4年
学ぶ楽しさを感じ,      
主体的に問題解決に取り組ませるための教材開発      

〜4年『面積』の指導を通して〜          
佐賀県鳥栖市立田代小学校
秋山 博
1.はじめに

 現行の学習指導要領(平成10年改訂)の目標の中に「活動の楽しさ」という言葉が新たに書き加えられた。この「活動の楽しさ」とは,様々な算数的活動を通して得られる達成感,成就感や問題解決に当たっての関心・意欲等と捉えることができる。

 そこで,4年『面積』の指導においてゲーム的な要素を取り入れ,児童個々が自分の問題解決の意識を持って楽しみながら学習を進めていけるような教材を仕組み取り組んだ。

2.導入素材について

 本単元では,まず正方形,長方形,複合図形に分割できる図形をもとに2人組の陣取りゲームをさせる。集めた陣地を自由に組み合わせて,児童なりの島を作り,その島が相手より広いかどうか調べていくという課題を設定して,学習を進めていくことにした。

 また,陣地を自由に組み合わせたり,島の名前を考えさせたり,島の旗のマークを考えさせたりして,児童一人一人のもつ個性を生かしながら,楽しく意欲をもって学習を進められようにした。

 図1のような原図(1辺が20cmの正方形の中に18個の図形に区切られたもの)をもとに,2人組で互いにジャンケンをしながら図2の順番に沿って陣地を取っていく。できあがった島の陣地の広さを「面積」の学習を進めていく中で,児童自身が解決しながら明らかにしていった。(陣地を取っていく順番が単元の学習の流れとなる)

  
(1)アとイ(正方形と長方形)

(2)ウとエ(正方形)

(3)オとカ(正方形)

(4)キとク(長方形)

(5)ケとコ(長方形)

(6)サとシ(複合図形)

(7)スとセ(複合図形)

(8)チとツ(凹の形)

(9)タとソ(発展的複合図形)
【図1 陣取りの原図】   【図2 陣地を取っていく順番】

3.本時の指導のねらい(複合図形のサとシの面積を考える)

 本時では,児童1人1人が作った島の陣地の1つとして含まれている複合図形の1つを明らかにすることで,必要感のある意欲のある目的意識を持った活動とした。

 複合図形を提示し,どうすれば面積を求められるか問いかけ,自由な話し合いから長方形に分割すればいいという解決の見通しを持たせる。

 複合図形に補助線を引きながら,いろいろな分割の方法を児童1人1人に考えさせ,そこから,その方法を検証させる。全体の話し合いでは,複合図形でも既習の考えをうまく使えば面積を求めることができ,さらに問題に応じて,簡潔性,合理性等の観点から,解決方法を選択する必要性に気付かせ,1つの方法にこだわることなく,いくつかの方法から解決に合った方法を選択して解決していこうとする能力を培いたい。

4.授業の実際

 (1) 本時の目標

複合図形を前時までの学習を生かして,長方形に分割すればいいことに気付き,数種類の分割を行い,その和や差からその面積を求めることができる。【B規準】

既習の公式を想起して,長方形や正方形に分割して面積を求める方法をいくつか考えようとするとともに,問題に応じて適した方法を選択できる。【A規準】

【B規準】:「おおむね満足できる」  【A規準】:「十分満足できる」

 (2) 本時の展開

  学習活動   教師の指導と支援と児童の反応
教 師 児 童
1.課題を知る。
シの陣地の面積は,どれだけになるか考えよう。
2.解決の方法を考える。 ・複合図形をどうすれば正方形や長方形と同じように,面積を求めることができるでしょうか。

・切り離したり,図形に線を引いたりすれば求められそうだね。

・分ければ面積がわかります。

・線を引いてもいいですか。

・切ってもいいですか。
3.複合図形の面積を調べる。
【個人解決の様子】【発表の準備】
・図に言葉や記号等を記入させ,筋道を立てた説明ができるようにさせる。

・全体から部分を引く方法のヒントカードを用意し,その方法で解決させる。
4.全体で話し合う。 (児童による3つの方法の発表の後)

・この方法に名前をつけましょう。1の方法は何とつけましょうか。

・いい名前ですね。


・このやり方で他のも名前をつけましょう。




・たてに線を引いたので「たてくぎり」がいいと思います。

・2の方法はよこに線を引いたので「よこくぎり」です。

・3の方法はたして区切るので「たしくぎり」です。
方法1
「たてくぎり」
方法2
「よこくぎり」
方法3
「たしくぎり」
・こんな図形では,どの方法がいいのかな。






・形によって3つの方法を使い分けていくと簡単にはやく面積を求められそうですね。

・サの面積を求めてシと比べてみましょう。
・アは,「たしくぎり」が簡単です。

・イの形は,「よこくぎり」や「たてくぎり」でもできるけど,「たしくぎり」が簡単です。

・ウの形は,ぜったい「たしくぎり」が簡単です。
5.練習する。 ・実は,もう1つ方法がありました。このやり方がわかったら先生に教えてください。
・授業終了後に数名の児童が早速黒板のところに集まり,やり方を考えていた。

 (あ) 8×4=32

 (い) 6×3=18

 ? 3×4=12

(32+18)−12=38

 こたえ   38cm2


【教師が提示した方法を考えている児童達】

 (3) 授業を終えて

 単元終了後の感想を自由記述で書かせた。(児童数38名)集計結果(図3参照)を見ると,面積の学習の導入として,2人組でジャンケンをして,陣取り→島を作る→島を構成する図形の面積を調べるといった一連の活動が,児童の興味や関心につながったと言える。やはり,児童自身で島の面積を明らかにさせたとことが,「面積」の理解を確かなものにし,児童の主体的な活動につながったと言える。また,様々な解決方法を取り上げ,話し合わせたことで,本来の算数の楽しさやおもしろさを感じたのではないだろうか。


【図3 単元終了後児童の感想】

5.おわりに

 今回の実践で,ゲーム的な要素(陣取り)を取り入れたことは,児童の活動の意欲を喚起させ,主体的な活動を促す上で有効であった。また,各方法の名前を児童自身に考えさせた。授業後もこの名前が定着し,その他の複合図形の解決に効果をあげた。やはり児童の主体的な活動を促す上でも,児童の発想をもとに学習を展開していくことが今後も必要である。

 授業の終了間際に発展的な取扱いとして,教師からもう1つの方法を提示した。興味関心のある児童は,すぐにやって来て図と式を見比べながら,どのような方法で解決に至っているか友達同士で話し合っていた。方法がわかった児童は,得意気に教師や他の児童に報告していた。

 このような取扱いは,算数の見方や考え方を広げたり,深めたりするのに有効であるし,算数の持つ,本質的な楽しさを味わわせるよい手立てではないだろうか。

・形によってたてくぎり,よこくぎり,たしくぎりを決めるのがおもしろかったです。

・たて,よこ,たしくぎりのほかに方法があるかなあということを考えるだけで楽しかったです。

【図4 児童の感想(抜粋)】


【図5 児童が作った島】

前へ 次へ


閉じる