6年
結成!「淡水生物保存会」        
大阪府A小学校

1.活動目標

タナゴが絶滅危惧種になっていることを知り,環境問題に目を向けることができるようにする。


タナゴの生態や住みよい環境を調べることを通して,タナゴを取り巻く自然環境に興味を持ち,生命のすばらしさを感じたり,大切にする気持ちを高めたりできるようにする。


ビオトープでタナゴが住めるように,より良い環境にしていくことができるようにする。


2.活動計画(全22時間)

  ◎ 魚(タナゴ)と出会う (1)
魚(タナゴ)に触れる体験をする
魚(タナゴの稚魚・成魚)を観察する
タナゴを含めた多くの淡水魚が絶滅危惧種に指定されていることを知る
疑問や気づいたこと,思ったことをカードに書く

  ◎

 疑問や気づいたこと等を発表する (1)
魚がタナゴの仲間であることを知る
なぜタナゴが絶滅危惧種になっているのか知る
(水路のコンクリート化や,護岸工事等の人工的な自然環境の変化に伴う,二枚貝の減少・水質汚染・外来魚による生態系の破壊等)
わからないことは専門家の方に聞くことにする

  ◎

 タナゴについてのセミナーを受ける (2)
タナゴの種類や特徴について知る
タナゴの生態について知る
子どもたちが持っている疑問を質問する

  ◎

 タナゴの飼育計画を立てる (2)
「淡水生物保存会」を結成し,自然環境保護の意義を考える
タナゴの飼育方法をグループで考え,飼育計画を立てる

  ◎

 自分たちの立てた計画に従って活動する (2)
タナゴにとって良い環境とは何か調べ,タナゴの飼育を始める
継続観察をする

  ◎

 タナゴ救出計画を立てる (3)
タナゴが生息する自然環境について調べる
ビオトープがタナゴにとって良い環境かどうか調査する
絶滅危惧に陥っているタナゴを繁殖させるために,ビオトープの環境を改善する方法を考える

  ◎

 自分たちの立てた計画に従って活動する (3)
グループごとに,考えた方法で,ビオトープの環境を改善し確かめる

  ◎

 改善したビオトープの環境を経過観察する (1)
水温・水質調査,個体数調べ(タナゴ・二枚貝),藻の除去等

  ◎

 タナゴをビオトープに放流する (1)

  ◎

 パソコンを利用して,活動したことをまとめる (6)



3.子どもたちの活動の様子

  ○ 学習園の小川がタナゴにとって良い環境であるかどうかを調べる子ども

 学習園の小川はタナゴが快適に住むことができ,繁殖できる環境であるかを,10項目にわたって調査している様子。調査項目については,自分たちでタナゴにとって必要なものや条件を調べたり,考えたりして調査シートを作成した。
 

  ○

 調査項目

二枚貝,岩,水草,巻き貝,砂利,砂,泥の有無とその分布
プランクトンの有無
水質検査(パックテストを使用)
水深・水温調査
水生植物の分布
 

  ○

 タナゴの稚魚を水槽で育てる計画を立てる子ども

 タナゴの稚魚を水槽で育てて大きくしていくために,必要なものや条件を自分たちで考えたり,インターネットで調べたりして,ワークシートにまとめた。その際,なぜそれらのものや条件が必要なのかも調べている。また,タナゴの稚魚を育てるのに4人に1つの割合で水槽とタナゴの稚魚1匹を与え,自分のタナゴとして責任を持って育てることができるようにした。そして,自分たちが調べたことをもとに飼育計画も決めて,飼育記録用紙に毎日記録をした。
 

  ○

 ビオトープを,タナゴが快適に住み繁殖できる環境にする方法を考える子ども

 ビオトープの環境調査結果をもとに,現環境の問題点をピックアップし,どういう方法で環境を改善するのかを考えたり調べたりした。そのとき,タナゴの生息する淀川のワンドのデータと比較させ,少しでもワンドの環境に近づけられるようにするにはどうすればいいかを考えるよう助言した。
 


  ○

 子どもたちがピックアップしたビオトープの問題点と改善方法

藻が多すぎる除去


川底にごみがある


除去


水質が汚い部分が多い


浄化装置を作る


二枚貝が存在しない


淀川のワンドで採取してビオトープに入れる


川底に砂,泥がない


淀川のワンドで採取してビオトープに入れる


水草の種類が少ない


淀川のワンドで採取してビオトープに入れる


巻き貝が少ない


淀川のワンドで採取してビオトープに入れる


川底の浅い部分と深い部分がない


砂や泥の入れ方を工夫する


水生植物の種類が少ない


淀川のワンドで採取して鉢植えにし,ビオトープに入れる

4.成果

  .全活動を振り返って

 タナゴは,ほんの数十年前までは,身近な魚で日本全国に分布していた魚である。それが人間の環境破壊により,その数が激減し,今では絶滅危惧種に指定されている種類もあるくらいである。タナゴを教材として取り上げることで,自然環境保護の必要性に目を向けることができた。また,事前のアンケートでタナゴという魚を知っている子どもはほとんどいないため,学習する価値があるし,タナゴのおもしろい生態は子どもたちが興味を持って学習できるものであった。それだけではなく,タナゴを教材として扱うことは環境ビオトープの観点からも,非常に有意義であると言える。

 最初に,名前を知らせないで,子どもたちにタナゴの稚魚と成魚を見せた。すると,子どもたちは口々に疑問を言い始めた。そこで,いろいろな疑問や気づきをカードに書かせ分類し,指導者が答えられることについては答えていった。しかし,指導者もタナゴのことについては,全くといっていいほど何も知らないため,タナゴの研究をしている方に来ていただいて子どもたちの疑問に答えるとともに,タナゴの生態についてくわしく話してもらえるタナゴセミナーを開催した。子どもたちは,タナゴのことがよく分かり,その生態のおもしろさにさらに興味を持つことができた。

 そこで,数の減ってきているタナゴを救えるようにと,「淡水生物保存会」を結成し,タナゴを育てていくとともに,タナゴが繁殖できる環境を作っていくことを決めた。まず,タナゴの稚魚を水槽で育てて大きくするためにどんな環境が必要であるのかをインターネットで調べてワークシートにまとめた。次に,4人に1つの水槽と1匹の稚魚を与え,自分たちが調べたことをもとに水槽の環境を作らせた。子どもたちは,タナゴに名前をつけ,愛着を持つとともに,このタナゴの命を守り,大きくしていくのは自分なんだという責任感を持つことができた。飼育の計画も自分たちで考え,水温調査をしたり餌を与えたり,水替えをしたりしている。

 そして,子どもたちは,自分たちの育てているタナゴが自然に繁殖できるようにするためにどうすればいいかを考え,ビオトープをタナゴにとって良い環境に作り変えることに決めた。タナゴの稚魚を水槽で育てる際に調べたタナゴにとっての良い環境をもとに調査項目を決め,ビオトープの環境がどういう状態なのかを調べていった。調べた結果をもとに,改善点をピックアップし,改善方法を自分たちで考えたり,調べたりし,みんなでビオトープの環境を改善していった。自分たちの育てているタナゴが卒業後も快適に暮らせ,繁殖できるようにという願いを持って意欲的に活動することができた。

 最後に,パソコンを使って自分たちの全活動を記録することにより,他学年にもタナゴに興味を持ってもらうとともに,「淡水生物保存会」を引き継いでいってもらえるようにした。今までの活動を振り返り,指導者自身もタナゴのことについては無知であったため,子どもとともに考え,学習していくことができた。指導者も子どもと一緒に興味を持って学習することができるのは,総合的な学習の特質ではないかと思う。

  

.研究討議会のまとめ

 学習園の小川の生態系を壊すことなく,いろいろな淡水生物が共存できるような環境作りを子どもとともに考え,実施していく必要がある。そうすることにより,自然環境の少ない校区にもミニ自然が生まれ,子どもたちにとって思い出深い場所となるとともに,地域の憩いの場所としての役割も果たせるようになっていくのではないかと考える。

  

.実践のためのアドバイス

 今回の活動では,タナゴの卵の実物を見ることができなかった。タナゴの卵を見ることができるようにするとともに,人工受精も簡単にできるので,卵からの観察をしていくこともできる。


 二枚貝の繁殖に努めていく必要がある。


 実際に淀川のワンドに行き,タナゴの住む自然環境に触れる体験を取り入れることも考える必要がある。


 メダカやタナゴと共生でき,子どもが興味を持てそうな生物を,教材として取り上げてみるのもいい。

5.参考資料

  ○ 「日本淡水魚タナゴ保存協会」のホームページ
 (http://www2u.biglobe.ne.jp/~tanago/)

  ○

 「レッドデータブック」(環境庁出版)

  ○

 「水道記念館」(大阪市東淀川区柴島1−3−1)

  ○

 「貝に卵を産む魚」(福原修一著・トンボ出版)

  ○

 「淀川のワンドに行ってみよう」(近畿地方建設局出版)

  ○

 「淀川の自然」(大阪市立自然史博物館出版)
 ワンドの水質調査結果や群生する植物についての説明が書かれている。
 



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