4年

商を見積もって「習ったわり算」を活用していく授業
〜 4年「2けたでわるわり算の筆算」の実践を通して 〜   
岡山大学教育学部附属小学校
片山 元

1.単元名 2けたでわるわり算の筆算


2.単元の目標

商が2位数になる除法の筆算の仕方を進んで考えようとする。(関心・意欲・態度)
商が1位数の除法を使って, 商が2位数になる除法の筆算の仕方を考えることができる。(数学的な考え方)
2位数でわる筆算がはやく, 正確にできる。(表現・処理)
2位数でわる筆算の計算の仕方がわかる。(知識・理解)


3.単元の構想(全11時間)と本時の位置付け

  第1次   何十でわるわり算(2時間)
第2次   わり算の筆算(4時間)
   
第1時   (2位数)÷(2位数)の筆算
第2時   (3位数)÷(2位数)で商が1位数になる筆算(本時)
第3時   (2, 3位数)÷(2位数)で, 仮商を修正して商を求める筆算
第4時   練習
第3次   商が2位数になる筆算(1時間)
第4次   わり算の性質(3時間)
第5次   電卓を使ったわり算(1時間)


4.指導上の立場

「活用する力」を育てるための活動の工夫・支援
  1 数の相対的な見方を活用
    (10を単位と見る指導の工夫)

 前単元の「およその数」で習得した概数処理のよさを想起させ, 四捨五入した被除数と除数をもとに商を見当づけたり, 頭の位の数に着目し, 10を単位とした大きなまとまりの数で見当づけたりするよう指導していく。本時では, わり算の商を見当づけるのに, 10を単位として考え, 九九を用いながら考える活動場面を設定する。10の単位をとらえやすくするために「10円模型」を活用する。「10円模型」を使って商が見当づけできたところで筆算のアルゴリズムを習得するようにする。

 このような, 数の相対的な見方を活用する学習は, 例えば 318 ÷ 52 を十の位までの概数に四捨五入して 320 ÷ 50 として結果を見通したり, 頭の位の10を単位として 310 を 31, 50 を5として考えるなど, 数や計算に対する豊かな感覚を育むことにもつながると考える。


  2 習ったわり算の筆算の仕方を活用
    (手順を書く指導の工夫)

 単元の導入から, 自分の商の見積もりの仕方や筆算の仕方を整理できるようにワークシートを用いる。ワークシートの吹き出しに,「まず, 次に, 最後に」といった言葉を用いて筆算の仕方の手順を書かせることにより自らの考えを筋道だてて整理することができるようにする。ワークシートの吹き出しを振り返ることは, 商の見積もりの仕方や筆算の仕方のつまずきに気付いたり, 自分の考えを修正したりするために有効であると考える。


5.本時案 (第2次 第2時)

目 標  10を単位にして, そのいくつ分かを考え九九を使うことで商の見当づけをしたり, (2位数)÷(1位数)などの「習った筆算」を使ったりして, (3位数)÷(2位数)の筆算をすることができる。
学 習 活 動 指 導 上 の 留 意 点 評 価
     
問  題
       
 問題を知り,本時のめあてをつかむ。
             
 よう子さんは 175 円を持って買い物に行きました。1つ 35 円のあめをできるだけたくさん買おうと思います。あめはいくつ買えますか。
     
     
 
175 ÷ 35 と立式したところで, 前時の問題と違うところ(被除数が3位数)や似ているところ(除数が2位数)を話し合うことで, 筆算の場面であることに気付くようにする。
175 ÷ 35 の商の位置は一の位になることがはっきりしないときには, 手隠し法で確かめるようにする。
175 円を 17 枚の「10 円模型」で表すことで,10を単位にして商を見当づければよいことに気付かせ, 本時のめあてとするようにする。
 
     
 
175 ÷ 35 の筆算のしかたを考えよう。
   
     
 175 ÷ 35 の筆算の仕方を考える。
前時の活動を想起したり, 175 ÷ 35 の計算の難しさを話し合ったりすることから, 商の見当づけができにくい児童には,「10円模型」を使って10を単位として, そのいくつ分かを考え, 商の見当づけをするよう助言する。
175 と 35 の見積もりの仕方や筆算の仕方等, 自分の考えを整理しやすいようにワークシートを用意する。
ワークシートの吹き出しには, 商の見積もりと筆算の仕方の手順を書くように助言する。
【数学的な考え方】
B:ワークシートの吹き出しに商の見積もりと筆算の仕方の手順を書くことができる。
(ワークシート・様子)
     
      期待する子どもの姿    
         
 
(商の見積もりの仕方) (筆算) (筆算の仕方の手順)
175 ÷ 35
 ↓  ↓
170 ÷ 30
 ↓  ↓
 17  ÷  3
  5
35 ) 175
  175
  0
   
まず,
17 ÷ 3 と見当づけて, 5をたてる。

次に,
35×5=175と, かける。

最後に,
175−175=0と, ひく。
 
     
     
 
筆算のアルゴリズムを忘れたり間違ったりしている児童には,(2, 3位数)÷(1位数)の学習に振り返り, ワークシートの吹き出しに「たてる→かける→ひく」の筆算のアルゴリズムを書かせたり, 復唱させたりして指導する。
早くできた児童には, 見積もりの仕方や筆算の仕方を「まず, 次に, 最後に」という言葉を使って, 筋道を立てた説明文ができるよう助言する。
 
     
 175 ÷ 35 の筆算の仕方を話し合う。
見当をつけた商を「たてる→かける→ひく」という筆算のアルゴリズムを確かめてから, 筆算を行うようにする。
商を5と立ててよい理由を「10 円模型」を使って説明させるようにする。
話し合いをする中で, 被除数が3位数の場合でも前時と同様に,「10 を単位にして, そのいくつ分かを考えれば, 九九が使えて簡単に商が見当づけられること」に気付かせるようにする。
「486 ÷ 54」などの適用題を考え, 言葉で説明させることで, 学習したことが「いつでも使える」ことを確認できるようにする。
【数学的な考え方】
A:商を見積もって「習ったわり算」を使えば簡単に計算することができる, といった「活用するよさ」に気付くことができる。
(ノート・発表)
 本時のまとめをする。
商の見当づけや筆算の仕方について, 10 を単位にしたり,(2位数)÷(1位数)などの「習った筆算」を使ったりすると簡単にできることを振り返り, 本時のまとめをする。
 
     



6.授業の考察

1 数の相対的な見方の活用(10を単位と見る指導の工夫)について

 児童は, 175円を「10円玉が17個」, 35円を「10円玉が3個」と10を単位とした大きなまとまりの数でとらえ, 10円模型を3つずつのかたまりに分ける操作をしながら商の見当づけを行っていた。10を単位として見ることにより, (3位数)÷(2位数)のわり算の場合でも, 商の見積もりが簡単にでき, 大きく見当がはずれることなくわり算の筆算を進めていくことができたと考える。

 また, 次時の「仮商を修正して商を求める筆算」の授業場面において この商の見当づけの仕方を活用する姿が見られた。


2 習ったわり算の筆算の仕方の活用(手順を書く指導の工夫)について

 本時では, 既習の筆算のアルゴリズムを復唱させて確認すると共に, 「まず, 次に, 最後に」という言葉を用いてワークシートに書かせる活動を取り入れた。児童は筆算の仕方を書いたり復唱したりすることで, 「被除数が3位数になってもこれまでと同様な筆算の仕方でわり進めることができる」ことに気付いていった。また, 手順を一度書くことで, 商の見積もりの仕方や筆算の仕方のつまずきを修正する姿も見られた。

 ワークシートの記述をもとに筆算の仕方を発表させることは, 自分の考えを筋道だてて説明する力を育成することにもつながるものと考える。


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