6年
効果的に次の実験を導く学習の進め方
−水よう液の性質(質的変化に気づかせる実験を通して)−
宮崎県宮崎市立江平小学校
柚木 和浩
1.はじめに

 理科の学習で必要なことの1つに学習準備があります。例えば,実験の場合は準備がきちんとできていれば授業の8割は大丈夫と聞きます。
 これまで実験準備は,教師がコツコツ1人で行い万全を整えてきたため実験の失敗は起こりにくかったわけですが,結果が統一したものになる傾向がありました。そのため実験結果はよく覚えられるわけですが問題意識が希薄になりがちで観察力,科学的思考に深まりが感じられませんでした。

 そこで,子どもたちに実験をまかせたらどうなるだろうと考えたのです。結果にばらつきが出てまとめられるか心配でしたが,子どもたちがどんな反応をするか楽しみに授業を展開しました。(保護者の参観授業でした。)

2.水よう液の性質(質的変化を追究する実験)の概要

 ここでの大切な学習の1つに,質的変化に気づかせるという内容があります。1つは水よう液にとけた金属は,元の金属とは異なる性質になっているという学習内容です。
 2つは,同規定の酸性とアルカリ性の水よう液を同量ずつ混ぜ合わせるとそれぞれ元の性質がなくなるという学習内容です。今回は後者の場合について,質的変化を子どもにどのように気づかせるかを工夫した授業を紹介します。

3.授業の展開〈リトマス紙とBTBよう液をタイミングよく活用する〉

 ・さまざまな実験結果

 前日,若干規定の異なる塩酸と水酸化ナトリウム水よう液を作り当日に備えました。
 子どもの机には,メスシリンダーと試験管数本・ビーカー2個を準備して,同量ずつ混ぜることを指導した後,それぞれが自分たちのペースで実験を開始しました。すると8つのグループから次のようなおもしろい結果が出てきました。

 班 結  果
酸  性
酸  性
アルカリ性
酸性・アルカリ性・中性
酸  性
酸性・アルカリ性・中性
アルカリ性
アルカリ性

 実験結果が,班によって異なるのはいろいろな理由が考えられます。今回,子どもの実験の様子を見ていて感じたのは,好奇心が実に旺盛でいろいろなことを試しているということです。4・6班は,ころころ結果が変わっています。やり直すたびに結果が変化したようです。(実験の基本からいえば,再現性がないわけですから実験とはいえないかもしれませんが)

 ・どうなる?実験結果

 子どもの実験では,よくこのようなばらつきのある結果が出てきます。この結果のばらつきこそが子どもの関心を高め,思考を巡らすはたらきがあるようです。実はここまでの実験は,混ぜた水よう液の性質をリトマス紙で確かめていました。リトマス紙の場合は3つの性質を決定することはできますが,PH濃度についてはわかりにくいところがあります。
 そのため微妙な色の変化を見逃しがちになるわけです。実験結果をもとに考えると最終的に,この実験からは結論が出てこないということになりました。

 ・効果的な次の手

 このような授業の流れになると子どもは必死になって何とかしようと躍起になります。教科書のすみずみを探ったり,資料集や参考書などを見たりして,紫キャベツ・BTBよう液などを使った実験方法が使えるのではないかといってきました。そこで今回はBTBよう液を使った実験を試みました。

 ・BTBよう液を使った実験の結果から

 班 結  果
うすい黄色
うすい黄色
うすい青色
さらにうすい黄色
うすい黄色
緑がかった黄色
うすい青色
うすい青色

 8つの班の混合液にBTBよう液を数滴入れるとそれぞれ上記の色に変化しました。
 これに加えて,元の液にもBTBよう液を入れ元の液の色の濃さを確認しておきます。子どもたちは,このような色の変化から元の液と混ぜ合わせた液とが異なるものになっているということに簡単に気づきました。このことから,混ぜ合わせたときに質的変化が起きていることに気づいたのです。中和反応は,この結果の延長線上にある特別な場合なのです。

4.学習を振り返って

 ・子どもが「今日の理科楽しい」といったわけ

  今回の学習を通して感じたのは,「子どもが主体」「子どもが考え悩む場の設定」「実験結果が明確」の3点があげられます。いうまでもないことですが,普段はこのことをすっかり忘れているようです。教師の思いだけが先行していました。特に子どもには,ともに考え悩むという体験が大切です。

 今回の場合リトマス紙の結果からでは,「1班は,酸性」「私たちはアルカリ性」というように,水よう液の性質ばかりに目が向けられました。性質の変化に向いていなかったと思います。そこで,子どもたちは悩んだあげくBTBよう液を使うことによって色の変化を見て,性質が変化したことを明確につかむことができました。自分たちが最もわかりたかったことが,BTBよう液を使うことによって達成できたわけです。

 ・効果的な次の手とは何だろう

 子どもたちが悩み考えたがわからない。そんなとき教師はどうするか。という出発点から子どもたちが悩み考えるような問題を与えられるような授業をどう構成すればよいかを考えた取り組みになりました。常にこのことが教師の授業構想の中に入っていないと効果的な次の手が出てこないわけです。自分なりの効果的な次の手をもっと増やしたいですね。


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