ブールハーヴェ博物館
テイラー博物館
No.3
東海大学助教授 菊池 文誠

オランダ

ブールハーヴェ博物館
(The Museum Boerhaave)

所在地:Lange St.Agnietenstraat 10, 2312 WCLeiden,
交通:Leiden駅から徒歩約10分
開館時間:火〜土 10:00〜17:00,
 日・祝日の12:00〜17:00
休館日:月,1/1,10/3
写真撮影:可能
 1575年に創立されたオランダ最古の大学のあるライデンは博物館の町として知られている。その名の通りライデン瓶の発明されたところである。また,このライデン大学でカメリング・オンネスによって低温物理学の道が開かれた。ブールハーヴェ博物館は,ライデン大学附属の科学史博物館として1931年にライデン駅の近くに設立され,その後国立となり,1991年,現在の市内中心部への移転と共に内容が一新され,名称もライデン大学で初めて臨床講義を始めた医学者ブ−ルハーヴェを記念する現在のものに改められた。したがって,展示も物理に関するものと医学に関するものとからなっている。異色の組合せのようだが,それがうまく調和がとれている。内部は年代別に分かれていて,非常にわかりやすい。
ブールハーヴェ博物館前景

ヘリウム液化装置
(ブールハーヴェ
博物館)
 展示品を古いものから順にいくつか紹介すると,まず,レーベンフックの顕微鏡がある。たった1個の小さなガラス球で,人類は初めて物を拡大して見ることができたのである。電界イオン顕微鏡で原子も見るという現在だが,そのルーツはここにある。
 その後の顕微鏡の発展を示す数々の展示品は,望遠鏡の展示も併せて当時のオランダの科学技術の中心がいわゆる光学であったことを伺わせるのに十分である。この流れの中で光学史上欠かせないホイヘンスも登場するのである。そして,顕微鏡の発展はそのまま医学の発展と直結する。
 天球儀,温度計,天秤や時計などの展示も当時の科学の最先端として面白い。また,力学関係のデモンストレーション用としての多くの機材がある。ライデン大学で教育用に使用されたのであろう。ニュートン力学を直ちに受け入れたのはこのライデンであった。医学関係では外科の手術用器具が多い。18世紀後半以降になると蒸気エンジン,真空ポンプ,顕微鏡のスライド標本,ボルタの電堆などのほか,まさつ起電機と並んでライデン瓶が登場する。これらを用いて放電実験などがなされたのであろう。
 さらに時代を進めば,立体化学を開拓し,第1回目のノーベル化学賞を受けたファントホッフの構造模型や彼の実験装置があり,すぐそばに最大の目玉のカメリング・オンネスのヘリウム液化装置1号機がガラスのケースに収められている。また,これもノーベル賞を受けたゼーマンとローレンツの手になる強力な電磁石もある。その他の展示物としては実物大に復元した臨床講義用の解剖台(手術台)と階段教室,形成外科やリハビリ用の治療器具などがある。
 ブ−ルハーヴェ博物館はイギリス,フランス,ドイツと並ぶ科学大国オランダを代表する科学博物館である。多くのオリジナルに接することができ,しかも時代順に配列されているので,展示方法の面からも優れた施設と言えよう。特にニュートン力学関係のものがいわゆるデモンストレーションとしてきわめて優れているといえよう。

解剖台
(ブールハーヴェ博物館)

シーボルトの家
(ライデン市内)
 ガリレオの最後の著作「新科学対話」が出版されたのもこのライデンの書店であることも歴史的には重要な事実であろう。
 現代では医学と物理学の関わりの深さは言うまでもない。それが近代科学の創世時代からであったことを改めて認識させられる。また,ショップも充実していて,いろいろな関連資料が手に入る。
 博物館の町ライデンには12のいろいろな博物館がある。特にシーボルトが日本から持ち帰ったものは国立民俗学博物館にあり,植物については大学附属植物園の日本庭園に集められている。シーボルトの住んでいた家も残っている。

テイラー博物館
(Teylers Museum)

所在地:Spaarne16 2011CH Haarlen WCLeiden
交通:アムステルダムから鉄道で16分。ハーレム駅から徒歩約10分
開館時間:火〜土 10:00〜17:00,
 日・祝日 13:00〜17:00
休館日:月,1/1,12/26
写真撮影:可能
アドレスhttp://www.nedpunt.nl/teylersmuseum
 1778年,豪商のピーター・テイラーによって建てられたものである。長楕円形の建物は最初から博物館として設計され,天井から採光するという当時としては画期的なものである。展示されているのは力学,電磁気,熱,光学,化学などの実験機材で,現在の学校用教材の原型である。中でも直径 1.6mもあるガラスの円盤を用いた大きな摩擦起電器と25個も並ぶ直径30cm,高さ60cmの大きなライデン瓶と放電装置はライデン大学で実演に用いられていたものである。実際に動かしたらさぞ迫力のある実験であっただろうと想像される。
 その他,化石,古生物の骨格標本,岩石類等や絵画等の美術品もある。説明は全くなく,ただコレクションを保存しているだけといった感じである。それでも実験装置の類は,見ればわかるので充分参考になるし,楽しい施設である。

テイラー博物館入口

ライデン瓶と放電装置(テイラー博物館)

静電起電機と放電装置(テイラー博物館)


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