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数学教育におけるテクノロジーの利用,すなわち,電卓やコンピュータ等の利用は,世界の数学教育にとって共通の課題となって久しい感があります. IEAでは,1981年に行われた第2回調査から,電卓利用の状況を調べ始めました.当時,我が国は電卓を生産しているのに学校で利用しないので有名になりました.それから約15年たった今回の調査における電卓利用の結果をまとめると表の通りです.ただし,表では,小中学校では算数・数学の授業で全く利用しない割合であり,高等学校は,学校や家庭等での生徒の利用しない割合です. 数学教育における電卓利用については,その長所と短所が語られてきました.長所としては,実世界の問題が扱えることが一番大きいでしょう.これによって,数学が社会と密接につながることが可能になります.一方,短所としては,計算能力が落ちるということが一番大きな理由です.表からわかるように,電卓を利用している国が算数・数学の得点が低いということはありません.なお,我が国は,中学校2年で数学での電卓の利用度が最も低い国となっています. 電卓の導入学年については,我が国は小学校4・5年ですから,世界的には穏健な利用の仕方の国に入ります.しかし,中等学校では状況が一変します.特に大きな違いは,試験での電卓の利用の可否です.イギリスやアメリカなどは,大学入試に相当する資格試験で,グラフ電卓や科学電卓の利用が当然のこととなっています.我が国は,未だに大学入試や高校入試で電卓を使えませんから,電卓は学校の授業に入ってこれません. 電卓を上手に利用すれば数学の学力に影響がないようですから,電卓の長所を活かして生徒に興味・関心を抱かせる数学が作れないでしょうか.新教育課程の数学基礎ではどうでしょうか.例えば,実世界の中から電卓を上手に利用して取り組むことができる課題を工夫して,文化や社会と数学のつながりを考えることができそうです.現在,グラフ電卓については,その性能はよくなり,一方で価格も安くなり,また,理科教育振興法で国の援助を受けて購入できるのです. 数学は,その純粋な理論に至高の価値があると気張っているうちに,生徒は数学から離れてしまいます.生徒の主体的な探究活動を助ける道具として,グラフ電卓やコンピュータを使ってみませんか. |