教育改革のとりくみ 目次

学校教育目標の具現化
〜3つのプログラムによる実践〜


福岡県飯塚市立八木山小学校
教諭 小山 亮子

 本校は学校教育目標をよく学び よく鍛える 心豊かな八木山っ子の育成とし,めざす子ども像を次のように設定した。

1 モラル・マナーを身に付けた子ども(やさしい子)
2 基礎・基本を身に付けた子ども(かしこい子)
3 体力を身につけた子ども(たくましい子)

 この教育目標を具現化するために,3つのプログラムの年間計画に沿って知・徳・体のバランスのとれた「やさしく,かしこく,たくましい八木山っ子」を育てる取り組みを行った。


1.各プログラムの目標と年間計画

  心力アッププログラム(やさしく) 学力アッププログラム(かしこく) 体力アッププログラム(たくましく)
目標
縦割班活動や合同活動で,お世話をしたりお互いに助け合ったりする活動を通して,相手を思いやる心を持つことができるようにする
読み・書き・計算等の基礎的基本的な知識や技能と,自ら学び自ら考えようとする態度を身につけることができるようにする
各種運動を継続的に実施することで体力の向上を図り,何事にもチャレンジしようとする意欲や態度を身に付けることができるようにする
4月
縦割班の編成
マナー実戦開始
(接遇実習)
実のなる木植樹
緑の少年団青少年赤十字入団式
八木山補充学習の計画
朝の読書活動
(月1回保護者読み聞かせ)
音声計算チャレンジ
音読チャレンジ
社会科チャレンジ
(3年地図記号,4年県名県庁所在地,5年平野・川・山脈,6年国名・年号)
漢字チャレンジ
朗誦チャレンジ<畳語文>
八木山エアロビックダンスI
(ブンブンブンブン)開始
ラジオ体操(体育の時間)

新体力テスト実施
<1回目>
5月
春の鳥観察
田植え
     
6月
菊作り
(一人一鉢)
  ※住民先生
 
 
     
※ストラックアウト練習
ストラックアウト大会
(7月上旬)
<投力アップ>
     
7月
ピアサポート1
(仲間づくり)
   
   
音読発表会(7/8)
※同時開催
9月  
相撲甚句
八木山獅子舞
※住民先生
八木山検定1

(漢字,計算,社会,パソコン等)
八木山ストレッチ
(渚のアデリーヌ)
八木山エアロビックダンスII
(ミッキーマウスマーチ)
10月  
八木山っ子運動会(9/28)
 
   
稲刈り
八木山獅子舞
※住民先生
朗誦チャレンジ<論語カルタ>
相撲大会(10/3)
   
八木山っ子学習発表会(11/16)
 
12月      
※持久走練習
持久走大会(12/2)
(7月上旬)
<投力アップ>
 
ピアサポート2
(仲間づくり)
しめ縄作り
※住民先生
八木山検定2

(漢字,計算,社会,パソコン等)
1月  
冬の鳥観察
 
2月  
八木山獅子舞
※住民先生
朗誦チャレンジ
<筑前國続風土記「八木山の章」>
※なわとび練習
なわとび集会(2/13)
<跳力アップ>
3月  
6年生を送る会(3/1)
 
     
八木山検定3

(漢字,計算,社会,パソコン等)
新体力テスト実施
<2回目>
 
 
     
   
卒業式
 
       


2.各プログラムの取組

(1) 心力アッププログラム

1 相手を思いやる心をもたせるために
 
縦割り班活動により,年下の子の世話をしたり,互いに助け合ったりさせる。
全校を3つの縦割り班に分け,年間を通していろいろな活動を仕組む。
  ・歓迎集会 ・歓迎遠足 ・野鳥観察 ・田植え ・稲刈り ・なわとび集会
 

2 地域を愛する心を育てるために
 
八木山の伝統芸能や伝統行事を継承する。
郷土学習を行う。
相撲甚句
八木山獅子舞の継承
  男子は化粧回しをつけて相撲甚句を踊る。
本物の獅子頭を使って舞う。
  ダンボールの獅子頭を使って舞う。

地域の方との交流により,地域の一員である自覚をもたせる

ふれあいフェスタ
(もちつき大会)

  わら細工
 
もらい湯体験
校内キャンプのときに地域の方のお宅に伺って,お風呂に入らせてもらい,お礼に家の掃除などの手伝いをする。

植物の世話や観察を継続して行うことにより,植物や自然を大切にする心をもたせる。
・一人一木の栽培   ・菊の栽培   ・野鳥観察(春,冬)
   

3 対人関係において,挨拶・人と接するマナーなどを身に付けさせるために
 
基本的なマナーの指導
挨拶の仕方,返事の仕方,廊下の通り方,お客さんとの接し方,言葉遣い
お客様への接遇体験(お茶だし・挨拶)
「マナー5か条の心得」を毎日唱えるさせ,定着を図る。
期間を限定した重点目標の設定


(2) 学力アッププログラム

1 学習規律を身に付けさせるために
 
基本的な学習規律,習慣,技能の定着
・姿勢 ・鉛筆の持ち方 ・終始の号令 ・挙手の仕方 ・ノートの使い方 等

2 国語の基礎学力アップのために
 
漢字練習(1年生学期〜6年生)・平仮名や片仮名練習(1年生)・音読練習(全学年)等を毎時間の授業に必ず組み込む。
漢字指導は,各学期とも最終月(7月・12月・3月)前までに指導を終え,最終月を定着のための練習・検定期間とする。
朝読書タイム・教師や保護者による読み聞かせタイムの設定
日記指導による作文力向上

3 算数の基礎学力アップのために
 
計算練習タイムを毎時間の授業に必ず組み込む。

4 他教科の基礎学力アップのために
 
補充タイムを利用して,社会科の地図記号や県名,県庁所在地,山や川・平野などの名前,歴史の年号,パソコン入力などの練習を行う。

5 確実な定着のために
 
学期末に前述(1)〜(4)の内容を対象に「八木山学力検定」を行い,学習したことの9割以上の得点で合格とする。子どもたちには,検定表一覧をもたせ,合格印を記入していくことにより,検定合格に向けての意識づけと意欲づけを行う。

6 記憶力アップのために
 
朗誦の取組〜・畳語 ・江戸いろはかるた ・京都いろはかるた ・論語
1年生から6年生まで同じ課題に取り組み,全校練習を行う。

7 合唱のよさを味わわせるために
 
少人数の学校であるため,学級ごとでは二部合唱の楽しさや楽曲の美しさを味わうことが難しい。そこで,全校で合唱に取り組むことにより,少人数のデメリットを補うようにする。


(3) 体力アッププログラム

1 継続して行う運動
 
ラジオ体操の徹底
業間を利用してのエアロビックダンス約5分間の音楽に合わせて,楽しく体力づくりができるようにしている。

2 期間を限定して集中して行う運動
 
1学期〜投力アップ 「ストラックアウト大会」
縦割り班対抗で取り組ませた。毎日の練習にも班の協力が不可欠となり,低学年の子どもたちに高学年の子どもたちが投げるコツを教える場面も見られた。
2学期〜走力アップ 「持久走大会」
  1・2年生は1km程度,3・4年生は,1.3km程度,5・6年生は1.5km程度のコースを走る「持久走大会」を開催した。「持久走練習期間」を設け,期間前と大会の両方の記録をとり,どれだけタイムを縮められることができたかを重視した大会とした。練習期間中は,全校一斉に運動場を走り,長く走ることができる体力の育成に努めた。
3学期〜跳力アップ 「なわとび集会」(本年度は21年2月に実施予定)
班対抗とし,前とびなどの簡単な跳び方から,はやぶさなどの難しい跳び方まで14の種目を設け,班の代表が出て規定の回数を跳べたらポイントを獲得するというやりかたで行う。種目の中には,全員で行うリレーや大縄もあり,大会前2週間ほどは,毎日のように子どもたちが練習する姿が見られる。また,班の団結もよりいっそう強まる。


3.成果と課題

 まだ,実践半ばであるが,現段階までの成果と課題をまとめると,このようになる。

  成果 課題
心力アップ
プログラム
縦割り班活動は,子どもたちのつながりを深めるのに大いに役立っている。特に,上級生が下級生の世話をするということが,本校児童の中では当たり前に行われている。
もらい湯,獅子舞,相撲甚句,菊作りなどを通して地域の方とのつながりができ,郷土の文化を継承していく素地もできてきた。
集団でいるときの挨拶やマナーはよくなっているが,個人でいるときは,集団でいるときほど十分であるとはいえない。いつでもどこでもきちんとした態度で人と接することができるようにする。
学力アップ
プログラム
朗誦の取り組みにより,子どもたちの記憶力が向上してきた。難しい長文を暗誦するのに練習する期間がだんだん短くなっている。
学期末の学力検定により,学習したことが定着してきた。特に,漢字の習得率や,計算力(速く計算できる力)が上がってきた。
学力定着には,個人差が大きい。もっと,個に応じた指導を充実させる必要がある。
体力アップ
プログラム
期間を決めて行う運動では,集中して取り組むことにより,運動能力の向上が見られた。特に,1学期のストラックアウト大会の練習前,低学年の中にはボールを投げても2mも飛ばない子が何人もいたが,練習を重ねるにつれ,フォームが身に付き,投力もついてきた。
継続して行う運動を取り組むにあたって,ややマンネリ化する傾向がでてきた。同じようなことを継続する場合でも,メリハリをつけたり,方法を少し変えたりして,子どもたちのやる気が持続するよう工夫する。


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