授業実践記録

授業実践記録 〜「個に応じた指導」事例〜
福井県福井大学教育地域科学部附属中学校
小林真由美

1.単元名

〜お得な携帯電話プランをつくろう(「一次関数」「連立方程式」)〜

2.単元設定の意図

(1)単元について

 数量の関係を日常生活の中から見つけ出し,「一次」の概念を式や表,グラフなどを用いて総合的に獲得していく学習場面である。1年時に学習した「一元一次方程式」と「比例」の概念をさらに一般化し,「二元一次方程式」と「一次関数」として考えていく。ここでは「連立方程式の解法」とか「一次関数のグラフの書き方」といったセクションごとの学習ではなく,設定した日常生活の場面の中で必要に応じた学習を進め,その学習場面を利用してグラフの書き方などの表現処理能力を獲得するという形で単元を構成している。

(2)単元の流れ

第1時
  携帯電話の料金は何によって決定されているかを確認し,何が分かるか話し合う。
 
 
Aプラン   基本料金4500円 通話料40円 無料通話600円
Bプラン   基本料金9100円 通話料44円 無料通話6600円
 
  プランAについてグループごとに調べてみよう。
 
表にあらわして変化の様子を見る。
グラフにあらわして変化の様子を見る。
グラフから式を考える。
式・表・グラフの意味を考える。
第2時 (本時  *指導案を別記)
 
課題1 2つのプランを比較してどんな場合に
どのプランが得か調べよう。
変化の割合
グラフ 傾き・切片の意味
交点座標
連立方程式の解
  生徒からでてきたこと
 
表から
50分増すと2000円増す→変化の割合
100分増すと4000円増す
350分で17900円が一致する→交点
 
グラフから
50分増すと2000円増す→変化の割合=傾き=通話料金
そのままグラフを延長するとy軸と3900円で交わる→切片
2回交わっている。
350分で交わっている。150分?130分?125分?で交わっている。
 
式から
全体の料金=40(x-15)+4500
y=40(x-15)+4500
y=40x+3900
y=40x+3900(x≧15) 連立方程式
y=44x+2500(x≧150)
y=4500(x≦15)
y=9100(x≦150)
第3時
  グループ活動の中で疑問に思ったことを出し合い解消しよう。
○グループ活動の中で出てきた疑問を書き出し,一覧表にまとめたものを解消する。
 
 
式を整理しよう
  全体の料金=40(x-15)+4500
  ↓yを使おう
  y=40(x-15)+4500
  ↓整理してみよう
  y=40x+3900←切片の意味
  ↓変域があるはず!
  y=40x+3900(x≧15)
  y=4500(x≦15)2つの式に分かれるのだ!
連立方程式と交点の意味→本当の交点座標は何だろう
  y=40x+3900(x≧15)y=44x+2500(x≧150)
  y=4500(x≦15)y=9100(x≦150)
  4つの式の組み合わせで連立方程式を解けばよい!
 
  本当の交点は350分と130分だ!!
 
第4〜6時
  自分たちの携帯電話料金プランを作ろう。
 
基本料金○円
通話料金 ○円
無料通話分○分
○○○プラン
条件: 100分で4000円 400分で19000円を下回らないこと
無料通話分は途中からでもよいプラン名を考えること
 
グラフで考えて必ず変域のある式にして表す。

グループでアピール説明をし,各自がどこと契約するか投票する。
特別課題(夏季休業中)
  「自分の身のまわりにある関数関係を解明しよう」
 
各自でレポートに表し,夏季休業中にまとめる。
9月に発表会を行う。

3.本時の授業構想

 日常生活の中には,「一次」の関係になっているできごとがたくさん存在している。何気なく体験しているできごとも,関数的な見方で次を予測したり,関係式を利用して未知の数を解明したりできる。しかし,私たちがそれを数学的に処理しようとするとき,これは連立方程式で解く問題,これは一次関数の問題と分けて考えられるものではなく,それらは一次の関係として構造的につながって扱われる。

 そこで本時は,生徒にとって興味深いと思われる携帯電話の料金設定を数学的に解明することで,一次の関係を分かりやすく整理していく。一見,安そうに見えるプランも表やグラフに表すことで,意外と高額な料金になっていることを体験して,数学的に処理することのよさを体感するであろう。それぞれのプランの特徴を調べていくうちに,より安いプランは時間によって変わることが問題となる。その切り替わる時間が連立方程式の解であり,グラフの交点となる。生徒達はここまで学習してぼんやりとつかみかけてきた一次の概念を利用していくうちに,そのよさに気づき,関係についても理解を深めていくであろう。

 本時はグループ活動を中心に,互いに学んできたことを出し合いながら一つの問題を解決していく形をとる。どのグループも同じ結論にいたるので,グループ内で解決したあと,クラス全体でさらに練り上げていく場面が設定しにくいと思われる。しかし,同じ式に到達しても,そこまでの過程はさまざまであり,その過程の関係こそが一次の概念のつながりである。グループでの活動をよく観察し,それぞれのグループの解決方法を共有しながら,みんなでそのつながりを発見していけるよう支援していきたい。

学習の流れと生徒の活動
活動の支援・留意事項
本時の学習活動を知る。
 
2つのプランで,どちらが得だろう。
 
Aプラン: 基本料金4500円 通話料40円
無料通話600円
Bプラン: 基本料金9100円 通話料44円
無料通話6600円
100分での料金を求めてみよう。
活動の流れの確認
 
どちらのプランがお得かを調べていく。
調べて気づいたことを付箋で貼っていく。
式や数量は黄色,気づいたことはピンク,つながりを表すことは青を利用する。
前時を想起させる。
まず直観的にどちらが良いか選択させてみる。
Bプランでは100分は,無料通話分であることに気づかせる。
グループごとにいろいろな方法で調べていくよう支援する。
式を求める過程に留意する。 (未習)
表・グラフ     交点座標
100分増すと4000円増す
 
  1分増すと40円増す(変化の割合)
延長するとy軸と3900で交わる
  (切片)
交点が2回ある(連立方程式の解)
差が4円ずつ縮まっていく。
y=40(x-15)+4500
y=40x+4500-600
y=40x+3900
y=40x+3900
y=44x+2500
   
y=9100
y=40x+3900
 
 

各グループの付箋(拡大)を黒板に貼る。
式の求め方,交点座標などについて発表する。
矢印の関係を見つけていけるよう支援する。


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