4年

1けたでわるわり算の筆算

埼玉県川口市立新郷小学校
田中 健一

1.はじめに

児童の実態を見るに,表現処理の問題としては解決していけるが,その表現処理の技能を活用して,未知の問題や発展問題に取り組んでいけるという児童は少ない。算数科における基礎・基本の力とは,表現処理の問題として解けることではなく,表現処理の技能を以降の学習に活用していく力であると考える。

表現処理の問題としての代表選手に筆算があげられる。しかし,習った桁数に関しては問題なく解けるが,未習の桁数に対しては,うまく活用しきれていないという児童もいる。筆算はあくまで表現処理を助けるための手立ての一つであるとの視点に立ち,自分の力で筆算をまとめるという経験を積ませることを大切に指導した。

2.教材観

本単元では,除数が1位数の場合で被除数が九九適用の範囲を超えて大きくなったときの除法について学習をする。まず,被除数が九九適用の範囲を超えていても,九九適用の除法計算が活用できることに気付かせる。その後,2位数÷1位数で商が2位数になる場合の計算において筆算形式を導入し,除法の筆算形式による計算を理解する。除数が1位数の場合の計算に習熟し,暗算で計算ができるところまで高める。

本単元では次の3点について特に習熟させておきたい。

@「筆算形式の定着」
A「筆算形式の意味理解」
B「暗算による処理」
たてる・かける・ひく・おろすのリズムを獲得させ,反復練習により習熟をはかる。 単元の導入部においてわり算の意味理解が容易な等分除の問題の解決に重点をおき,実際に分けた場合と筆算形式のそれぞれの手順とを一致させていく。 被除数が何百(何十)の場合を中心にフラッシュカードなどで習熟させていく。

これらの技能や考え方はこれからの除数が2桁になった場合や小数のわり算を考えていく上での基礎・基本となっていく。「暗算による処理」は仮商をたてる際の必須技能であるとともに,答えを見積もる力ともなるため,是非とも見につけさせておきたい。

3.単元の目標

2〜3位数÷1位数の計算のしかたを,既習の除法計算をもとに進んで考えようとする。【関心・意欲・態度】
2位数÷1位数の筆算は上位から位ごとに計算を進めていくことや,3位数÷1位数の筆算は既習の筆算と同じ考え方でできることを筋道立てて説明することができる。【数学的な考え方】
2〜3位数÷1位数の計算を筆算で確実にできる。【表現・処理】
1位数でわって商が2位数になる除法の暗算をすることができる。【表現・処理】
2〜3位数÷1位数の筆算のしかたを理解する。【知識・理解】

4.指導計画

第1次除数が1位数で首位に商がたつ筆算E(本時5/6)
第2次除数が1位数で首位に商がたたない筆算C
第3次倍の計算A
第4次暗算@

5.指導の実際

<問題と課題の把握>
734まいの色紙を,5人で同じ数ずつ分けます。1人ぶんは何まいになって,何まいあまりますか。
 
3ケタ÷1ケタの筆算を考えよう
100の束7つ,10の束3つ,1のバラを4つ黒板に掲示し,問題把握に役立てる。
T:どのような式になりますか。
C:734÷5です。
T:今までの問題と違うところはありますか。
C:わられる数が百の位まである。
<答えの見積もりと解決の見通しをもつ>
T:答えはどれくらいになりそうですか。
C:100〜200の間です。
T:どうして?
C:1人100まいだと500まいですむし,1人200まいだと1000まい必要になるからです。
T:どうやったら解けそうですか。
C:筆算を使います。
C:百の位に商をたてられると思う。
<自力解決をする>
通常の筆算形式による解決である。こういった児童は,筆算の手順の理解が十分であるので,途中の積の意味や量,数をおろしたことの意味などを問い,筆算形式の意味理解を強化する。
〔C1〕
17人/33人
おろしたときに一の位まで全ておろして処理をしている。こういった児童は,234と20の段のところに着目させ,もっと簡便に筆算する方法を問い,筆算手順の習得につなげていく。
〔C2〕
19人/33人

    
非形式の筆算による解決である。こういった児童は,筆算の意味理解が十分であるので,もっと簡便に筆算する方法を問い,筆算手順の習得につなげていく。
〔C3〕
6人/33人
<比較検討>
T:それぞれの筆算のちがいはどこですか。
C:〔C3〕の筆算はたてに長い。
C:〔C1〕と〔C2〕は似ている。
C:〔C2〕はおろすときに一の位までまとめておろしている。
T:まず,〔C3〕についてだけど,この筆算はなんでこんなにたてに長いの?
C:商を上に書いているから。
C:位ごとに商を分けて計算している。
C:かけたあとの500とか200とかは分かりやすい。
C:商の100とか40の0は書かないで,146と書いていける。
C:52÷4のときも50と2で分けて計算したけど,52とそろえて書いた。
T:〔C1〕の23と〔C2〕の234は何が違うの?
C:500まい配った残りは234まいだから,234と書いた方が良い。
=児童納得の様子=
T:それなら5×1=5のところは500って書かないの?
C:0はあたまで考えればいいから,書かなくてもいいと思う。
<「ふ〜ん」と言いながら5×4=20を指す>
C:十の束が20の20だから,一の位はまだいらないと思います。
C:[十の束23]−[十の束20]という〔C1〕のやり方も良いと思う。
<各自のまとめ,本時のまとめ>
T:話合いをもとに,位ごとの計算の意味がわかりやすい筆算と,宿題でやるのに便利な筆算についてまとめましょう。
T:いろいろな筆算のやり方がありました。また,それぞれの筆算の形について,よく考えられました。いろいろな筆算の方法があることを知ることができましたね。学校では順番におろしていく〔C1〕の筆算を勉強していきます。

6.成果と課題

この単元終了後の学習感想に,わられる数の位が増えても筆算ができると書いた児童が多かった。さらに,自分でまとめる活動を継続していったことで,比較検討時に,大切な意見や重要な考え方を意識して聞けるようになった。
自分でまとめる視点を明確にあたえられなかったため,「筆算の手順の意味」をまとめるのか「筆算の手順」をまとめるのかが,あいまいになってしまった。

考文献:新しい算数(東京書籍)


前へ
次へ


閉じる