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著者からのメッセージ 著者からのメッセージ

  • 編集委員長 東京大学名誉教授 岡本 和夫 編集委員長 東京大学名誉教授 岡本 和夫
  • 編集副委員長 茨城大学教授 根本 博 編集副委員長 茨城大学教授 根本 博
 みなさん,こんにちは。啓林館中学校数学教科書編集委員長の岡本和夫です。
 中学校で学ぶ数学の内容は変わりませんが,それを学ぶ中学生やそれを取り巻く社会は日々変化して行きます。啓林館の中学校数学教科書では,数学の系統性を大切にしつつ,生徒の皆さんが学びやすい教科書,先生方にとっては教えやすい教科書,先生と生徒が教室で共に学ぶことを助ける教科書,を目指してきました。この姿勢は一貫して変わりません。
 自発的に数学に興味と関心を持ち進んで学ぶ生徒,先生が期待するところまでは達成できていない生徒,支援を必要とする生徒,教室で学ぶ多様な生徒の,おのおのの個に応じた教科書を作るように,私共は努力しています。
今の学習指導要領では,数学的活動として「数学的な表現を用いて,根拠を明らかにし筋道立てて説明し伝え合う活動」が強調されています。新しい教科書を編集するときには,このような重要な方向をこれまで以上に強くすることが大切,と考えました。
 将来を担う中学生には,国際社会の中で多くの人と交わり,自然の脅威や環境の維持と改善に正面から向き合う力が期待されています。彼ら彼女らの成長を助けることは数学科教科書にも求められています。
 平成28年度版教科書「未来へひろがる数学」は,先生方の意見や「全国学力・学習状況調査」の結果等を基に全面改訂しました。多くの課題に立ち向かい,社会を生き抜く力を養成するために,私共は,教科書を通した数学の新しい学びのシステムを提案します。
 本冊では特に小学校からの系統性を重視し,練習の充実などにより基礎基本の定着を図り,併せて「千思万考」を新設して思考力を養う場面を充実しました。巻末のオプションでは繰り返し練習とまとめの問題に加えて「数学広場」を設けて,個に応じた数学の力がより一層充実するような工夫を凝らしました。
さらに現場で工夫されている多様な学習形態への対応と生徒の主体的な学びを実現するために,別冊「MathNaviブック」を編集しました。ここでは,「学びをつなげよう」,「学びをいかそう」,「自由研究に取り組もう」の3つの柱で,既習学習をふり返り,数学の有用性を感じ取り,数学の楽しさを実感できるようにして,本冊の学習の幅をさらに広げることができるように工夫しました。
 この教科書の効果的な活用により,多様な生徒の豊かな学びが実現することを願っています。

編集委員長 岡本 和夫

 みなさん,こんにちは。啓林館中学校数学教科書編集副委員長の根本博です。
 平成28年度版の教科書「未来へひろがる数学」で基本に据えた考えは,知識基盤社会の到来,グローバル化の進展を念頭に置いた,知識伝達・注入型の教育からの転換,問題解決型の学習,さらには協働的な学びの実現です。知識基盤社会では,単なる知識・情報の習得ではなく,新しい知識,新しい情報,新しい技術等の創造,そして,これを成し遂げる人間の育成が求められている,そのように考えました。
 数学学習を通して,習得した知識・技能を生かし,問題の状況を適切にとらえ解決する力や,その基盤となる思考力・判断力・表現力,また,実践力をしっかり身に付けることが必要です。それには,自分なりに力を尽くして学び続けようとする強い意志,自信をもってさらにその先へ思考を進めようとする態度,創造性の育成にこれまで以上に意を用いなければならないと思います。
 そこで考えましたのが,新しい「学びのシステム」の導入です。全学年の教科書に「本冊」と併せて「別冊」MathNaviブックを制作し,先生方の指導と生徒の学び,双方の助けとなるよう編集しました。
「本冊」と「別冊」相互の連携活用により効果的な学習が実現できると考えています。その「本冊」は学力の定着,向上,実践力を育成しようとするもので,基礎基本の定着は言うまでもなく,思考力を養う場を一層充実することができるようにしました。また,数学学習における言語活動の充実に沿うよう,「話し合い,自分の言葉で伝え,まとめる」という活動を促す問いかけも随所に設けています。
 次に,「別冊」は習熟度別・少人数指導など,多様化する学習形態への対応とともに,文部科学省の教育振興基本計画にも示されている「主体的な学び」を実現するためのものです。各章に関連する小学校算数科の内容を示したり,新たな学習内容への見通しがもてる場を用意したりして,生徒が自ら振り返って考えを深められるよう,これを<学びをつなげよう>として設定しています。
また,<学びをいかそう>では,つとめて数学で考えていることを意識付けようとしています。
 さらに,普段の生活の中にある数学で対処し得る問題を自らの力で解決しようとする態度を養えるよう<自由研究に取り組もう>という節も設定しています。別冊は,数学で考えることの楽しさを味わい,数学の有用性など実感できるよう工夫していますので,これにより学習意欲を高めることができ,数学的活動を一層充実することができると考えています。
 もちろん,相応の授業方法の改善もこれまで同様に求められますが,最後に付け加えるなら,「考えること」を厭わず力強く自立的に生き抜いていく生徒,とりわけ,粘り強く考えることの尊さに気付けるような生徒の育成に,この新しい教科書が活用されることを願っています。

編集副委員長 根本 博