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| 2000年7月31日から8月6日までの1週間,千葉県の幕張メッセを中心にして,第9回数学教育世界会議(ICME9)が開催されました.世界中から,日本からの参加者も含めて,約2000名の数学教育関係者が集まりました.皆様の中にも参加なさった方が多くいらっしゃるのではないでしょうか.猛暑の中,冷房の効いた部屋で,講演,分科会発表,討議が活発に開かれました. 私は,ICME9にポスターセッションの責任者として関わるとともに,また,日本数学教育学会編集部長として学会誌編集者会合に出席しました.個人的には,数学教育における数学の応用に興味を持っているので,その関係の講演を聴いたり分科会の発表を聞いたりしました. 会合を通して印象深かったことは,いろいろな場で,IT(情報技術)と教師教育が話題になっていたことでした.高等学校数学の部会でも例外ではありませんでした.教師とITが教育改革の鍵であるということが結論のようでした.編集者会合でもITは中心の話題であり,オランダからインターネットを使った学会誌が紹介されていました.近い将来,インターネットを使って学会誌を読む時代が来そうです. 最近は,このようにIT化が進み,いろいろな情報がインターネットで得られるようになりました.我が国でも文部省のホームページで教育に関する種々の情報が得られることはご存知だと思いますが,諸外国の情報も手軽に入ります.2000年になって,イギリス,アメリカが新しい数学教育のカリキュラムを発表しました.イギリスについては,教育省のホームページから,アメリカは教育省だけではなく全米算数数学教師協会(NCTM)のホームページなどから数学教育に関する情報を得ることができます.ITが進んでいるアメリカでは,検索ソフトを上手に使うと,各州のカリキュラムの内容まで調べることができます. ここでは,ICME9でも話題になっていたアメリカのNCTMの『学校数学のための原理と基準』を紹介しましょう. アメリカには我が国の学習指導要領のような国家的な基準がないので,各州はこの基準をもとに独自の教育課程を作成します.『基準』は21世紀を目指して幼稚園から高校までの数学教育の意義,目標,原理,内容の基準等を述べています.冊子で402頁で,CD-ROMでも購入できます.それらの主な内容は表の通りです. 原理で目につくのが「公正」です.これは種々の調査から明らかにされているように人種や経済状況等で教育環境や数学の達成度が異なるからです.原理は各国の社会・文化に依存するのです. 基準では,問題解決,推論と証明,コミュニケーション,つながり,表現,という数学の手法<CODE NUM=00A5>過程にかかわる項目が注目に値します.実は,世界的には教育課程の内容領域に,数学の内容だけではなく,数学の方法や過程にかかわる領域を入れる傾向が強くなっているのです.我が国の学習指導要領でも小中高校を通して,算数的,数学的活動ということが総括目標に入りました.私はこれをNCTMと同様に数学の方法や過程の重視と見ております.次期の改訂では,数学の方法や過程に関することが内容領域として設けられることを期待しています.我が国独自のものを作れないでしょうか. ところで,『基準』では,何のための数学教育かを最初に議論しています.イギリスの『国家教育課程』でも同様です.我が国の高校数学の理念と原理はどこに置くべきなのでしょうか.現在高校では多くの問題を抱えていると言われていますが,実情がはっきりしないところもあります.我が国の高校数学の実情を明確にし,その上で,理念,原理,基準等をみんなで腰を据えて議論する必要があると思うのですが. |
| 変化する世界での数学の必要性
・生活のための数学 |
| 学校数学の原理
・公正の原理 |
| 学校数学の基準
・数と演算 |