5年
ズッキーニで,教室で手軽に「花と実」の観察を    
東京都港区立青南小学校
寺師 純子
1.はじめに

 「花から実へ」の単元では,

 ○ めしべやおしべのつくりを調べたり,花粉を観察したりして,花のつくりの特徴に気づくことができるようにする。

 ○ 実の中に種子ができて生命が受け継がれることをとらえ,生命を尊重する態度を身につけることができるようにする。

 上記の2点が主なねらいとなっている。

 従来,ヘチマ,ヒョウタン,カボチャを用いて学習をおこなってきた。これらは花が大きく,おばなとめばなの違いもはっきりしている上に,大きな実ができるという点で学習に適した教材といえる。しかし実際に育てるには,大きな棚やある程度広さのある花壇が必要になる。

 ヘチマやヒョウタンでは,子どもたちが観察しようとすると高い棚の上やフェンスの上に開花していることが多く,一人一人がじっくりと花を観察することができないことが多かった。

 また,都会に位置する本校の狭い花壇では,限られた数のカボチャを栽培することしかできず,おばなに比べ,めばなの数が少ないこれらの植物では,いざ観察しようとするとめばなが少ししかないということもしばしば経験した。

 なによりこれらの植物を用いた場合,野外で観察した結果を教室に戻って整理するため,実物を見ながらの意見交換が十分に行えなかった。

 これらのことから,もっと手軽に確実に子ども一人一人がじっくりとおばなとめばなの両方を観察し,植物を目の前にして互いの気づきや考えを交換することができないかと考え教材開発に取り組んだ。

2.ズッキーニについて

 (1)  教材としてのズッキーニは,

 ○ 成長が早い。

 ○ 花が大きく,めばな・おばなの違いがはっきりしている。

 ○ めばなが次々にできる。

 ○ 鉢で栽培が可能。〔約30cm四方のものを利用した。〕

 ○ 食用の実が次々にできる

ズッキーニ

 ズッキーニは,持ち運びのできる大きさの鉢植えが可能であるので,授業の際には,教室に持ち込み実際に花を目の前にして子ども同士の意見交換が可能となった。また,中心の太い茎から花柄を伸ばして開花するので,めばなとおばなを並べて比較することができた。

 成長が早く次々に食用となる実ができるので,子どもたちは収穫の喜びを味わうことができた。このことにより子どもたちは頻繁にズッキーニの成長や変化を確かめるようになり,意欲も持続させることができた。


ズッキーニの観察

 (2)  ズッキーニーの栽培のポイント

 ○ 茎が上に伸びていくので成長してくると風に弱いため,中心の茎を短い支柱で支える。風の強い日は,室内に入れる。

 ○ 茶色くなった葉やしぼんだ花は,ハサミをつかって切って除く。

 ○ 実を収穫する際にも切り口が痛まないようにハサミを使う。

 ○ 一週間に一度の割合で肥料を与える。

 ○ 人工受粉しないと実ができにくいため,おばなを押し広げて受粉させる。

 人為的に受粉の必要があるが,初めのうちは教師が行い,学習後は,開花を待ちながら子どもが楽しんで受粉させることができた。

3.その他の植物について

 ズッキーニと並行していくつかのウリ科の植物を栽培した。他の植物についてもズッキーニと比較することで子ども自身が観察の視点を明確にもつことができた。

 (1)  おもちゃカボチャ・コリンキー

 ○ 支柱をつけた鉢やプランターで栽培できる。

 ○ おばなに比べめばなが少ないようであった。

 (2)  夏きゅうり

 ○ 支柱をつけた鉢やプランターで栽培できる。

 ○ おばなに比べ,めばなが少ないようであるが,たくさん花をつける。

 ○ 花が小さい。


ゴーヤの花
 (3)  ゴーヤ

 ○ 支柱をつけた鉢やプランターで栽培できる。

 ○ おばなに比べめばなが少ないようである。

 ○ 花が小さい。

4.終わりに

 手軽に栽培できるズッキーニを中心とした植物を紹介した。ズッキーニと他の植物を比較しながら観察する活動は,大変有効であったと考える。実際には植物によって,実のなる時期に多少のずれがあるため,学習計画に余裕を持たせておくことが必要であった。また,キュウリやゴーヤは,夏休みの時期にも次々と実ができるので,家庭での栽培を紹介することも良いのではないかと考えている。

 ズッキーニは,準備の大変な単元「花から実へ」を手軽に学習するために有効な教材である。収穫を楽しみながら学習に取り入れていただけたらと考えている。

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