5年
楽しみながら意欲的に追究する    
算数の授業構想と教師支援のあり方    
〜「合同な形」の指導を通して〜    
愛知県A小学校
1.はじめに

 高学年の子どもたちに「好きな教科は?」と聞くと,「体育」と答える子どもがとても多い。算数はというとなかなか「好きな教科」に入ってこない子どもたちがかなりいるようである。体育がなぜ好きかと考えてみると,第一に「活動できること」があげられる。

 じっくりと落ち着いて物事を考えることももちろん大切であるが,活動しながら学ぶ楽しさに比べたら持続性は少ないだろう。第二に「ゲーム性があること」があげられる。勝敗があったり,できなかったことができるようになったりするなどの達成感があることが楽しさを増大させている。

 では,これらのことは算数ではできないことだろうか。今までの授業を振り返ってみても,教科書の問題を順に黒板を使って教えていく授業ではこれらの条件は満たされることは少ないことは明らかである。

2.研究の仮説

 子どもたちの身近な生活の中から「遊び」を発見し,授業に取り入れていく中で,「遊び」を発展させる教師支援を行えば,子どもたちは楽しみながら意欲的に算数的な考え方を身につけていくことができる。

3.研究の方法

 「遊び」ならば何でもいいというわけではない。「遊び」が子どもたちにとって楽しいものでなければ,その「遊び」を授業に取り入れ,発展させたところで追究意欲は生まれてこないからである。そこで,子どもたちの身近な生活の中で興味や関心を高めている「遊び」の発見が大切となってくる。

 「遊び」の発見はいろいろな場面で行われなければならない。子どもたちとする普段の会話の中や子どもたちの書く毎日の日記の内容,放課や授業後の遊びなどによく目を配り「遊び」の情報を収集していくのである。

 一方で,これから学習していく単元の中で「遊び」を取り入れて学習を進めていけそうな単元はないか教材研究を進めていく。

 そして,「遊び」の情報と教材研究を合わせて考えたとき,「遊び」を発展的に扱い追究活動ができるかを見通すのである。



4.単元構想図

拡大図(PDFデータ)が開きます。
※上の図をクリックすると,拡大図(PDFデータ)が開きます。


5.実践と考察

(1)  陣取りゲーム
 パソコンの「えほんらいたー」というソフトを使って陣取りゲームをしていくことにした。

 このソフトは図形のスタンプを自分で作ることができ,作ったスタンプを使って簡単に合同な図形を何枚も画面上に貼っていけるので,ゲームがテンポよく進行しとても楽しい。

 長方形→平行四辺形→台形と進む中で同じ向きのスタンプだけでは敷き詰められないことに気づいた子どもたちは90度回転させたスタンプも作るようになった。こういうスタンプもこのソフトなら簡単に作れるのである。

(2)  台形を敷き詰める場面から
 右の授業記録のC13のところで,台形を敷き詰めていくときに平行四辺形になるように敷き詰めていっていることに気づいたことは,後に学習する台形の面積を求める方法を考えるときに役に立つだろう。

(3)  一般の四角形の敷き詰めから
 一般の四角形の敷き詰めでは,辺の長さにこだわっていて,なかなか解決できないでいた。

 しかし,角にも気をつけなければならないという子どもの気づきをもとに,四角形の4つの角にあ・い・う・えとひらがなを書いて考えてみることにした。


T7 次,台形はどう?
C5
C6
C7
C8
T8 なるほど,こんな並べ方もあるんだね。
C9 すきまがあってもいいの?
T10 どうだろう・・・?
C だめ。ないほうがいい!
C10
T11 台形を見て気づくことは?
C12 くっつけると四角形や五角形になる。
C13 平行四辺形になる。
T12 (台形を2つずつ離して)これもこれも平行四辺形になっているね。

 右の授業記録のように,この四角形だけでなく,台形も平行四辺形も長方形も4つの角が集まっているところは,あ・い・う・えの4種類の角が集まっていることに気づき,四角形の4つの角をたすといつでも360度になっていることを発見した。
T24 これを見て気がつくことは?
C 分かった,分かった。
C27 一部の形を反対にしてくっつけていく。
C28 辺と辺がくっついているときは互い違いの角がくっついている。
C29 4つの角がそろっているときは全部ちがう角だよ。
T25 このように,あ・い・う・えの角をくっつけていけばできるのかな?たまたまできただけかな?じゃあ,この平行四辺形はどうだろう。(平行四辺形にあ・い・う・えを記入)
C じゃあ長方形は?
T26 (長方形もあ・い・う・えを記入)あ・い・う・えが集まるようにつけていけばいいってことかな?
C30 正方形だと全部90度だから簡単。
T27 それで何か分かることないかな?
C31 あ・い・う・えをたすと360度。
T28 どうして360度って分かるの?
C32 正方形,長方形は角が90度だから×4で360度。
T29 四角形というのは,あ・い・う・えの4つの角をたすと360度になっているんだね。すごいね,大発見だね。
T (テレビにつないだパソコンの映像で,今日のまとめをする。)
T30 次は何をやりたい?
C 三角形
C パソコン教室で三角形の陣取りゲームがやりたい。

6.まとめ

 この授業が終わった後の子どもたちは,三角形の内角の和が180度であることも自分たちの力で発見した。そして,五角形もこの前の単元で合同な四角形を書くのに2つの三角形に分けて考えた経験から五角形を四角形と三角形に分けたり,3つの三角形に分けたりして,5つの角の和が540度であることも突き止めた。

 さらに,ノートには書けないような百角形の100個の角の和の求め方まで考えてしまった。パソコンのソフトを使った「合同な図形の陣取りゲーム」による学習は,「遊び」を発展させていくことで楽しく意欲的に追究していこうとする子どもたちを育てることができたと思う。下はその時の子どもの授業日記である。

子どもの算数日記
 今日もみんなで力を合わせて問題を解いていき,五角形の答を出すときは,五角形だったら五角形の5を取り出し,その5から2をひいて3を出し,五角形を三角形に分けて180×3=540ということが分かり,今度からは何角形でもできるようになりました。


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