全学年
板書をフル活用して,「問題解決の能力」を高める    
徳島県池田町立馬路小学校
真鍋 憲人
      3年「チョウを育てよう」 緑色の枠は,「ここをノートに写すよ。」という印として後からかき入れた。

1.   いつも準備しておくと便利な物は…

(1)ネームプレート (2)番号プレート (3)丸い強力磁石
(4)チョーク (5)1mさし (6)タイマー

(1) ネームプレートを貼ることで,自分の考え(予想・理由)を明らかにする。


   4年「水のすがた」

   5年「もののとけ方」

 
色付き板磁石を2×4cm位の長方形に切って,マジックで名前を書く。
大きすぎると他の文字や図の妨げになる。

 自分の考え(予想・理由・根拠)に責任をもつ。

 あまり考えていない子どもも,考えて貼る。

 友だちの考えを聞いて変わったら,すぐに張り替えられる。

 クラス全員の子どもの考えを,指導者も,子どもも分かる。

ネームプレートは,子どもの机や黒板などに貼っておき,すぐ使えるようにしたい。

注意すること

男女の色を変えない。

男子と女子によって考えを妨げるからである。例えば「女子は,わたしだけ。他の考えにいきたいなあ。」ということもあるからである。あくまでも問題を解決することは,自分の考え(予想とその理由)を確かめるためのものであってほしい。

手間なときはチョークで名前を書く。

(2) 番号プレートは,班の番号にする。


   5年「植物の発芽と成長」
板磁石であれば何でもよい。

わたしは,インクジェット式の板磁石に番号を印刷し,水や汗でにじまないように,上から透明のフィルムを貼った。

書いた数字より,見やすく,きれいで,すぐに移動できる所が便利である。


(3) 強力な丸磁石は,いろいろな場面で活躍する。

             4年「月や星」 色の違いは,等級を表す。

   5年「花から実へ」 いろいろな花の花粉の形から問題を解決する。

○色 赤・黄・青(チョークの色に合わせる。)
○大きさ 直径2cm位(プラスチックが付いているとすぐ割れるので付いていない物)
○数 40個位
○強力なら,ある程度重さがある物
 (植物標本や おもりをつるした糸など)が貼れる。

 箇条書きの中点にする。

 子どもの記録を貼る。

 物を貼る。

 星にする。

 どの色の磁石を使うのかを考える。

(4) 「チョークでかく」=「子どもの言葉を大切にする」

   5年「おもりを当てたとき」 黄色は,前時の実験方法を見直し,修正したことをかき加えた。

青色 … 水,氷,冷たい,区切りの線

赤色 … めあて,大切なこと,日光,あたたかい

黄色 … 空気,項目,大切なこと

茶色 … 木,土

緑色 … 植物,区切りの線

ノートに写す場合,文字や絵をかく速さは,子どものかく速さに合わせる。

文字は,折れ・はね・はらいをきちんと,一画一画,力を入れて書くときれいに見える。

2.   毎時間,板書に書いておきたいことは…

   5年「もののとけ方」 めずらしく問題解決の項目がすべて書き込まれている。

日付     日付は大切。

(1)子どもは,学習したことをもとに予想する。
「いつ学習したことなのか」日付を書いておけば,全員で確認しやすい。

(2)日付を見れば,時間的な変化が分かる。

学習名(単元名)

問題(めあて)

3.   板書とは何…


子どもと共に作るクラスのノートである。

視覚による理解を図る。

問題解決の能力を育てる。

比較,関係付け,条件統一,多面的にみる…。

4.   問題解決の能力を育てるために…

(1) 共通点と差異点を見つけやすくすることで,問題を見いだす。


   4年「月や星」 『同じ日の月を見てかいたのに,形や向きが違うよ?』

   5年「花から実へ」 『植物にもメダカ(オス)の精子のような役割をするものがあるの?』

(2) 丸や線をかき,考え(予想や理由,根拠)を整理し,集約する。

 話し合う前


   4年「冬のしぜん」 丸は観点,線はどこを見ているか。個々の考えを線や色で結ぶ。

(3) モデルや子どものワークシートを掲示し,実験方法を練る。

   5年「植物の発芽と成長」 クラスで一番よい班の方法を,大きな紙の中にかき,全員で検討する。

他の班のワークシートを掲示…
実験方法をうまく修正できない班が参考にするため。
指導者ができていない班を確認するため。

(4) 子どもが結果をかく。

   4年「冬のしぜん」 ノートに結果がかけたグループ(子ども)から,その結果を黒板にかく。


   4年「もののあたたまり方」
文字だけでなく,絵や矢印なども使って友達が分かるようにかくよう指導する。


(5) かく(貼る)場所を工夫して,考察する。

   5年「おもりがあたったとき」 各グループの結果を縦に 見たり,横に見たりして,比較しながら考える。

   4年「夏のしぜん」 ヒョウタンの生長写真を横に貼り,時間的変化から結果と照らし合わせて考える。


(6) 内容をならべて,理解する。

   5年「ヒトのたんじょう」 ↓↑比較しやすいように,ならべてかく。

   5年「メダカのたんじょう」


5.   そのほかに…

授業中は,子どもに集中するため,休み時間や朝,帰りに前時の内容をかいておく。



液晶プロジェクターを使う。スクリーンは黒板に貼れる簡単なものが売られている。
白い模造紙でもOK。

板書の割付を考える。

板書の前に物を置く場合は,その配置を考える。

文字・図・絵・表・グラフなどわかりやすくする。

写真をどんどん使う。

6.   毎時間の板書をデジタルカメラで残すと…

学習進度の確認。

子どもの考えが残る。

子どもの考えの変化を再度確認。

評価。

授業の反省。

次時の展開を考える。

7.   おわりに

 ここ3年間,自分でかいてきた板書を見直してみたが,有田和正氏の板書と較べてみると,まだまだだなあと思う。有田氏の考えられた割付,大胆な掲示物,そして美しさ…。ため息が出るばかりである。さぞ,子どもたちは楽しい授業をしたのであろう。

 理科は,直接的な体験活動が中心であり,あくまでも板書は手助けをするためのものである。だから,火を扱う実験などでは,ほとんど板書をしないときもある。しかし,子どもたちに少しでも力を付けるために,よい板書を心がけていかなければならない。

*参考文献
「新ノート指導の技術」 W板書とノートの関係 有田和正著 1996年発行 明治図書

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