数学トピックQ&A
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三角比
Q  三角比には,tan,sin,cos とややこしい記号が出てきますが,単なる三角形の相似形を考えているだけのように思われるのです。2つの辺の比を,どうしてこんなに大げさに tanA などというのですか。
A  三角比は,三角形の角の大きさと辺の比の間の関係を対象としたものですが,この関係に着目して三角法という大きな学問の大系が生まれ,天文学や測量学をはじめ多くの分野に利用されるようになったのです。
三角法は,英語で trigonometry といいますが,この語源は,

     trigonon(三角)+ metria(測る)

という意味です。

Q  三角法の研究が盛んになったのはいつ頃ですか。
A  古くは,バビロニアの時代からですが,古代ギリシャの時代,天文学者のヒッパルコスは紀元前 2 世紀に,円の中心角 0°から 180°まで 7.5°おきのすべての角に対する弦の長さの表(正弦の表)をつくりました。この表は現在残っていませんが,ギリシャの天文学者で数学者のプトレマイオスの著した「アルマゲスト」の中にあります。プトレマイオスはこの本の中で,半径60の円について0.5°おきに までの詳しさで,正弦の表を示しています。
 インドの天文学者たちは,4〜5 世紀頃,正弦,余弦に当たるものを研究していました。
 なお,日本で最初の三角比の表は,和算家関孝和(せきたかかず)(1642?〜1708)の弟子建部賢弘(たけべかたひろ)(1664〜1739)によってつくられました。
 三角比の記号が,今日のようになってきたのは,17世紀頃からで,次のようなものがあります。
タンジェント  Ta (カバリエリ・1643年)
tan
A
(ジラール・1625年)
T (ワリス・1693年)
サイン Si (カバリエリ)
sin (ヘリゴン・1634年)
S (オートレッド・1647年)
コサイン Si.z (カバリエリ)
Cos (ムーア・1674年)
Σ (ワリス)

 また,tangentは,接線の意味で,ラテン語で「tangere(ふれる)+ (ふれている)」からとっていて,デンマークのトーマス・フィンケがはじめて用いた(1583年)。