定義と性質

例えば,平行四辺形を学習した児童に「平行四辺形を1つかきなさい」と問いかけると,各自が思い思いに平行四辺形をかき出してきます。しかし,かかれる平行四辺形は,当然のことながらその大きさも,形も,向きも異なった平行四辺形です。

しかし,こうした個々の平行四辺形をいくらかき出しても,平行四辺形の概念が確立したとは言い切れません。平行四辺形の形は無限に存在して,かきつくすことができないからです。ここに,平行四辺形の概念を言語でもって規定する必要性が生じてきます。つまり,概念は,言語でもって明確に規定されて,初めて概念として確立されるわけです。この言語による概念規定がいわゆる定義です。概念の規定ですので,そこには決してムダやムリがあってはいけません。あくまでも簡潔にして,より明確な表現が前提です。平行四辺形の場合であれば,下記のような表現がそれにあたります。

一方,平行四辺形には,「向かいあう2組の辺が平行」という特徴の他に,さまざまな特徴を持ち合わせています。例えば,
・向かいあう2つの辺の長さが等しい。
・向かいあう2つの角の大きさが等しい。
・2 本の対角線は互いに他を2 等分する。
・点対称の形になっている。
などです。これは平行四辺形の性質です。いわば,定義以外に持ち合わせている,個々の図形の様々な特徴が,いわゆる図形の性質です。