで,平成20年度全国学力・学習状況調査によると,「(2)約150㎠の面積のものを選ぶ」問いでは,平均正答率は17.8%であった。面積150㎠という計算はできても,いわゆる150㎠という量感は育まれていないのではないかと考える。そこで量感を豊かにする指導の在り方を探ろうと考えた。

2.量感を育むためのポイント

(1)作業的・体験的な算数的活動の工夫

単元を通して,作業的・体験的な算数的活動を位置づけることにより,より実感を伴った豊かな量感が育まれると考える。今回,特に重視したいのは,@「測定器具の特徴を探る」 A「測定器具のよさを実感する」 B「基準量を身につける」
の3つである。

(2)自分の考えを言葉や図等で表現するノートづくりの充実

作業的・体験的な算数的活動で気づいたこと,考えたこと等をノートに記述することで,より確かな量感が育まれると考える。

(3)考えを深めるがばいタイム(学び合い活動)の位置づけ

友だちと考えを交流し,自分の考えを確固たるものにしたり課題を解決したりするために,がばいタイムを位置づける。活動と思考をリンクすることでより豊かで確かな量感が育まれると考える。

3.単元の目標

長さの単位kmについて知り,簡単な場合の道のりなどの計算ができる。

○計器のよさに関心をもち,kmの単位で身のまわりの長さを測定しようとする。(関心・意欲・態度)

○長さの普遍単位(km)の必要性を考えることができる。(数学的な考え方)

○道のりを長さの単位を使って表したり,巻き尺を使って測定したりできる。(表現・処理)

○kmについて知り,巻き尺のしくみや使い方が分かる。(知識・理解)

4.指導計画

第一次・・「長い長さ」(5時間)

(1)ものさしの不便さを体感し,巻き尺で測ることの便利さ,よさを実感する。

(2)巻き尺の用途とそのよさを実感するために,前時のものさしと比較する。

(3)がばいタイムを通して,測定したことをもとに計器選択,巻き尺のよさを理解する。

(4)mよりも長い距離(道のり)を測る単位にkm(一番大きい単位)があることを理解する。

(5)1kmを歩くことで,時間的,距離的な量感をつかむ。

第二次・・「習熟」(2時間)

(1)10mを歩き,自分の歩幅の何歩分かを理解する。

(2)2mものさしを作り,生活の中で長さを体感する。

5.授業の実際

(1)作業的・体験的な算数的活動の工夫

@「測定器具の特徴を探る算数的活動」

ものさしと比較する学習を設定し,巻き尺の特徴を知る(調べる)学習を仕組んだ。

「ものさしと違い,5cm,10cmの印がない。」や「スタートの0の位置が巻き尺によって違う。」を探った。改めて,特徴を知り,さらに巻き尺のよさについても知ることができた。

A「測定器具のよさを実感する算数的活動」

木の幹周り(写真1,2)等の測定を通して,ものさしの限界(曲がらない,誤差が大きい等)を知り,それに伴い,巻き尺のよさ(測定の正確さ,手間がいらないこと等)を感じ取っていた。

【写真1―ものさしによる測定】【写真2―巻き尺による測定】

B「基準量を身につける算数的活動」

おおよその量の大きさを予測する際に,身近なもので基準量を持っておくと見当づけがしやすい。また基準量を持っていれば,見当した量と,実際の測定値の誤差が少なくなると考える。

自分の一歩の歩幅(写真3),両手を広げた長さ(写真4)の測定を行った。

【写真3―自分の一歩の歩幅】【写真4―両手を広げた長さ】

(2)ノートづくりの充実

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【資料1―算数ノート】【資料2―算数日記】

まきじゃくは長い長さがはかれる」 (資料1),「ふつうのものさしははかりにくいところがあったけど,・・(後略)・・」(資料2)等の表現から,ものさしと比較した巻き尺のよさを自分のノートに記述することができている。子どもたちの胸にすとんと落ちていることが分かる。ノートに記録することは,理解の程度を知る上で大変有効であった。

(3)がばいタイムの位置づけ

【写真5―がばいタイムの様子】

作業の手順,測定器具の選択,使い方等々,たくさんの課題がある。そこで,今,自分がどのような課題に直面しているのかを言葉で表現することにより,課題解決への道筋が見えてきたり,よりよい考えをアドバイスしてもらったりすることができる。ペアまたはグループで協議したことや,活動した中で気づいたこと等を全体の場に出すことにより,さらによりよい考えや,知ることのない考えに出合い,考えが深まっていった。

単元終了後,全体を通して学び合いができたかどうか(21名,100%),また学び合いが必要であったかどうか(19名,95%)を尋ねたところ,ほとんどの子どもたちががばいタイムの重要性を感じている。

6.まとめ

豊かな量感を育むために,(1)作業的・体験的な算数的活動の工夫,(2)自分の考えを言葉や図等で表現するノートづくりの充実,(3)考えを深め,学び合うがばいタイムの位置づけを意識して取り組んできた。子どもたちに豊かな量感が身に付いたかを実態,意識調査をもとに振り返ろうと考える。

【表1―平均通過率】

単元名学習前
(事前調査)
学習直後
(事後調査)
数ヵ月後
(剥落調査)
「長い長さ」69.7%
(H21.10.9実施)
80.4%
(H21.11.12実施)
82.7%
(H22.3.23実施)

【表2―量感を問う問題の平均通過率】(一部抜粋)

調査問題学習前学習直後数ヵ月後
 教室の横の長さは? (測定単位の選択)76.2%
(16名)
90.5%
(19名)
95.2%
(20名)
 体育館の横の長さ (〃)76.2%
(16名)
85.7%
(18名)
100%
(21名)
 木の幹周り (〃)57.1%
(12名)
85.7%
(18名)
100%
(21名)

【表3―学習後の子どもたちの意識】(一部抜粋)

質問項目「長い長さ」
 1 友だちと学び合いはできましたか。100%(21名)
 2 測定器具のよさが分かりましたか。100%(21名)
 3 測定器具の読み方が分かりましたか。95.2%(20名)

《成果》

(1)単元を通して,特に「測定器具の特徴を探る」「測定器具のよさを実感する」「基準量を身につける」作業的・体験的な算数的活動を位置づけたことにより,実感を伴って量感が身に付いた。

(2)ノート指導を徹底したことで,考えをまとめたり,説明したり,活動を振り返ったりすることができ,より深い理解へつながった。

(3)「ものさしはいくつも継ぎ足さなければならないので,面倒だ。」等,算数的活動をする中で,友だちと学び合いをしながら,考えを確固たるものにしていった。

以上のことから,「(1)作業的・体験的な算数的活動の工夫」「(2)自分の考えを表現するノートづくり」「(3)考えを深め,学び合うがばいタイム」は,量感を育む上で,とても有効な手立てであった。このように活動と思考をリンクすることにより,より豊かな量感が育まれる。

《課題》

・意図した算数的活動を仕組むには,用途に応じた測定器具を用意することに限界がある。

・作業的・体験的な算数的活動、ノート記録、がばいタイムを位置づけるには時間の保障が必要である。

参考文献 「小学校学習指導要領解説 算数編」 平成20年8月 文部科学省


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